駆除されるミシシッピアカミミガメ そもそもすべきは輸入・繁殖・販売の禁止

カメ
緊急対策外来種として多数駆除されているミシシッピアカミミガメ。しかし、輸入も販売も禁止されていない

 ペットにされ、飼いきれなくなって野外へ遺棄されることも多いミシシッピアカミミガメ(別名:ミドリガメ。以下「アカミミガメ」とします)。緊急対策外来種として多数駆除されている現状があります。ところが輸入も販売も禁止されておらず、このままでは永遠に殺し続けることになってしまいます。また、環境省は殺処分方法として冷凍殺を推奨していますが、この方法はOIE(国際獣疫事務局)などのガイドラインでは苦痛が大きく不適切とされています。

環境省への要望

 JAVAは、これらを問題視し、動物保護団体PEACEとともに環境省に働きかけを続けていて、2021年9月、下記を求める文書を環境大臣に提出しました。

  1. 「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(以下「外来生物法」とします)を改正し、アカミミガメの輸入・繁殖・販売を禁止すること。 ただし、既に飼育しているアカミミガメに限り、飼育許可なしで飼育を継続できるようにすること。また、アカミミガメを飼いきれなくなった飼育者が新たな飼い主に譲ることについては禁止しないこと。
  2. 獣医師以外の者によるアカミミガメの捕獲、殺処分を即刻、廃止すること。

日本におけるアカミミガメの現状

 ここでは1の要望に絞って述べますが、現在、野外に生息するアカミミガメは、いわゆる「ペット」として海外から輸入・販売された個体です。大量に安く輸入できることから、これまで亀すくいやプレゼント企画などでも安易に扱われてきました。そもそも、飼育下では約40年生きることもあるほど寿命も長く、背甲長も20センチを超えるほど成長する動物の輸入・販売を国が許してきたことが問題です。結果、多くのアカミミガメが野外に遺棄されてきました。野外に多くのアカミミガメが生息する現状は、人間が引き起こしたものです。

動物実験にも利用されていた

 神戸市立須磨海浜水族園では、野外で捕獲して飼育したアカミミガメを奈良県立医科大学の医学科に無償提供し、同大学では医学生の解剖実習に使っていたということがありました。

大学施設
神戸市立須磨海浜水族園の淡水ガメを収容する施設「亀楽園」。ここのアカミミガメが医学部で解剖実習に使われていた ©PEACE

 両者はJAVAの要望を受け入れ、アカミミガメの動物実験への譲渡も解剖実習も廃止となりましたが、こんな悲惨な運命をたどったアカミミガメもいたのです。

継続飼育と譲渡は禁止すべきではない

 アカミミガメは既に大量に飼育されており(環境省は「推定で110万世帯数で飼育」としている)、現行の外来生物法によって飼養、保管、運搬、輸入等が規制される特定外来生物に指定することは現実的ではありません。もし現行法の特定外来生物に指定されたなら、飼育しているアカミミガメを飼い続けるには、主務大臣の飼育許可が必要になるのです。環境省の飼育許可業務の量が膨大となるだけではなく、遺棄や殺処分を推進することになってしまいます。

 また、飼えなくなった人から新たな所有者への譲渡まで禁止することには反対します。アカミミガメの新たな飼い主探しの活動をする人、里親になる人もいます。輸入と販売が禁止されれば、新たにアカミミガメを飼育したい者は、飼えなくなった人から譲り受けようとするはずです。遺棄防止の観点からは、このルートが残されているほうが好ましいと考えます。

最も重要なのは「増やさないこと」

 環境省では、外来種被害予防三原則として、「入れない」「捨てない」「拡げない」を提唱していますが、最も重要なのは、これ以上増やさないことです。それには、輸入・流通を止めなければなりません。捕獲、殺処分を繰り返しても、後から後から輸入して、売買していては何の解決にもなりません。まず、環境省が行うべきは、法的にアカミミガメの輸入と販売を止めることです。

 それから、一部マニアには繁殖を行う者もいて、飼育者間での譲渡が許されている場合、繁殖した個体を無償譲渡する形で新たな飼育が広がる可能性があります。新たな飼育個体を増やさないという観点から、繁殖についても禁止する必要があります。

環境省からの回答 ―規制の方向を示す

 私たちの要望に対して、環境省は次のように回答しました。規制に関しては、環境省は、私たちとそう違わない認識を持っていると受け取れる回答です。

・アカミミガメの輸入をなくすこと、飼育個体が野外に放たれたり逃げ出したりしないようにすること、野外に生息している個体の防除を実施することなどを総合的に進めていく必要がある。

・環境省では、現在進めている外来生物法の施行状況等を踏まえた必要な措置の検討の中でも法的規制の導入についても議論した。本検討は、「外来生物対策のあり方検討会」により、2021年8月6日に「外来生物対策の今後のあり方に関する提言」に取りまとめられた。

・この提言を踏まえ、中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会において「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の施行状況等を踏まえた必要な措置について」の諮問に対する審議が進められている。

・今後、パブリックコメントを行い、答申が取りまとめられ、必要な場合は法令改正等必要な措置を進めていく予定。

法改正が期待される

 2021年10月15日から1か月間、上記の環境省の回答のとおり、「外来生物法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(答申素案)」について、パブリックコメント(国民の意見)募集が行われました。

書類
環境省の「外来生物法の施行状況等を踏まえた今後講ずべき必要な措置について(答申素案)」では、アカミミガメについて輸入や販売等の規制という望ましい方向性が記された

 この答申素案におけるアカミミガメに関する記述は、次のように私たちの求める方向性と一致するものであり、JAVAはこの方向性に賛成する意見を提出しました。

アカミミガメやアメリカザリガニのように、我が国の生態系等に大きな影響を及ぼしているにもかかわらず、飼養等を規制することによって、大量に遺棄される等の深刻な弊害が想定される侵略的外来種については、一律に飼養等や譲渡し等を規制するのではなく、輸入、放出並びに販売又は頒布を目的とした飼養等及び譲渡し等を主に規制する等の新たな規制の仕組みの構築や、各種対策を進める必要がある。

 12月23日には、野生生物小委員会(第27回)において、このパブリックコメントの結果が報告されました。この答申に基づき、今国会で外来生物法が改正され、アカミミガメの「輸入・繁殖・販売の禁止」が実現することが期待されます。

(次回は5月9日公開予定です)

[前の回]中国、輸入化粧品への動物実験義務付けを緩和 その展望は?

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
Follow Us!
編集部のイチオシ記事を、毎週金曜日に
LINE公式アカウントとメルマガでお届けします。


動物病院検索

全国に約9300ある動物病院の基礎データに加え、sippoの独自調査で回答があった約1400病院の診療実績、料金など詳細なデータを無料で検索・閲覧できます。