猫がトイレの外で排泄してしまう! まず健康チェック、次に粗相かマーキングかを確認

 猫と幸せに暮らすヒントや困りごとの解決法を、獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が教えてくれます。連載7回目は「猫のトイレの失敗」です。

まずは健康チェック

 猫さんと暮らす方々にアンケートを取らせていただくと、多くの方が実は猫さんが粗相の問題を起こして困ったことがある、と回答くださいます。トイレの外で排泄をしてしまう猫さんは案外多いようです。

 もし猫さんがトイレの外で排泄をするようなことがあったら、まず考えていただきたいことは、病気があるからかもしれない、ということです。

 膀胱炎、膀胱結石、腎臓病などの泌尿器系の病気やおしっこの量や回数が増えるような糖尿病、トイレをまたげなくなるような関節の痛み、腹部の痛みなどもあるかもしれません。まずは動物病院にて必要な検査と治療は受けるようにしましょう。

粗相ならばトイレが嫌いなのかも

 もし、痛みなどがない場合、あるいは、病気もあったけれどすっかり治ってもまだトイレで排泄をしてくれない場合に、次に考えることは、トイレの外で排泄しているのが、「粗相」になるのか、「マーキングやスプレー」という行動かを見ていただきます。

 粗相の場合は、ベッドとか座布団、椅子や床の上にしゃがんでトイレではない場所でしっかり排泄している行動で、「マーキング」とか「スプレー」と言われる行動は、尻尾をあげて少し震わせながら、霧吹き状におしっこを壁や床に吹き付ける行動になります。

 あなたの猫さんが「粗相」をしているようであれば、多くの場合、トイレが嫌い、あるいは合わないから粗相をしている可能性があります。

 もし猫さんがトイレから走り出てきている場合(トイレハイという人もいます)、砂を掘ったり埋めたりしていない場合は、トイレの環境が気に入っていない可能性が高いです。まずはトイレを猫フレンドリーにしてみましょう。

大きなトイレに細かい砂が好き

 トイレ自体の大きさですが、猫も人同様大きなゆったり動けるトイレが好きです。猫の頭からおしりの長さの1.5倍くらいの大きさのトイレにしてあげましょう。そうすればトイレの中でゆったり動いて砂を掘ったり埋めたりできます。

 小さいトイレにカバーが付いている場合は、トイレの中が狭くて臭いのかもしれません。ふたを外してのびのびさせてあげましょう。カバーを付けたい場合は大きなトイレに大きなカバーをかけてあげましょう。

猫トイレにいる猫
きれいなトイレを使いたい

 次に砂の種類ですが、猫さんは一般的に細かい粒子の砂を好みます。またきれいな砂を選びます。粒の大きな砂はあまり猫には人気がありません。1日2回はトイレの砂の汚れている部分をすくい、きれいな状態を保ちましょう。

 トイレが汚いとネコは嫌がります。1カ月砂を変えなくてもよい、と猫砂のメーカーさんが言っていても、猫には嫌だと思います。われわれ人間だって、トイレを1カ月流さないでもいい、掃除しないでもいいといわれているような感じです。

 抗菌効果といったって尿が流れたものを置いておくのは汚いわけですから、きちんと粒が細かくて、汚れた部分をすくって捨てるタイプの砂を選んであげてください。ただし、砂ぼこりが舞うようなものは呼吸器に問題のある子には選ばないようにしましょう。

 トイレの場所もなるべく猫が普段のんびりしている部屋から離れていない場所で、比較的プライバシーの保てる、場所を選んでみてください。ご飯の場所からは少し離してあげましょう。

スプレー行動をやめさせたいなら避妊去勢手術

 「マーキング」とか「スプレー」をしている場合は、これはコミュニケーションのための行動です。特に「ラブレター」としての機能があります。おしっこにフェロモンを混ぜて猫たちは愛のあいさつをしています。そのため、スプレー行動をやめさせたい場合、オスなら去勢手術、メスなら避妊手術をしてあげてください。

歩く猫
スプレー行動は「ラブレター」としての機能がある

 去勢手術をしても、避妊手術をしてもスプレー行動を続ける場合もあります。その場合、ほかの猫と何らかのコミュニケーションをとっている可能性があります。

 もし外を歩いている猫ちゃんがいるのであれば、ご自宅の前を通らないようにちょっと工夫したり、あるいは同居の猫ちゃん同士が馬が合わなくてスプレー行動をお互いしあうことでけん制しあっている場合もあります。その場合は隔離しないといけないかもしれません。

猫の住む環境の確認を

 最後に、何らかのストレスがあると、排泄の問題を起こす場合があります。まずは猫の住む環境を確認し、トイレの環境はいいか、砂はきれいか、寝床は整っているか、隠れる場所、登れてリラックスできる場所はあるか、確認しましょう。

なでられる猫
猫の住む環境の確認を

 いろいろ試してもトイレの外に排泄する行動が治らなければ、不安やストレスを少なくするお薬もあるので、それを使用して治療することもできます。

 でも、まずは、病気の確認とトイレの環境から見直してみましょう。

(次回は2月14日に公開予定です)

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入交 眞巳
獣医師。東京農工大学 特任准教授。どうぶつの総合病院・行動診療科主任。旧日本獣医畜産大学卒業後、米国パデュー大学で学位取得、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。アメリカ獣医行動学専門医の資格を有する。

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この連載について
ねことの暮らし相談室
 獣医師で米国獣医行動学専門医の入交眞巳先生が、どうやって猫と幸せに暮らすかのヒントとともに、猫たちの困った行動への疑問に答えていきます。
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