目やにだらけだった白い子猫「太郎」 奮闘するも子育ての難しさを知った
イラストレーターの竹脇さんが育った奥深い住宅地。この場所で日々繰り広げられていた、たくさんの猫たちと犬たちの物語をつづります。たまにリスやもぐらも登場するかも。
鼻水と目やにだらけだった白い子猫
私はこれまでに、何度か子育てに失敗したことがある。
もちろん、猫の話である。
我が家は子猫を拾うことはほとんどなかった。
家で生まれた3匹には両親がそろっていたし、庭で生まれた子猫たちは乳離れするまで母猫が育てていた。たまに若い母猫に育児放棄された子猫たちは、ラバーちゃんが育ててくれていた。
だから家の中に入ってくるのは、ケガをしたり病気で弱ってしまったり、老猫が終の住処(すみか)として我が家を選んだりと、治療を兼ねて家族加わることが多かった。
それでもたまに、目やにでボロボロになった瀕死(ひんし)の子猫が庭に迷い込んできたり、生まれてすぐにゴミ捨て場に置かれていたのを発見したりして、子猫を保護することがあった。
太郎もそんな出会いだったと思う。
私が高校1年生の夏休み前に、鼻水と目やにで目が開かなくなった白い子猫を捕まえたのだ。
……そう、夏休み。
真冬生まれの私は夏がとても苦手で、合宿があるような部活には入っていなかった。だから高校生時代の夏休みと言えば、家事をする以外はクーラーの利いた部屋で読書や映画鑑賞、気付けば猫と昼寝という、今思えば天国のような日々を送っていた。
そしてそこに舞い降りた、小さくて白い、弱々しい天使。
太郎と名付け、ぬるま湯を入れたたらいのお風呂に入れ、目やにを丁寧に拭き取り、ノミを駆除した。そして少し落ちついた頃に獣医に見せ、指示に従って来る日も来る日も看病した。
食事や排せつのお世話はもちろん、寝かしつけて遊ばせて……と、片時も離さなかった。
太郎と離れないといけない!?
しかしある日、太郎はぐったりと倒れてしまった。
顔面蒼白(そうはく)になって慌てて動物病院に連れて行くと、「お世話のし過ぎですね」と、獣医に笑われた。
つまり太郎が倒れた原因は、私が構いすぎたための過労だったわけだ。
そして母からは、「麻衣、太郎ちゃんから離れて下さい」と言われる始末。
乳母の資格を剝奪(はくだつ)され、太郎と引き離された私は、泣く泣くお世話をベテランのミケ子に引き継いだ。
遊び相手の兄弟姉妹に、事欠くことのない我が家。
私は猫たちが小さな太郎とわちゃわちゃしたり、そのままみんなですやすやと丸まって眠るのを横目で見ては、交ざりたいのをぐっと堪える日々だった。
ああ、私の小さな可愛い太郎ちゃん……。お母さん(乳母だけど)、寂しい……。
けれど、さすがは我が家のベテランたち。
その後太郎は倒れることもなくすくすくと育ち、たっぷりとお肉を携えた、白くてふわふわの甘えん坊に育った。
猫たちの「可愛い」は雪だるま式に増える
猫のことについてはちょっとした自信があった私は、またぺーぺーの見習いへと転落し、生き物を育てる難しさをしっかりと受け止めた。
けれど、子猫の可愛さは宇宙を征服できると思って疑わないので、その後も何回か子猫に構いすぎるという失態を繰り返し、母や猫たちに子猫を取り上げられた。
猫たちは大人になってからも、もちろん可愛い。
むしろ、一緒に過ごした時間が雪だるま式に「可愛い」をまとい、掛け替えのない大切な家族になる。
猫たちが歳を重ねていくと、一緒にいられる時間がますますいとおしくなって、私はどんどんどんどん出無精になった。
そんなわけでかなり親しい友人の間でも、すっかり「レアキャラ」として定着してしまったけれど、私、これでいいのかな。
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