前庭疾患から回復した預かり犬のチョコ あらたな新入り老犬に出会う
インテリアデザイナーとして活動する傍ら、保護犬の預かりボランティアをする小林マナさん。犬や猫と暮らしやすい住空間をつくり、いまは保護猫1匹と、預かり犬2匹と生活をともにしています。第16回では「3匹目の預かり犬チョコの回復と新入りのうえしたくん」のお話をお伝えしていきます。
チョコの前庭疾患の回復
犬の突発性前庭疾患という病気を知っていますか?
おもに老犬がかかる病気で、目が左右に振れてしまう眼振(がんしん)が起こったり、頭が傾いて一方方向にしか歩けなくなり同じ場所で回転するようになったり、ひどい場合には嘔吐(おうと)など車酔いのような症状になってしまいます。ただ、2~3週間すると自然に治ることもあり、経過観察をしなければなりません。
突発性前庭疾患になった預かり犬のチョコは、あちこちにぶつかってしまうようになり、コルクタイルを床に敷き詰め、段ボールで囲いを作り、留守中はその中で過ごせるようにしました。
幸い、ご飯も水も自分でとることができたので体重は減ることがなく、2週間もしたら散歩に行けるまでになりました。なんと回復が早いのか。驚きました。よれよれでやせっぽちのチョコでしたが、気力があり、元気になっていきました。
今回はチョコがぶつかってけがをしないような工夫をして、2~3週間をやり過ごせばよかっただけなので、本当に助かりました。
ひょうひょうとしているチョコは、むっくり起き上がって、首は曲がったままでしたが、部屋の中を今まで通りに歩けるようになっていきました。そして首の傾きは、1カ月もすると治っていきました。
クリニックでは「首の傾きまで治った」と驚かれました。前庭疾患は完治しても、首の傾きが残ってしまう子がいるそうです。
新居へ引っ越し、新入りが加わる
チョコの前庭疾患から1年が経ち、当時住んでいたところが建て替えによる立ち退きになり、それを機に土地を購入して家を建てることになりました。チョコもだいぶ加齢が進み歩き方もだいぶヨタヨタとしてきました。
老犬を預かるボランティアは引き続きするつもりだったので、仕事場になるところは、いくら粗相をしてもいいように「ビニール長尺シート」という防水素材を床材に選びました。新居に引っ越ししてまもなくチョコの粗相が増えましたが、掃除はとても楽でした。
それから、チョコがいつでもぐるぐると歩き回れるように、行き止まりを作らない設計にしました。案の定チョコは、ぐるぐると回遊してくれました。毎日歩き続けるチョコが仕事場を盛り上げたり、粗相をしてみんなで片付けたり、笑いと苦笑を招きました。
その年の年末、チョコを保護した動物愛護団体ミグノンが、動物たちの一時預かりボランティアを募集していました。お正月休みの間だけの短期的な一時預かりです。
チョコはまだそれほど手がかからなかったので、お正月の間だけなら、ということで「1匹預かれますよ」と手を挙げたところ、「上下(うえした)くん」という名前の、大型犬だけどガリガリに痩せほそった腎臓病を患っている老犬を預かって欲しいと言われたのです。
体高50cmもある本当に大きくて馬のような印象のうえしたくんが、12月30日に我が家にやってきました。
老犬チョコと老犬うえしたくんの相性は
うえしたくんは腎臓病のほかに、目は見えていてもハッキリは見えておらず、耳はほとんど聞こえず、食べることに興味がなく、食べたとしても体重が増えない困った老犬でした。しかも、ぼんやりしていて反応がない。そして大きな体でおしっこを、突然、しゃがみもせずにするのです。ドドドっと……。
驚いて犬用オムツをすぐに購入。排泄のリズムがつかめてきたら、外でしてくれるようになるだろうとタカをくくっていましたが、お正月休みの間は一向に覚える気配がありませんでした。新築の我が家にやってきた新しい老犬は、全くお構いなしでそこここにおしっこをまき散らしてくれました。
チョコとの相性はまずまずでした。うえしたくんが寝ているとチョコがそこへ行き、添い寝をするのです。お互い老犬同士のいいカップル。そして、うちには事務所のスタッフもいるし、「もう、うえしたくんも預かろう」ということになったのです。
次回は、うえしたくんとの悲しい別れのお話です。
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