忘れっぽくなった母と「猫クイズ」 少しでも長く母と愛猫の時間が続くことを願う

猫
80代の母と暮らしているルビィ

 年をとると、当たり前にできていたことができなくなります。私の母はボケが進み、猫の世話も滞り気味。でも猫は母の癒やしでもある……。私は前より実家に通って、母と猫の話をよくするようになりました。

(末尾に写真特集があります)

2匹の愛猫と暮らす母

 「ねえ、猫のうんち取ってないよ」

 「トイレ掃除はしたはずよ?そうだ、猫缶を買いに行かなきゃ」

 「えっ、行ってきたばかりじゃない」

 実家を訪れた時の、私の母との会話です。

 母は80代半ばですが、物忘れが激しくなってきました。一昨年、軽度の認知症と診断され、昨秋くらいからスピードが増している感じです。

 足腰は丈夫で、ひとりでおつかいに行きますが、果物を買うといって魚を買ってきたり、のりばかりいくつも買ったり、行動が次々と変化。

 母は、私の弟と一緒に暮らし、ルビィ(8歳)とちび(6歳)というメス猫を可愛がっていますが、その猫の世話にも変化が出てきました。

猫トイレと猫
シートが数日間もつシステムトイレを新たに導入。「使っていいの?」

 朝晩のフードは忘れませんが、缶詰やレトルトをあげる時に“お箸”ですくってお皿にいれ、汚れたお箸をお皿のそばになぜか置きっぱなし(開封したウェットを放置することも)。2カ所に置いたトイレに砂は足すけど、うんちや、おしっこの塊がそのままなんてことも。

 「ちょっとかわいそうでしょ猫が」

 つい口酸っぱくいいながら、私はお箸の処理と、うんちとりをするようになりました。

 うちに余ってあった猫のシステムトイレを持っていくと、ルビィはすぐにおしっこをしたので、やはり少しがまんしていたのかもしれません。

ベランダに出た理由が「わからない」

 汚れたお箸やうんちは、その場で片付けるのがもちろんベストですが、ダイレクトな危険はありません。こわいのはやっぱり、猫の脱走です。

 その脱走も1、2度起こりました。

 「ちびちゃんがベランダにいた」というのです。

2匹の猫
母にだけ心を許すちび(左)

 ちびはかなりシャイですが、母によく甘えます。そのため、母が洗濯をしてベランダに干す時に一緒に出たのかなと思いました。

 すぐにちびに気づいて室内にいれたそうですが、私は電話で聞いてみました。

 「ちびちゃんは、なんでベランダに出たの?」

 「わからない。なにか、あったような気もするけど……」

 家に駆けつけ、窓辺にいってがくぜん、網戸が破れ、ちびはそこから出たのです。母は網戸が破れていることを忘れていました。すぐさま業者さんを呼んで、直してもらいました。

昔の猫話で心が穏やかに

 こちらはハラハラですが、でも母はルビィやちびのことが大好き。猫も母を慕い、ひざに乗ったり、一緒に寝たり。そのぬくもりは間違いなく癒やしであり、心のよりどころでしょう。

 実家の猫歴は約30年で、今の子で5匹目です。もしかしてと思い、聞いてみました。

 「うちにいちばん先に来た猫の名は?」

 「ルビィ?」

 あれほど可愛がった猫を?と驚きましたが、ヒントをあげると思い出します。

 「“べ”がつくよ」

 「ああ、ベガだ。かわいかったわね」

 「じゃあうち(私)の黒猫は?」

 「くろちゃん」

 「違うよイヌオ」

 「ああそんな子いたわね」

寄り添う猫
昼寝する母に寄り添うルビィ「夜はちびが一緒に寝るよ」

 認知症になると、覚えているはずのことがごっそり抜け落ちる「出来事記憶の消失」や、数分~数日にかけての記憶が障害される「近時記憶障害」が起きるといわれます。けれど、幼い頃の記憶はしっかりリアルに残っていることも多いそうです。

 「そういえば子どもの時、に坂の上から猫が家までついてきた。あの時はびっくりしたわ」

 確かに私の母も何十年も前のことを覚えていて、猫の話題になると必ず話しだします。

 昔のことを“話す”ことは心を安定させる「回想法」という療法でもあり、認知症の進行も穏やかにするのだとか。自宅にいることがわからなかった老人に猫のことを尋ね、「あの壁の傷は猫の○○ちゃんが引っかいた」と家を認識した例もあるのだと最近知りました。

猫の名前は?

 今は元気で私たち子どものこと、今飼っている猫のこともわかる母ですが、この先どう進行していくかわかりません。いずれ施設にはいる時もくるかもしれない。一緒に入れればよいけれど、そういう場はまだとても少ない……。

 「ルビィもちびも、いい子ちゃん」

 そう言って猫の体をなでる時の母の表情はやわらか。犬や猫をなでると“幸せホルモンが出る”といわれるけれど、あれは本当ですね。

箱に入った猫
箱に入って遊ぶルビィ。8歳だけどまだまだ若い

 少しでも猫と過ごす時間が長く続けばいいなあ。そう思いながら、母と猫の時間を見守って、最近は、「昔、家までついてきた猫」の話もよく聞いています。(何十回目かな)

 家に世話にいかれない時は、電話して、猫砂の片付けを促すとともに、こんなクイズを出しています。

 「うちにいた最初の猫の名前は?」

 毎日聞いても、母には“初めて”の質問、その都度ちょっと楽しそうです。

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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この特集について
ねこ飼い日記
古い魚屋の天井が崩れ、落ちてきた子猫「はっぴー」。その成長と、引き取った筆者との生活ぶりを同時進行でつづっています。
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