学校で、ジョギング中に、駐車場で… 外出するとなぜか猫に出会い引き取ってくる姉
イラストレーターの竹脇さんが育った奥深い住宅地。この場所で日々繰り広げられていた、たくさんの猫たちと犬たちの物語をつづります。たまにリスやもぐらも登場するかも。
姉のちょっと困った性質
私には一つ年上の姉がいる。
姉は私と正反対で、昔から体を動かしたり、外で色々な友達と遊ぶのが大好きだ。今も「ネオンがないと、私は生きていけない」と冗談を言うほどだ。
そんな華やかな姉には、ちょっと困った性質がある。それは外出先でなぜか偶然猫に出会い、そしてそのまま拾ってくるという、まぁ竹脇家の血筋ならではだが、とにかく突然のことが多くてその度に家族は驚かされていた。
最初は小学校の頃。用務員さんが保護した子猫を引き取って帰宅し、突然家族が増えることはさておき、こんなに美しい捨て猫がいるものなんだと、我が家は騒然となった。
そのオスの子猫は長毛種で尻尾と鼻の頭だけ黒く、ヘイキチと名付けられた。とにかくものすごい美形だった。オスだけど女優の沢口靖子に似ているねーと、猫を含めみんなデレデレになったけれど、ヘイキチはとてもおっとりしていて自分の美しさには全く気づいていない感じが、とっても可愛かった。「へーちゃーん」と黄色い声で呼ぶと、ゆっくりと振り向いて「なあに?」という姿は、とても高貴な雰囲気だった。
お次は公園にジョギングに行って「突然塀から落っこちてきたのよ!」と、拾ってきた黒白の子猫。高いところから落っこちて、脳しんとうか何かで気を失っていたところを姉に見つけられ、このまま死んでしまうならせめて安全な場所で、と抱えて連れ帰ってきた。
キャリーバッグの中に入れ、とりあえず様子を見ようと話し合っていた矢先、ハッと我に返って子猫はびっくり仰天、大暴れをした。その時の様子からプルプルと名付けられたこのオス猫は、その後すっかり竹脇家になじみ、子猫が大好きな子育てお兄さん猫になった。プルプルに育てられた猫は数え切れないくらいいて、いつも猫たちに囲まれている穏やかな猫だった。
そして姉はその後も同じ公園で、公園に住む自由なおじさんが連れていた長毛種の猫を「長い毛が絡まってしまったら大変で、そういう猫はとても大変だよ」と譲り受けてきた。そして初めて飼ったボギーという長毛種の猫の名前にちなんで、そのむくむくの猫をバーディーと名付けた。
バーディーは毛の密度がものすごくて皮膚が炎症をおこすこともあったので、何度かサマーカットをした。その姿はライオンみたいで、本猫もまんざらではなさそうなくらい素敵だった。
その後も以前書いたペレとクリームや、母とホームセンターに買い物に行った先の駐車場で保護したフィリップ(捕獲するのがものすごく大変だったらしい)、行きつけの居酒屋さんのマスターが入院することになって引き取ってきたロイ……などなど、行く先々で猫を引き受けてきた。
社交的な性格を活かして譲渡先探しへ
けれどあまりに無節操に保護してこられても困る、と母から言われた姉は、別のチカラを発揮し始めた。そう、外出が大好き=社交的。姉はその性格をフルに活かし、譲渡先を探すのもとても上手だった。
仲良くなった人たちの中で最後まで真剣に動物と暮らしてくれる人を見極め、子猫を欲しがっている人に素晴らしいタイミングで保護猫を兄弟・姉妹セットで引き取っていただいたりした。社交性が全くない私からすると、姉は私の救世主だった。
しかし、もちろんいつもタイミングよく猫を欲しがっている信頼できる人がいるとは限らないし、厄介な疾患のある猫もいる。そんな時は竹脇家の家族となる。
竹脇家の猫の数が一桁になる日が来るのだろうかと、少々不安にもなる。
けれど「これが私の生きる道~」と半ばあきらめの鼻歌まじりだ。
しかし竹脇家の人間の高齢化は進んでいるので、動物好きな人といつかシェアハウスなんてどうだろう、などと夢みたいなことを考えて気を紛らわせている。
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