アカミミガメの動物実験用譲渡、須磨海浜水族園が廃止 20年4月以降は行わず

ミシシッピアカミミガメ

 神戸市立須磨海浜水族園は1987年に開園し、「スマスイ」の愛称で知られています。現在、老朽化などを理由に取り壊し作業が進められていて、2024年にはリニューアルオープンする計画です。リニューアル後は民営となります。

淡水ガメを収容する施設を設置

 スマスイでは、ミシシッピアカミミガメ(以下、アカミミガメ)をはじめとした淡水ガメを収容する施設「亀楽園(きらくえん)」を2010年に設置しました。アカミミガメは、ペットとして主に米国から輸入され、それが野外に遺棄されるなどして、「推定で野外に約800万匹生息している」(環境省2015年解析データ)と言われています。同園は、外来種であるアカミミガメを自然から少しでも減らそうと考え、この施設を設置したと説明しています。

亀の収容施設
淡水ガメを収容する施設「亀楽園」©PEACE

 2019年、このスマスイが飼育しているアカミミガメを奈良県立医科大学に医学生の解剖実習用に譲渡していることがJAVAの調査で分かりました。これをきっかけにJAVAはスマスイについても調べ始め、数々の驚くべき実態が明らかになりました。

<実態1> 市民に駆除と飼育放棄をさせていた

 スマスイがアカミミガメを導入してきたルートは主に二つです。まず、外来種に関する研究として、野生化した個体をスマスイが捕獲するルート。そしてもう一つは「アカミミガメパスポート」です。「アカミミガメパスポート」とは、2010年から10年間実施していた、市民が野外で捕獲したアカミミガメをスマスイに持参すれば、1匹につき1人入場無料という制度です。

 当初は捕獲された個体に限定していた引き取りも、ペットとして飼育されていた個体が持ち込まれることが後を絶たず、それも引き取るようになりました。つまり市民にアカミミガメの駆除や飼育放棄をさせていたわけです。

 その後、JAVAからの質問状に対するスマスイからの2020年8月の回答で、アカミミガメの導入をやめたことが判明しました。

<実態2> きちんと繁殖制限をせず、過密飼育

■受け入れ匹数や飼育数を公表せず

 アカミミガメの受け入れ数や飼育数について、スマスイは「研究資料であり内部情報である詳細データの公表は行っていない」「飼育数に関する回答は控える」とJAVAへの回答を拒否しました。公立の水族園で飼育しているカメの匹数が、なぜ公表を控える必要があるデータなのでしょうか?

 しかし、スマスイは2010年の「アカミミガメパスポート」で収容した数が572匹であることをウェブサイトで報告しています。また、2014年6月の神戸新聞社の報道では、約800匹を飼育していると報じられています。これらからも非常に匹数が多く、過密であるのは明らかです。

■繁殖制限は「卵の処分」のみ

 飼育している動物を適正な数に保つために、繁殖制限をするのは当然のことでしょう。ところが、スマスイが取っていたアカミミガメの繁殖制限措置は「産卵した卵の廃棄」のみで、雌雄別飼育すらしていません。

水族園に収容されている亀
2019年9月時点の亀楽園のアカミミガメたち ©PEACE

<実態3> 研究・教育目的で冷凍殺

 JAVAがアカミミガメを殺処分することがあるかを問うと、「処分目的での殺処分は行っていないけれども、研究・教育目的に限り、殺すことはある(ペット由来の個体は対象外)」との回答でした。そして、その方法は、「冷凍法」とのことでした。

 殺すこと自体許されませんが、冷凍法は、低体温状態に陥らせ、じわじわと死に至らせることになるため、OIE(国際獣疫事務局)の動物福祉規約や米国獣医師会の安楽死ガイドライで原則不適切とされている方法です。

 その後2020年8月、JAVAの要望を受けたスマスイから「研究・教育目的でも致死措置をすることはない」との回答を得ることができました。

<実態4> 動物実験用に譲渡

■譲渡先や匹数を明かさず

 奈良県立医科大学が解剖実習用のアカミミガメをスマスイから入手していたことが判明したことから、スマスイに対して「同大学以外にどこの研究機関に譲渡しているか」と問い、年間の譲渡数や1匹当たりの金額なども尋ねたところ、研究や教育目的に限り無償譲渡することがあると認めたものの、その譲渡先や匹数については「回答を差し控える」と答えませんでした。

 さらに問題なのは、スマスイの生物の出入りに関する記録文書にアカミミガメを奈良県立医科大学へ譲渡した記録がなかったのです。

 ちなみに奈良県立医科大学の文書から、2016~2019年までに合計313匹をスマスイから譲り受けていたことがわかっています。

 その後もJAVAはスマスイへの追及を続け、2020年8月、スマスイから「2020年4月1日以降、動物実験用譲渡はしていない、今後も行わない」との回答を得ることができました。

リニューアルオープン後は飼育を継続せず

 以上のように、スマスイにおけるアカミミガメの新たな導入、致死措置、動物実験用譲渡といった問題の数々が廃止されたことは喜ばしい限りです。ところが、スマスイはリニューアル後の新しい水族園では、アカミミガメの飼育を継続しない方針なのです。2021年6月、スマスイは飼育している全個体164匹を静岡県にある民間の動物園に譲渡したことをJAVAに明らかにしました。

 JAVAは動物園、水族園をはじめ野生で暮らす動物を飼育することに反対の立場です。しかし、飼育をした以上、その動物の生態・習性や動物福祉に最大限の配慮をした施設で終生責任をもって適切に飼育するのは最低限の責任と考えます。過密飼育したり、殺したり、動物実験用に提供したり、飼育放棄したりといったことはあってはなりません。

 今回はスマスイの実態をお伝えしましたが、いま一度、動物園、水族館というものについて、皆さん、ぜひ考えてみてください。

(次回は9月13日に公開予定です)

【前の回】医学生の解剖実習、奈良医大が廃止 これまでマウスやヒヨコなどで実施

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この特集について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する特集です。
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