娘、愛猫の初“ペロッ”に大興奮 喜びの裏にある、子供なりの切ない気持ちが見え隠れ

 2匹の愛猫と2歳娘の関係は、「適度な距離感」を保っているのですが……。ここで言う「適度」とは、「仲良し」とは程遠く、「共に暮らすことを許容している」というギリギリのラインを保っているような状態です。

2歳にして初めて猫になめられる娘

 ある朝、私がキッチンで猫の朝食の準備をしていて、その横に娘が立っていたときのこと。サビ猫のあんずはいつものように「ニャーニャー」鳴いて、食事の催促をしながらウロウロ歩きながら、私の足元にスリスリと体をこすりつけていました。

さび猫「あんず」
毛づくろい中です

 ここまではいつものことでしたが、いつもとは違ったのは、歩きながら不意に娘のかかとのあたりをペロリ……とわずかになめたようでした。

「わぁっ!」

 と娘は大声を上げました。娘は猫と3年近く暮らしてきて、猫に直接肌をなめられたのはほぼ初めての体験だったんです。娘はものすごく驚いて、ニコニコ顔でこう言いました。

「あんちゃん(あんず)、なーちゃん(娘)のこと好きになっちゃったの?」

 あんずは、私にスリスリしていた流れでなんとなく、横にいた娘の足をなめたのだと思いますが、あんずの気持ちの真意はよくわかりません。娘は「ついに、私にも愛情表現してくれた」といった感じで興奮して、あんずについて行きました。

「あんちゃん、なーちゃんのこと好きなのぉ~?」

 あんずは、「いや、そういうわけじゃ……」とでも言いたげに、トットット……と小走りで娘から逃れ、猫の食事を運ぶ私の後について、ゴハンをガツガツ食べ始めました。

さび猫「あんず」
膝の上でくつろいでいます

 娘は、しつこく追うと嫌われることを学習しているので、そのまま食卓についてお茶を飲みながら、また「あんちゃん、なーちゃんのこと好きになっちゃったみたい」と満面の笑みを浮かべていました。

 この一連を見た私は、娘が今まで「猫にやんわり嫌われている」ことを自覚していたことを知り、何だか切ない気持ちになりました。

嫌われていることを自覚していた?

 娘は1歳の頃からよく、猫にオヤツをあげたがったり、遊びたがったり、触りたがったりしていて、「仲良しになりたい」と娘なりの努力していました。

 一方猫は、娘の突然の奇声や、追いかけてくること、突然触ってくることなどがあるためか、なかなか心を許すまでには至りませんでした。ほんの少し慣れてきても、娘が与えるオヤツを食べたり、そっと触れる程度までしか距離は縮まらず、一緒に遊んだり眠ったりなどする「真の仲良し」とは程遠い状態でした。

キジトラ猫「モモ」とさび猫「あんず」
娘が描いた絵の横でくつろぐ2匹

 娘も次第に猫に積極的に接することはやめたので、「適度な距離感」が成立したわけですが、娘は何となく猫とのかかわりに飽きただけだと思っていたんです。

 2歳児といえば、他人に興味を持ち始める時期ですが、「自分は嫌われている」などといった他人(他猫?)の気持ちまではイマイチわからないのではないかと。しかし「好きになっちゃったの?」という発言は、今までは好きじゃなかった、と知っていたということで……。

猫用ゴハンをおねだり

 その「好きになっちゃったの?」事件の日、娘とスーパーに買い物へ。猫用のコーナーを横切ると、「猫ちゃんのごはん買わないと!」と張り切って、猫用のウェットフードを手に取る娘。

 普段は、いかに食玩を買ってもらうかで頭がいっぱいなのに、猫用のゴハンを買おうとするなんて……。娘が手に取ったフードは、我が家では買ったことがない種類でしたが、そこで「これは食べさせていないから」とは言えず「そうだね、猫ちゃんのゴハン買おうね……」と、カゴに入れました(親バカ)。

 ちなみに、さらに「これも、これも」と、猫缶をドンドン入れるので、それはそっと戻しました。

キジトラ猫「モモ」とさび猫「あんず」
モモ(今回出番なし)とあんず

 娘は、あんずが自分のことを「好きになっちゃった」と言いますが、実際は急に距離は縮まらないもの。あんずに冷たくされて、娘の心が傷つかなければいいな……と思っていました。

 その夜、娘がリビングでダラダラと横になったまま遊んでいるところに、あんずがトコトコ歩いてきました。

 娘はあんずに気づかずにおもちゃに集中していると、あんずが娘の頭に近づいて、クンクンにおいをかぎ始めました。

 至近距離にいるところで、初めてあんずに気づいた娘はぎょっとして、ニコニコしながらもこう叫びました。

「近い、近いっ!!」

 ……えっ、そんな反応? 仲良くなりたかったんじゃなかったの?

 娘の声に驚いたあんずは、すぐに別の場所へ走り去りました。おいおい、これじゃ距離も縮まらないでしょ……。

 娘は、顔は笑っていましたが、普段それほど近くまで来ないあんずに、驚いてしまったようでした。お互いに、すぐ近くにいるのが当たり前になるような「真の仲良し」になれる日は来るのか……。

 猫と娘の間にいる私としては、双方に複雑な感情などはあまり関係なく、単なる「慣れ」なのかなと思い始めております。

さび猫「あんず」と子供
あんずに本を読んであげる娘

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安田有希子
2015年からsippoにて「猫アレルギーですけど」の連載開始。2匹の元保護猫と暮らして4年目に猫アレルギーが発覚するも、平和に暮らす。猫の好きなパーツは、小さく並んだ門歯。幼少の頃「うちのタマ知りませんか?」のすごろくに大ハマりした年代。栃木県出身。

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この連載について
猫アレルギーですけど
普通の家で飼われている猫「あんず」と「モモ」。飼い主の主婦が、2匹との生活や発見をユニークな視点で切り取る人気連載です。
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