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猫と人の知恵比べ してほしくないことは“させない環境づくり”で解決する

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「愛猫が攻撃してくる」という相談に、入交先生が答えます。

猫が激しく攻撃してくる

 今回はいくつか共通点のあるご相談をいただいたので、ご相談のグループに分けてお答えしたいと思います。

 まずは、元保護猫の若いアメリカンカールがごはんの用意などをしていると顔面めがけて飛びつくなどの攻撃をしてくるというけいさんから、また、6歳のブリティッシュショートヘアの子が、トイレ掃除をしているときや世話をしているときに唸りながら襲ってくるというルークママさんからの相談についてです。

 猫が急に攻撃してくるのはとても怖いと思います。

 愛猫の急な攻撃には、いろいろな理由が考えられます。

 今回のご相談者の猫たちのように、うなりながら攻撃するような場合は、恐怖とか葛藤からの攻撃の可能性が高いです。

激しい攻撃は動物病院へ相談を

 かわいがってもらっている家族に、なぜ恐怖を感じたり葛藤状態になったりするのかと思われるでしょう。それはおそらく、ちょっとした変化や驚きでパニックになってしまうような、脳の機能障害があるからです。

 脳内の神経伝達物質という情報を届ける役割のある物質の中で、セロトニンなどの脳を落ち着かせる働きのあるものがうまく機能していない可能性が高いと思います。

怖い顔の猫
激しい攻撃性は脳の機能障害の可能性も。抱え込まずに動物病院へ相談を(gettyimages)

 治療としてはセロトニンを増やすようなお薬を使いながら、猫が環境に対して混乱しないように、例えばごはんの準備は猫のいない部屋で行う、トイレ掃除の前は猫を他の部屋に入れてから行うなどの工夫をされるといいのかもしれません。

 また、このような攻撃性に対して猫を叱ると余計パニックにさせてしまうので、絶対に叱らない方がいいですし、そのほうが安全でしょう。

飼い主の関心を求めた噛みつき

 ご家族に対して猫が噛みつく行動はほかにも理由があります。

 次の質問はなるちゃんさんからです。

「猫が早起きで3時から起きてきます。私が起きないでいると、顔や首を噛まれます。甘噛みとは思うのですが、痛いのでやめてほしいのですが、どうしたらいいでしょうか?」

 この場合は、関心を求めて、猫は噛みつきながら「起きてください、遊んでください、ごはん下さい」と言っているようです。

 午前3時に噛みつかれるとどうしても起きてご飯をあげたり声をかけたりしてしまうと思います。そうすると、猫の「起きてください」というお願いに耳を傾けてしまったことになり、早朝の噛みつき行動は今後も続いてしまうことになります。

噛みつきに反応することが、猫の思う壺になってしまうことも(gettyimages)

 この行動をやめさせるためには、早朝に噛みついても家族は起きてくれないということを猫に経験してもらいたいので、まずは寝室に入れないようにするのがいいと思います。

 あるいは午前3時にご飯が自動的に出てくるように「自動給餌機」を準備し、家族に噛みつかなくてもおやつが出てくるようにしましょう。

 ごはんのタイミングと家族は関係がないようにしていくと、午前3時に起きても自動給餌機の前で待つようになるでしょう。

叱るのではなく環境を整える

 最後に、あいりんごさんのご質問です。

「ゴミ箱を荒らしたり人のご飯を食べたりして怒らることもあるため、猫は家での生活が楽しいと感じているのかどうか心配です」

 こちらの猫さんは大いに楽しんでいるようです。ゴミをあさって、いたずらをして、何かおいしいものが見つかればラッキーだし、大好きなあいりんごさんはじめご家族に、叱られながらもかまってもらうことを楽しんでいるかもしれません。

 叱られても繰り返しているということは、猫は「叱られている」と思っていない可能性があります。

 なぜ行動を叱ってもいたずらを止められないかというと、おそらく叱るタイミングなどに問題があると思います。タイミングがずれていたりすると、猫は何に対して大きな声を出されているのかわからないことがあります。

 猫にとって意味のない「叱り方」は、わけもわからないまま猫を怯え驚かせます。家族と猫の関係性をおかしくしてしまうので、猫を体罰のように叱ることはせず、いたずらができないように環境を管理することが大切です。

いたずら猫
いたずらは叱るのではなく“させない環境づくり”で未然に防ごう(gettyimages)

 ごみ箱には蓋をして開けられないようにしたり、盗み食いができないように食べ物は猫の届かないところにしまうなどの対策をとられた方がいいでしょう。

 おいしいものハンティングを続ける猫は、ハンティングゲームが楽しくて挑戦しているのだと思います。

 今後は猫と人の知恵比べになりますが、それもまた猫との楽しい生活の一部ですよね。

 我が家も実は盗み食いといたずら好きの2歳の猫がいます。人間が食事のときはおもちゃとおやつを置いた寝室に入れていても、あちこちの隙間から脱出するなど、頭脳ゲームを楽しんでいるようです。

 今回もたくさんのご質問をありがとうございました。全国的に新型コロナウィルス感染症が猛威をふるっています。皆様どうぞお身体にお気をつけください。

(次回は3月13日公開予定です)

(この連載の他の記事を読む)

【前の回】なついてくれない、噛みつかれる 猫の気持ちを想像することが和解のヒント

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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