猫が大きな声で鳴いて困ってしまう時 理由を考えて対処、動物病院に相談も

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。今回は、読者から寄せられた「猫の鳴き声」についての質問に、入交先生が答えます。

20歳の老猫がトイレや食事の時に大きな声で鳴く

 11月にも中旬になりました。関東も紅葉が見られるような時期になりました。もう年末もすぐそこまで来ています。コロナ禍で家にいる生活も長くなってきましたが、出かけないぶん自宅の周りの季節の変化に注意を向けるようになりました。

 今回は、「猫の鳴く」行動に関してのご質問をいただいています。

 Q1:老猫の鳴き声。トイレをすると大きい声で鳴き、餌を食べても大きい声で鳴きます。何か行動を起こすと大きな声でしばらく鳴くのは、なぜなのでしょうか?現在通院中です。年齢は20歳になりました。尿検査、検便、血液検査の結果は良好。老猫らしい数値で危ないものは特にありません。(悠李さんからの質問)

 A1:20歳の猫さんのご家族からのご質問です。まずはとっても長生きで本当に素晴らしいです。高齢の猫ちゃんの鳴く行動ですが、原因はいろいろ考えられます。こちらのご質問者は病院にいらしているので、おそらく検査をされていると思いますが、高齢の猫さんで過剰に鳴く行動がある場合、甲状腺機能亢進(こうしん)症という病気の問題がある可能性もあります。

 また、腎臓病で高血圧になって鳴いてしまう場合もありますし、関節などの痛みで鳴くことが増える場合もあります。高齢の猫さんもまずは病院で必要な検査をして、病気が行動の裏に隠れていないか確認をしていただきたいと思います。

窓際の猫
行動の裏に病気が隠れていないか、まずは動物病院で検査を

 もし病気はない、あるいはすでに治療をしていて、過剰に鳴いてしまうような原因が身体にない場合、もしかしたら高齢性の認知機能の低下の可能性もあります。いわゆる人で言う認知症は猫にも発症します。

 認知症になると昼夜逆転したり、不安を強く感じて鳴いてしまったり、ご家族のことがわからなくなったり、急に攻撃的になったり、色々な行動の変化があります。認知症の場合は人と同じように抗酸化成分を多くとる(ごはんやサプリメントがあります)、魚油であるオメガ脂肪酸DHA、EPAなど取る、良質なたんぱくを摂取する、身体に負担のない運動をする、脳トレをするなどが効果的です。

 脳トレに関しては、「知育トイ」「知育玩具」と言われる、少し工夫をしないとおやつが出てこないおもちゃで頭を使ってゲームをさせるなどの工夫をしていきます。また認知症のお薬もあります。動物病院で、認知症のことをご相談いただくとよいかもしれません。

猫が叫ぶように鳴く、理由はわからない

 Q2:母の介護のために、通えないのでアメリカから猫2匹と引っ越して来ました。ですが、母のマンションはペット禁止。管理組合には事前に特例を認めて下さいと手紙を出しましたが却下。でも管理組合長からは内緒で連れて来なさい、聞かなかったことにする、と言って頂いたので一緒に帰国。1匹は静かなのですが、もう1匹は結構頻繁に「叫ぶ」のです。どう考えても理由は有りません。ベランダのサンルームで(猫用に作りました)眠っていて突然起きてニャオウ!「こっち見て!」なのかもしれませんが、分かりません。今はかわいそうだと思いながらも叫ぶ時にはNOと叱ってスプレーで水をかけますが止まりません。どうすれば黙ってくれるでしょうか?(しもべさんからの質問)

 A2:ご質問者の猫さんの年齢、猫の品種、不妊手術されているか否かもわからないので、一般論でお話しします。多くの場合は、鳴くことでご家族の気を引けるので「ママ!」「ママ!」といって鳴いている可能性が高いです。

 鳴き声を無視することで「泣いてもだめだ」を学習させられますが、近所迷惑にもなります。事前に鳴きそうな時間帯や状況になるときに、一人遊びが出来るおもちゃや知育トイを与えて、一人で遊ばせておくと、鳴いて人を呼ぶことは無くなる可能性が高いです。

 今回のご相談で他に考えられる理由として、不安からの行動として鳴いている可能性もあるかもしれません。引っ越し、環境の変化、ご家族が介護で忙しくなって一緒に遊べない、関係性の変化でストレス行動として鳴く行動が出ている可能性もあります。水鉄砲の対応は、余計ストレスをかけるので中止した方がいいかと思います。

寝転がる猫
不安から鳴いている可能性も

 そして、不安からの行動の場合は、動物病院にご相談いただき、不安をかき立ててしまう理由として体の問題がないかを確認のうえ、必要に応じて行動学の専門家(精神科医)に紹介いただいて問題を考えてもいいのかもしれません。

 猫も過剰に鳴いたり、大きな声で鳴いてしまうと困ります。しかし、この行動の裏には理由があるはずですので、なぜ鳴いているのかな、と考えて対処いただくとよいかと思います。

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【前の回】猫が飼い主を急に激しく攻撃してくる 原因はいろいろ、まずは動物病院へ相談を

入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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