犬を連れて帰省、キャリーケースどう選ぶ? 犬の大きさや性格、交通手段ごとのポイント
犬を連れて帰省を考える季節になりました。愛犬に合うキャリーケースを選んで、お出かけの時間を少しでも快適に過ごせるように考えてあげたいですよね。公共交通機関の電車や新幹線、バスによっては持ち込めるキャリーケースが決まっているので、事前に確認しておきましょう。自動車に乗せるときも安全性を踏まえて選ぶのがポイントです。
ぶっつけ本番で犬をキャリーケースに入れたり乗り物に乗せたりすると、ほえる、乗り物酔い、脱走、事故など、思いがけないトラブルにつながります。JAHA家庭犬しつけインストラクターの岡田友里香先生に教えてもらった、よくある悩みやトラブルの例を参考に備えておきましょう。
キャリーケースの種類別、適した犬と使える乗り物
キャリーケースにはさまざまな種類があるので、乗り物や犬、目的などに応じて使い分けましょう。いずれのキャリーケースも、長辺が犬の鼻先から尾の付け根までの長さを基準に選んでください。広すぎると中で犬が転がったり揺れたりして不安定なので、中で犬が立てる、フセができる、横になれるくらいのぴったりサイズを選びましょう。
帰省先によって乗り物をすでに決めている人が多いと思いますが、もし検討中なら愛犬の性格や大きさに合わせて乗り物とキャリーケースを決めるのも一案です。
自家用車に乗せる場合、車内で犬を自由にさせてしまうと、運転の妨げになったり、窓の外への落下、脱走など思いがけない事故の原因になります。ご家族と愛犬の安全のために、キャリーケースに入れることをおすすめします。
公共交通機関は持ち込めるキャリーケースの大きさや重量に制限を設けている会社が大半。タクシーは会社やドライバーによって対応が変わることも。利用前に乗り物の会社に必ず確認しましょう。
(1)クレート(ハードクレート)
プラスチック製の本体にステンレス製の扉がついたキャリーケースです。帰省先や外出先でハウスとしても使えます。サイズや重量などの問題なければ、飛行機を含むほぼすべての乗り物に持ち込めます。災害時の避難や避難所生活を送る際にも役立つので、1匹につき1個を用意しておきましょう。
適した犬:ほぼすべての犬(クレートに慣れていない犬を除く)
使える乗り物:自動車、電車(新幹線を含む)、バス(高速バスを含む)、飛行機
(2)ソフトクレート
布製のクレートがソフトクレートです。ハードクレートより軽量で折り畳める分、持ち運びが楽ちん。犬を中に入れた状態では持ち運べない製品もあるので確認を。目を離す状況での使用も控えましょう。
適した犬:ものをかんだり破壊したりしない犬、おとなしい犬、シニア犬
使える乗り物:自動車、電車、バス
(3)キャリーバッグ
布製のキャリーバッグです。持ったときに飼い主さんが近いので、犬が落ち着きやすいのも特長。底板つきのほうが安定します。電車やバスが混雑しているときは押しつぶされる危険があるので、安心を優先するなら形が崩れないクレートやキャスター付きキャリーが無難です。
適した犬:中で落ち着いていられる犬、クレートよりバッグを使い慣れている犬
使える乗り物:電車、バス、自動車
(4)キャリーリュック
両手が空くので荷物が多い外出時に便利。手に持つバッグより背負うリュックのほうが大きい犬や重い犬も運びやすいのがメリット。底板がしっかりして頑丈な分、やや重さがあります。キャリーバッグと同様、混雑時には注意が必要です。
適した犬:中で落ち着いていられる犬、大きい犬、重い犬
使える乗り物:電車、バス、自動車
(5)バギー
ベビーカーのような形状のキャリーケース。相性に問題がなければ複数の犬を乗せて運べるため、自動車で出かける際に持って行くと便利。公共交通機関によっては、乗車の際にキャリー(犬が入っている部分)を取り外してフレームを畳む必要があります。重いのでエレベーターのない駅では乗り換えが大変かもしれません。
適した犬:中で落ち着いていられる犬、こまめに様子を見たほうがよい犬、多頭暮らし
使える乗り物:電車、バス、自動車(フレームとキャリーを分離できるタイプ)
(6)キャスター付きキャリー
キャスターがついているキャリーケース。体重がある犬を入れて楽に移動ができます。バギーより軽量なので公共交通機関を利用する際にも比較的持ち運びしやすいでしょう。自動車の荷台に乗せる場合は動かないようにキャスターを固定すること。
適した犬:中で落ち着いていられる犬、こまめに様子を見なくてもよい犬、ミニチュア・ダックスフントなどの胴が長い犬
使える乗り物:電車、バス、自動車
(7)スリング
布製の袋のような形状で、散歩バッグにも入る軽量タイプ。飼い主さんが抱えるように持つので安心する犬もいます。犬を歩かせると危険な人通りが多い行楽地などで使うと便利です。持ち込めない公共交通機関もあります(ショルダーバッグタイプのスリングは持ち込めることも)。
適した犬:中で落ち着いていられる犬
使える乗り物:要確認
(8)ケージ
ステンレス製のおりのようなキャリーケース。頑丈な分、かなり重量があります。犬を入れて手持ちで運ぶのは不向きですが、自家用車の荷台に犬を乗せるときには便利です。周囲が丸見えなので、ハウスとして使う場合は犬が落ち着けるようにカバーを用意しましょう。
適した犬:やんちゃでものをかんで破壊する犬
使える乗り物:自動車
(9)ドライブボックス
クレートやバッグなどに入るのが苦手な犬は、自家用車に限りドライブボックスを使うのも一案です。ヘッドレストやシートベルトで固定できるので、急ブレーキをかけたときに犬が車内に投げ出され、フロントガラスに衝突するのを防げます。
適した犬:クレートなどに入るのが苦手な犬
使える乗り物:自動車
今からでも間に合う!キャリーと乗り物の練習
愛犬に合うキャリーケースを選んだら、電車なら一駅、バスなら次の停留所まで、自動車なら5分程度乗せてみて、愛犬の様子をチェックしましょう。
日常からハウス(落ち着ける場所)として使うことも慣れる練習になります。これから帰省の日までごはんやおやつをキャリーの中であげたり、出入りの練習をしたりするだけでも、キャリーに良い印象がついて慣れやすくなります。
帰省の前に乗り物にも乗ってみること。自宅で練習ができる自動車の場合、後部座席や荷台にクレートを置き、おやつを中に入れて出入りさせたり遊んだりする練習を。数日続けてからエンジンをかけてみましょう。
犬の性格や体調に合わせ移動方法を工夫
■ほえやすいタイプ
ほえやすくて落ち着きがない犬は、出かける前に運動させて疲れさせておく方法がおすすめ。排泄も済ませてスッキリした状態なら、移動中のキャリーの中で寝てくれるでしょう。犬が夢中になれる知育トイやガムを用意しておくと、口をほえではなく、かむことに使って静かにしています。
■怖がりのタイプ
怖がりの犬は、周りの刺激や環境の変化にストレスを感じたりしやすいので、キャリーケースに入る練習や乗り物に乗る練習を愛犬の様子に合わせて行い、少しずつ時間をかけて慣らしていくことが大切。
■主に老犬
老犬はキャリーケースの中で同じ姿勢が続くと体に負担がかかるので、できれば1時間ごとに休憩を挟んで体を伸ばす機会をつくりましょう。
■主に短頭種
フレンチ・ブルドッグなどの短頭種を中心に、たとえ冬の帰省でも熱中症には注意が必要です。電車やバスは足もとにエアコンの吹き出し口があるので、キャリーケースは温風が直撃しないところに置くこと。犬をキャリーケースに入れて自動車の荷台に乗せる場合、直射日光の当たり具合もチェックしておきましょう。中の犬の様子も確認しやすく、通気性の良いクレートやケージの使用がおすすめ。
■乗り物に酔いやすい犬
乗り物酔い対策には、移動の3時間前から到着までごはんや水、おやつを控えること。動物病院で処方してもらえる酔い止め薬を飲ませるのも良い方法です。酔いを軽減するために窓から景色を眺めさせる飼い主さんもいますが、犬の場合は逆効果。目の前で動くものを見つめたり景色の刺激で興奮したりして、むしろ酔いやすくなる可能性があります。
移動中のトラブルから犬を守ために
キャリーケースからの飛び出しを防ぐ
サービスエリアの駐車場などで、犬が車から飛び降りて事故に遭ってしまうことも。キャリーケースの扉やふたを開けたときに、犬が飛び出さないように「OK」などの合図で出てくることを教えましょう。自動車のドアを開けるときも、犬に首輪とリードをつけてから。小型犬は抱っこしてから車外に出すようにしましょう。
リードをつけたままキャリーに入れない
脱走を防ぐためにリードをつけておく考え方もありますが、キャリーケースの中で犬が動いたり寝返りを打ったりした拍子にリードが足に絡まり、驚いでパニックを起こす心配があります。いたずら盛りの犬はリードをかみちぎってしまうことも。リードをはずしたほうが無難です。
どうしてもキャリーが苦手な犬は足もとへ
自動車の中で犬を自由にさせておくと、万が一の事故のときにぶつかってけがをする心配があります。クレートを使うのが理想ですが、入れるのが難しい場合は首輪とリードをつけて家族の足もとにいさせるほうが安全です。
鑑札、狂犬病予防注射済票、迷子札などを忘れずに
帰省先で万が一犬とはぐれたときのために、身元表示の鑑札、狂犬病予防注射済票、迷子札、マイクロチップをつけておくことも忘れずに!首輪やハーネスのサイズが緩くないか、破損していないかチェックしましょう。
サービスエリアのドッグランはトラブルに注意
ドッグランがあるサービスエリアで犬を遊ばせるときは、他の犬がいないときに利用したほうが無難です。知らない場所で知らない犬と会うとトラブルのリスクが上がります。
帰省先、外出先の動物病院を調べておく
いつもと違う状況で体調を崩す可能性もあるので、帰省先に近い動物病院も調べておくと安心です。12〜1月に増える誤飲の事故にも要注意。環境が変わると食欲が落ちるほどストレスや不安を感じてしまう犬は、留守番させてペットシッターに世話を頼んだり、ペットホテルに預けたりする方法もあります。
子犬のころから帰省や外出を想定し、いろいろな環境や人に慣らしたりキャリーのトレーニングをしたりすると、自宅以外の場所でも強いストレスを感じることなく落ち着きやすくなります。成犬や老犬も飼い主さんの配慮や練習で十分可能です。家族も愛犬もお互いに楽しめる帰省にしましょう!
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- 監修:岡田友里香(おかだ・ゆりか)
- 公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。認定動物看護師。神奈川・東京を中心に「出張しつけ相談With Dog」を主宰。川崎市のエアリーズ動物病院でパピークラスやプライベートレッスンも行う。しつけインストラクターと動物看護師の視点から、犬の負担が少ないしつけ方・トレーニング方法を伝えている。愛犬は柴犬のウィズ太(オス・8歳)。
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