猫はいつだって我が家のアイドル 「猫がひざに乗ったら動かなくていい」特典も
イラストレーターの竹脇さんが育った奥深い住宅地。この場所で日々繰り広げられていた、たくさんの猫たちと犬たちの物語をつづります。たまにリスやもぐらも登場するかも。
家族みんな動物好き
ルーちゃんが、なぜ竹脇家にやってきたのか全く記憶がない。
だから先日、「ねぇ、ルーちゃんって、どっから来たんだっけ?」と母に聞いてみた。すると、 叔母(母の7つ年下の妹)の家からやってきたという。
母方の家族もみんな動物好きで、祖母や叔母の家でも犬や猫を飼っていた。もちろん保護猫や、保護犬たちだ。だから、お互いに「ちょっと今は増やせない」という状況に陥ると、電話がかかってきて引き受ける。そんな時期があった。
叔母は、私の友人が保護猫のもらい手に困り私に相談してきた時、私も大学の勉強などで忙しく途方に暮れてお願いしたのをきっかけに、たくさんの保護猫や保護犬を引き取り始めた。最初のその猫は「たまちゃん」と名付け、とても可愛がってくれた。
そして叔母は私に会うと「我が家はいっつも大所帯よ」と満面の笑顔で動物たちの話をしてくれて、「寝場所を横取りされました」と犬や猫がたくさん乗ったベッドの写真を送ってくれた。
数年前に亡くなる寸前まで保護犬を引き取り、「お散歩するの、つらくない?」と聞くと、「全然平気よ!娘にも手伝ってもらっているから」と笑顔で答えてくれる、気丈で懐の深い優しい叔母だった。彼女の棺には、彼女が大切に育てた動物たちへの手土産も、たくさん入っていた。
さてルーちゃんこと本名ルッコラは、そんなふうにして我が家にやってきた。
ルーちゃん特権
アメリカンショートヘアをほうふつとさせるすてきな模様で、艶々の毛並み。天真らんまんでおっとりしていて、みんな大好き!と全身で表現しているみたいなルーちゃんは、いつもキラキラと目を輝かせながら誰かのそばにいた。
そして外出先から帰ると、玄関ドアの向こうで必ず待っていた。姿が見えない時は「ルーちゃーーーーーん!」と呼ぶとすっ飛んできた。寝ぼけながらもニコニコとやってくるルーちゃんを抱き上げ、彼の定位置であるリビングのテーブルの上に乗せてから、荷物やコートを片付ける。
そして待ち構えていたルーちゃんをひざの上に乗せ、お話を根気よく聞く。
ルーちゃんのお話はとっても長く、ぺったりとくっついて離れないので、「あのルール」が発動する。そう、猫飼いあるあるの「猫がひざに乗ったら動かなくていい」ルールだ。
ルーちゃんとおしゃべりを始めた人は、近くにいる人間になんでもお願いできる。
「ねー、テレビのリモコンとってー」とか、「お茶が飲みたい」とか、「おせんべ取ってきて」とか「冷蔵庫にケーキがあったよね」とか。
そんな特典もあり、ルーちゃんはいつも大人気。ただし、トイレに行きたい時はルーちゃんを誰かに譲らなければいけないので、お姫様のような時間は終了となる。
竹脇家ではいつだって猫がアイドル
そしてルーちゃんは猫たちともおしゃべりを欠かさない。仲良しの猫をつかまえてはゴロゴロすりすり……。ルーちゃんを見ていると、外出先でザワついていた心や、今日やらかしてしまった失敗の重たい気持ちが、スーッと薄れていく。
でも、ものすごく慌てている時や忙しい時も、いつだってルーちゃんはルーちゃんなので、少々困ることもあった。
たとえばお皿を落として割ってしまった時でも「どーしたのー?だいじょーぶー?」と近づいてきてしまうので、家に一人しかいない時は本当に焦った。
でもお皿を割ってしまったショックよりもルーちゃんの方が気がかりなので、「だめだめ!危ないから来ちゃダメ!」と叱りつつも、ルーちゃんのキョトンとしたお顔を見るとついつい「もー、あぶないって言っているでしょう?」と自然に笑ってしまう。そして家族もお皿を割ってしまったと報告しても「猫たちにケガは?掃除機かけた?濡れ布巾で拭いた?」と猫たちの心配しかしない。
ルーちゃんは竹脇家のアイドルだったなー、と思う。ルーちゃんの思い出を聞くと、家族はみんな「あー、ルーちゃんねー」と、デレデレし始める。
愛想が良すぎる渦巻き模様で艶々の、手が届きすぎるアイドル。
我が家の歴代の猫たちでアイドルグループを作ったら、かなりの大人数だけれど個性豊かで全員名前を覚えられるな!なんて鼻息荒く妄想し始めると、今夜は眠れそうにない。
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