なついてくれない、噛みつかれる 猫の気持ちを想像することが和解のヒント
猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「なついてくれない」「噛みつかれる」という質問に、入交先生が答えます。
お世話をするもなついてくれない
新年が空け、めでたい寅年の幕開けとなりました。本年も「猫との暮らし相談室」をどうぞよろしくお願いいたします。
Q1:我が家の猫は川で流されている段ボールの中に1匹だけ残っていて、まだ目も開かない子猫でした。一生懸命、わけもわらず育てて来ました。けれど今では、その子に噛まれ、抱かせてもくれません。ところがまったく猫の相手をしなかった息子には、自分から腹に乗っていく状態です。病院の看護師から「私を敵と思っているのでは」と言われショック受けています。なぜ私にはなつかないのですか。また、以前飼っていたダックスフンドも同じ状態でした。(ジョージさんからの質問)
A1:大切に育てた猫ちゃん、きっとかわいらしい子なのでしょうね。一生懸命お世話をされたのに抱かせてくれないのは、単に「抱っこ」が嫌いなのかもしれません。
犬や猫は愛玩動物といわれますが、本当は抱っこされるのはあまり好きではありません。ちょっと想像してみてください。もし私たちが身長5メートルの巨人にいきなり抱き上げられたらどんな気分でしょうか?
また、動物は急にいじくりまわされたり、モフモフされたりするのもあまり好きではありません。私たちだって意味もなくなで回されたり、キスされたり、髪の毛をくしゅくしゅされたらちょっと抵抗があると思います。
相手のことが大好きでも、尊敬していても、急に意味もなく抱かれたりなでられたりするのは苦手な人が多いと思います。私も父が大好きでしたが、もし父に、いきなり「まみちゃーん」と言って抱き上げられたり、抱き着いてキスされたりしたら、ちょっと驚くと思います。猫も同じような感じでしょう。
ジョージさんのことは大好きだけれど、抱っこは苦手なのでしょう。それに対してご子息様は、なにも余計なことはせず、来るもの拒まずの姿勢なので、きっと猫が安心して甘えているのではないでしょうか。
猫に愛されるために“押してダメなら引いてみなさい”ということで、ちょっと距離をとると、きっと猫の方から来てくれるのではないでしょうか。またおやつをうまく使って、抱っこするときはおやつを食べさせながらすると比較的苦手なことでも受け入れてくれます。
ちなみに猫はジョージさんのことを「敵」とは思っていないと思います。
何もしていないのに噛みつかれる
Q2:何もしていないのに噛みついてきます。特に、手首や足首を抱えて噛みつきます。膝に乗ってくるし、寝る時もくっついてくるのですが……。(ビー玉さんからの質問)
A2:寝る時もくっついているのであれば、猫はビー玉さんのことが大好きなのでしょう。では大好きなのになぜ噛むのかというと、関心を求めているからと思います。
足首を噛んだり腕を噛むと痛いので、おそらく反応してしまうのだと思います。そうすると猫の思う壺で、「やった、こっちに関心を向けてくれたぞ」ということになり、例えばそのあと逃げてみたり、何かやって遊びが始まったりすると思っているのだと思います。
猫がいつ手足に噛みつくのかは記載がありませんでしたが、例えばお出かけの前に噛みついているのであれば、準備で忙しくてかまっていないから噛みついている可能性もあります。そんなときはおでかけの準備の前に「知育トイ」というおやつが出てくるようなおもちゃにフードを詰めて与えておきます。一人遊びをさせている間に準備をしてしまうと、おそらく噛まれるようなことはなくなります。
我が家の猫も同じようなことをします。うちは食事のドライフード1日分を複数の知育トイに小分けし、キャットタワーの上などに隠して探させています。猫に一人遊びをさせて、私にかみつかないようにするための工夫です。
猫に愛されている証拠ですが、離れてほしい時には、うまくフードやおもちゃを活用してみてください。
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(次回は2月13日に公開予定です)
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