万一の時に頼れる人がいなくても安心 「ファミリーアニマルサポート制度」とは

くつろぐ猫
頼れる人がいなくても、もしもの時にペットを託せる仕組み、できています(写真は「Cafe Gatto」提供)

 最後までペットと生きる方法を探るシリーズ。今回はどうぶつ系行政書士の磨田(とぎた)薫さんが立ち上げ、理事を務める「一般社団法人ファミリーアニマル支援協会(FASA)」が提供する「ファミリーアニマルサポート制度」を紹介します。詳細を磨田さんに伺いました。

制度の仕組みは? 費用は?

――「ファミリーアニマルサポート制度」はどんなものですか?

 飼い主様の思いを協会が引き継ぎ、万が一の時は新しい飼育先で適正に飼育してもらえるように手配し、見守る仕組みです。
「ペット信託」は信託契約する相手や飼育先を基本的にご自分で探して決めていただきますが、「ファミリーアニマルサポート制度」はその必要がなく、信託契約をする相手や託す先がないといった場合にもご利用いただけます。

――仕組みを教えてください。

 飼い主様と協会(FASA)の間で、飼育費の管理・支払いについての委託契約を結びます。
 FASAは、飼育費を専用の信託口座で管理し、飼い主様に万が一のことがあった時には飼育費の支払い、ペットを提携の飼育先(保護猫カフェ「Cafe Gatto(カフェガット)」、老犬ホームなど)で飼育してもらえるよう手配します。

制度の仕組み
飼育費は信託口座で飼い主ごとに分けて管理し、半年に一度報告。飼育先は飼い主の家族や友人などの希望を第一優先とし、それがない場合はFASAの提携施設を設定できる(図はFASA提供)

――費用はどれぐらいかかりますか?

 入会金2万円(税別・1匹)、登録料2万円(税別・1匹)、年会費が1万8000円(税別・毎年更新)です。
 信託口座に用意する飼育費は、提携施設の場合で、犬は200万円、猫は150万円(いずれも税別・1匹)です。何事もなく飼い主様がペットを看取られた時は、飼育費はお返しします。
 飼育先がご家族やご友人の場合は、飼育費として残したい任意の金額を口座にて管理させていただきます。

――契約の相手や飼育先を自分で探さなくていいこと以外の特長は?

 飼育費は信託会社で厳正に管理するので、その点も安心いただけます。現状では、銀行で信託契約専用の口座を開設するのに時間がかかりますが、それもありません。
 また、亡くなった時だけでなく、体調を崩したり、認知症になったり、飼育が困難になった時にも飼育を託すことができます。

色々な選択肢で安心を

「ファミリーアニマルサポート制度」がスタートしたのは2019年。「ペット信託」を日本に広げる中で、「周りに頼れる人がいない」、「託す先がない」という声が多々あったことから、生まれた制度だそうです。

日向ぼっこをする猫
築100年の古民家をリノベーションした提携の飼育先「Cafe Gatto」は、新しい飼い主を募集している猫たちがいる保護猫カフェであり、老猫ホームでもある(写真は「Cafe Gatto」提供)

 また、提携の飼育先になっている保護猫カフェ「Cafe Gatto」では「愛猫たすけあい制度」として、会員になって月額3000円(税別)の会費を3年以上にわたり継続して支払っていくと、飼い主に万が一のことがあった時に1匹50万円(税別)で愛猫を引き受けてもらえる制度も設けています。まとまった額をすぐに準備しなくてもよく、保護猫カフェに今いる猫たちを支援しながら、もしもの時に備えることができます。

公正証書遺言をプラスしてトラブル回避

 麿田さんの「行政書士かおる法務事務所」では、ペットのための生前対策の相談の際、人(飼い主)に対する業務もニーズがあることからその一部を扱い、トータルサポートを実施。ペットに直接関わるものでは公正証書遺言※1や死後事務委任契約※2も扱っています。
 もしもの時への備えで理想的なのは、「ペット信託」または「ファミリーアニマルサポート制度」の利用にプラスして、公正証書遺言を用意することだといいます。
「遺言書や死後事務委任は死亡時にだけ効力を発揮するものですが、『ペット信託』と『ファミリーアニマルサポート制度』は、死亡時以外も含めた万が一に備えられます。
 一方、公正証書遺言の作成もお勧めするのは、飼い主様に頼れる人はいなくても、相続人は必ずいるからです。相続人が頼れる人ではないとなると、ペットのために財産を飼育費として第三者に渡すことを理解してもらえず、トラブルになる可能性があります。
 遺言書でしっかりと思いを残し、相続人の方にも納得していただけるようにすることで、できるだけ円満に手続きを進められるようにするために、お勧めしています」

※1 公正証書遺言:公証役場で公証人へ口頭で内容を伝えて作成され、公正証書として役場に保管される。公証人への手数料、証人2名、証人への手数料が必要。遺言にしたい内容を行政書士に伝え、公証人とのやりとりを行政書士が行うことも多い
※2 死後事務委任契約:第三者に対し、死後の事務手続きを委託する契約

最後まで一緒にいたいと思ってほしい

 人生の最後まで、ペットと一緒に暮らしたいと思うのは人間のワガママでしょうか――。
 その問いかけに、麿田さんは「当たり前の感情だと思います」と返してくれました。「むしろそう思っていただきたいです。そしてそのための努力をしてほしいです」と。
「その選択肢の一つが信託やサポート制度です。これからもたくさんの方が、『この子と一緒にいることが幸せ。最後まで一緒にいようね』と思いながら、安心して暮らしていけるお手伝いをしていきたいと思います」

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石井聖子
猫依存症の名古屋在住ライター。幼少期は犬、亀、鶏、インコと暮らし、猫歴は30年以上。現在は3ニャンズ(と夫)と同居。さらにワンコも一緒に暮らすのが野望。夢は弱い立場にいる動物と子ども、全ての人が一緒に幸せになれる方法を見つけること。

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この連載について
最後までペットと一緒に暮らしたい
「ペットをいつまで飼える?」本音は「最後まで一緒にいたい」。ペットの生涯に責任を持ちながら、できるだけ長く一緒に暮らすための可能性を探ります。
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