竹脇家に初めて外国の猫が来た!? のんびり屋のボギーとおてんば娘のルル
竹脇家の動物愛が開眼
私が10歳くらいの時、犬の散歩についていって子猫を拾ってから、我が家の動物愛はメキメキと開眼した。
そのころ仕事が超多忙だった父も動物好きだったので、拾ってきた猫たちが夫婦となり、父がいない間に3匹の子猫を産んでも全く動じなかった。
しかし父は何を思ったのか、どこからともなく血統書付きの子猫をもらってくるようになった。今から35年くらい前の話だが、竹脇家は今も昔も“猫は助けが必要な子に手を差し伸べるだけ”というシステムなので、その時の父の行動には心底びっくりした。
最初はアビシニアンのルル、次はヒマラヤン・ブルーポイントのボギー。
ある日突然、父の不在時に見知らぬ使者によって美しい子猫が届けられるので、母は困ってすぐに釘を刺したらしく、その2匹で打ち止めとなり一件落着した。
外国の子猫たち
父は二枚目俳優「竹脇無我」としてスクリーンの中ではクールに振る舞っていたのに、素顔に戻った時、どこかで美しい猫がいると聞きつけては、こそこそと密約を結んで子猫を連れてきたのかと思うと、ちょっと笑ってしまう。
でも、初めて家族になった外国の子猫たちは本当に美しく鳴き声も独特で、最初はどう接してよいのかと戸惑うほどだった。
しかし本猫たちは、まったくお構いなし! 好奇心いっぱいに家の中を探検し、すぐに先住の猫たちと仲良くなり、連れ立って走り回っていた。
ヒマラヤンのボギーはピアノの椅子や姉の勉強机の上が定位置で、いつも勉強の邪魔をしながらウトウトとしているような、おっとりとした男の子だった。ほわほわの小さな手に、アイラインくっきりのブルーの瞳、美しくポイントの入ったグレーの毛並みは、時を忘れて見とれてしまうくらい可愛かった。
アビシニアンのルルはおてんば娘で、瞳を真っ黒にして少しの間もじっとしていられず、くるくると走り回っては鈴を転がしたような声で鳴き、家族をメロメロにした。どこにいても「ルルー」と呼ぶと、空を飛ぶようにやってきて「なあに?」とまっすぐ見つめてきた。
猫と娘を思う父
時は過ぎ、私はすっかり大人になって両親と離れて暮らすようになると、父はよく電話をくれた。携帯電話から聞こえてくる父の甘い美声は、仕事でざわついた気持ちをいつも安心させてくれた。そのうえなぜか私のことをずっと「ちゃん」付けで呼ぶので、父と話すと少女に戻っていいような気がして、とてもうれしかった。
ある日、父が電話口で「ね、ね、麻衣ちゃん、庭にミーちゃんが来てるの。なにあげたらいいかな」と小声で言い出した。初めて聞いた「ミーちゃん」について尋ねると、どうやら近所の飼い猫で、たまにお外に出してもらっている顔なじみの猫のことらしい。
私は「飼い主さんがちゃんとゴハンをあげているから、別のゴハンをあげない方がいいんじゃないかな?」と答えると、「えー、そうなの?つまんないなぁ。こっちにこないかな。ちちちちち」と、これ以上ミーちゃんとお近づきになれないことに、心底がっかりしていた。(ちなみに「ミーちゃん」とは、父が勝手に命名した名前だ)
2011年の夏に父が他界してから今年で10年になる。「二枚目俳優」というヴェールに苦しみ、うつ病になったりもしたが、私にとって父はいつまでも「お茶目で動物好きの、甘い声のかっこいい父」だ。電話だけでなく手紙もたくさんくれた父は、手紙に一生懸命覚えた私の飼い猫の名前を書いては、彼らの健康を気遣ってくれた。
今は天国でたくさんの動物たちと仕事のお仲間たちと、楽しく歌でも歌っていてくれるといいな。
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