もしもの時をみんなで支え合う 「ペット後見互助会 とものわ」

「とものわ」に入会している武富さんご夫婦と愛犬リキちゃん
「とものわ」に入会している武富さんご夫婦と愛犬リキちゃん

 ペットにおいても“助け合いの互助会”がありました。「ペット後見互助会 とものわ」です。運営する「認定NPO法人 人と動物の共生センター」の理事長、奥田順之(よりゆき)さんに、お話を伺いました。

獣医師を中心に、特定NPO法人が運営

 まずは「人と動物の共生センター」の紹介を。岐阜県岐阜市を拠点に、「人と動物が共に生活することで起こる社会的課題の解決を通じ、他者を思いやれる社会づくりに貢献する」を理念に、多彩な活動を行っています。

ペットの防災活動にも取り組み、「ペット防災カレンダー」の配布協力者を募っています
ペットの防災活動にも取り組み、「ペット防災カレンダー」の配布協力者を募っています

 理事長の奥田順之さんは獣医行動診療科認定医の資格を持つ“動物の精神科医”。「ぎふ動物行動クリニック」の院長、飼い主が学ぶ犬のしつけ教室「ONELife」の代表でもあります。

コンセプトは“みんなで”

——「ペット後見互助会 とものわ」はどんなものですか?

 犬や猫の飼い主さんが、入院、施設入所などの万が一の時に備えるための互助会です。費用を互いに補填し合うという互助会の特徴も含め、“みんなで”がコンセプト。

 契約などは弁護士・行政書士などの専門家と協力して実施します。飼えなくなった時は新しい飼い主を探すのが基本で、難しい場合はセンターの施設、提携する老犬老猫ホームなどで終生飼育します。

獣医師である奥田順之さん
獣医師である奥田順之さん

——どんな経緯で作ったのですか?

 大学で獣医学を学んでいた15年前、犬猫の譲渡仲介サイトを運営していたのですが、その中で聞いた「自分に何かあったらこの子をお願い」という言葉がベースにありました。

 高齢の単身・夫婦世帯が増え、ペットの飼育が困難になるケースも増えており、「もしも」の不安を解消するため、また、ハードルを低くしたいという思いから「互助会」を考案。2017年に個別相談をスタートしました。

――対応エリアは?

 現在は東海3県が中心です。仕組みを全国へ広げていこうとしています。

気になるお金のこと

——必要な費用は? 

 初期費用が入会金 5万円+事務手数料 5万円、維持管理費が月1,000円。飼えなくなった時の終生飼育費として100万円~(体重11キロ以上の場合、体重×10万円)です。当然、飼い切れた時は、終生飼育費は必要ありません。

——100万円~は妥当な金額でしょうか?

 例えば一般的な老犬ホームでは、2年で小型犬で150万円、中型犬で240万円~がかかります。「とものわ」では、譲渡を前提としておりますが、譲渡できる場合と、終生飼育が必要になる場合があります。この部分を会員同士で補填し合い、一律で100万円~の終生飼育費用をご用意いただくことで、できるだけ多くの皆様にご利用いただける仕組みを目指しています。

——終生飼育費はどのような形で用意するのでしょう?

 主に「生前贈与」「遺言」「ペット信託」「生命保険」から選べます。
「生命保険」だと、60歳の場合で保険料は月1万円程度。飼い切れた場合は解約すれば解約返戻金として戻ります。

――なるほど。積み立て感覚でもできるんですね。

保護から譲渡、終生飼育まで

 主な流れは以下です。

▼電話相談/現状を聞き、概要を説明
▼個別面談(数回)/状況やニーズを細かくヒアリング。最適な方法を一緒に考えます
▼緊急保護計画/いざという時にどう連絡を受け、誰がどう保護するかなどを検討
▼終生飼育費計画/保護した後、誰がどこで飼育していくのかを検討します
▼契約/以上の計画を元に、契約書を作成。入会となります

特徴をわかりやすく説明したパンフレット
特徴をわかりやすく説明したパンフレット

▼定期連絡/状況などを確認。相談もできます
▼緊急保護・一時預かり/急な入院など、万が一の事態に対し、事前作成している緊急保護計画に沿って保護を実施。一時預かりを行います
▼長期預かり・譲渡・終生飼育/再びの飼育が困難な場合はセンターが引き取り、新しい飼い主探し、または、終生飼育を行います

体制もネットワークも進化中

 センターでは犬の預かりが可能な「ONELife」に加え、現在は猫シェルターを設け、どちらも受け入れができるようになりました。

飼い主募集中のアヴちゃん
飼い主募集中のアヴちゃん

 これまでの入会者の多くはクリニックや教室の利用者で、そこにあがるのは「信頼できる所に託したい」という声。また、契約のため訪れたお宅で飼い主さんが倒れているのを発見し、飼い犬を緊急保護したケースもあったそうです。

「間一髪でした。私自身犬2匹と暮らしており、生命保険を選んで備えています」と奥田さん。
「もっと身近なものにしていくため、動物病院やペットシッター、トリミングサロンなどのパートナーを増やし、ノウハウを伝え、広げていこうと、勉強会も開催しています」

社会で考えていくべき命の問題

「ペットと最後まで一緒にいたい、はワガママでしょうか?」の問いには、「終生飼育の責任はある」としたうえで、「でも個人では限度があり、家族の在り方や地域の関わりが変わっている今、責任の意味を問い直す必要があるのでは」と答えていただきました。

「そもそも動物は命。個人の持ちものではなく社会の一員として考えるべきです。ではどうすればいいか。やはり仕組みを作ることです。この互助会の仕組みを、社会全体の互助へ発展させていきたいと思っています」

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石井聖子
猫依存症の名古屋在住ライター。幼少期は犬、亀、鶏、インコと暮らし、猫歴は30年以上。現在は3ニャンズ(と夫)と同居。さらにワンコも一緒に暮らすのが野望。夢は弱い立場にいる動物と子ども、全ての人が一緒に幸せになれる方法を見つけること。

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この連載について
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