中国、輸入化粧品への動物実験義務付けを緩和 その展望は?
中国ではこれまで、輸入化粧品に対して中国当局が指定する中国国内の試験機関で動物実験を実施し、そのデータに対して承認を受けなければならないという規制がなされていました。それが昨年5月、条件を満たした一般化粧品に限り、動物実験を免除されるようになりました。条件とは何であり、動物実験を取り巻く展望はどう見据えることができるでしょうか。
輸入化粧品に義務付けられていた動物実験
例えばこれまで、日本の化粧品メーカーが動物実験に代わる方法、いわゆる「動物実験代替法」で安全性を確認して日本国内で販売している製品を中国に輸出して販売するには、中国であらためて、げっ歯類を使った経口毒性試験やウサギを使った皮膚刺激性試験など、動物実験による安全性試験が実施されてしまう、という状況でした。
動物実験の規制緩和
それが、2021年5月1日より施行された法令「化妆品注册备案资料管理规定」によって、下記の条件を満たした一般化粧品※(中国語では「普通化粧品」)に対しては、動物実験が免除されるようになりました。
- <一般化粧品の動物実験が免除される条件>
- ●一般化粧品の生産企業が、所在国(地区)の所管政府機関によって発行された生産品質管理体系に関する資質認証を取得し、かつ、製品の安全性リスク評価結果から製品の安全性を十分に確認できること
●下記に該当しないこと
1.乳幼児・子どもが使用できると宣伝する製品
2.安全性が確認されていない新規化粧品原料を使用している製品
3.定量的評価の結果により、届出責任者、境内責任者、生産企業が、重要な監督対象にリストアップされている
(JAVA訳)
条件は厳しい
規制緩和などによって、中国へ化粧品を輸出する際に“必ずしも動物実験が実施されているとは限らない”という状況にはなったものの、上記の条件を満たせない場合や、動物実験免除の対象外となっている特殊化粧品※を輸出する場合などは、それまでのように動物実験が実施されます。
上記の条件を満たすことは容易ではないでしょうから、果たして今回の規制緩和によって、どれだけの化粧品企業が動物実験を回避できるようになるかは予測が難しい状況です。
なお、中国に拠点をつくるなどして中国国内で化粧品を製造販売する場合、一般化粧品の動物実験については以前より免除されています。また、越境ECサイトで販売される製品は、一定の要件を満たしている場合に限り、一般化粧品・特殊化粧品ともに動物実験を実施せずに中国へ輸出することが可能です。
※中国における一般化粧品と特殊化粧品の分類については、「化妆品监督管理条例」の第16条で規定されており、毛染め、パーマ、シミ取り・美白、日焼け止め、抜け毛予防に用いる化粧品及び新たな効能を謳った化粧品を特殊化粧品とし、これら以外の化粧品は一般化粧品とされています。
残る課題
中国が輸入化粧品に対する動物実験の規制緩和を行ったことに一定の評価はできますが、条件を満たすことができない場合においては、すでに安全性が確認された一般化粧品であっても、中国への輸入時に再度安全性の確認のためとして動物実験を義務付けているという基本的な規制は、現在も続いているわけです。
中国の動物実験義務付けの問題は、中国に輸出している一企業が対応して解決する問題ではないとJAVAは考えています。各国の政府や業界、NGOなどが各自の取り組みを通じて、動物愛護の理念、とりわけ「化粧品開発のための動物実験は廃止すべきものである」という国際的な合意形成を進め、中国政府に対してさらなる方針転換を促していく必要があるでしょう。しかし、それは容易になしえるものではなく、長い時間を要するものと考えられます。
日本も現状の打破を
即座に中国が変わらない今、日本の化粧品企業に対していったい何を求めていくべきか?動物実験を義務付けている中国からの市場撤退を求めるといった方法もあるかもしれません。しかし、中国のことを論じる以前に、まず私たちがやらなければならないのは、日本の現状を打破することだと考えます。
既に化粧品に対する動物実験の禁止を実現したEUを前に、日本では、化粧品開発のために動物実験が行われていることを知らない消費者がまだ多く、今なお動物実験を続けている企業があります。この憂慮すべき状況を、まず、変えていかなければなりません。
(次回は3月14日公開予定です)
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