体を伸ばせないヘビ、金網の床で暮らすサル 動愛法は犬猫以外の動物にも新飼養基準を

フクロウ
脚をつながれたまま1日中過ごす。飛ぶことはできない

 6月1日に施行された改正動物愛護法。今回の法改正により、第21条「基準遵守義務」に第2項「前項の基準は、動物の愛護及び適正な飼養の観点を踏まえつつ、動物の種類、習性、出生後経過した期間等を考慮して、次に掲げる事項について定めるものとする」が新たに追加されました。これによって動物の販売や展示などを行う動物取扱業が守るべき基準が改善される、と期待しました。

できたのは犬猫の基準だけ

 この第21条で、犬猫については具体的な基準を定めることとなっているため、環境省では、「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」において、犬猫の飼養管理基準に関して議論重ね、8月31日にとりまとめ報告が公表されました。現在、パブリックコメントの募集が行われています。100%とまでは言えなくても、これまでより格段に厳しく、また具体的な基準案となっています。

 動物愛護法第21条で基準を定める対象は、動物取扱業者が取り扱う「動物」となっています。つまり犬猫以外の哺乳類、鳥類、爬虫類も含まれているわけです。ところが、このとりまとめ報告がされた飼養管理基準の対象は犬猫のみなのです。

 犬猫のとりまとめがなされ、いよいよ犬猫以外の動物についても検討が始まるかと思いきや、環境省は、改正前の動物愛護法で規定されていた「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」(以下、施行規則)の動物取扱業者に関する箇所と、第1種と第2種の「動物取扱業者が遵守すべき動物の管理方法等の細目」(以下、細目)を犬猫以外の動物の新しい飼養管理基準としてほぼそのまま利用すると言うのです。

犬猫以外の動物の基準が変わらないと…

 しかし、皆さんもご存じのように販売や展示される動物は犬猫だけではありません。むしろ犬猫以外の動物の種類の方が多いわけです。現在、動物取扱業者が守るべき基準は、この施行規則と細目等で規定されていますが、これらが改正されなければ、たとえば次のような問題がある動物の取り扱いが全く変わらないということなのです。

■水辺で暮らす動物が泳げない

 カワウソは水中を泳ぐ習性を持つが、カワウソカフェなどでは泳ぐための水がない状態で飼育されており、それが変わらない。

ケージの中のカワウソ

■飛ぶ動物が脚をつながれたまま

 猛禽類は相当な距離を飛ぶ習性を持っているのに、猛禽類の販売イベントやフクロウカフェでは、短いリューシュに常時つながれたままにされている。休憩中や夜間も拘束されたままで飛べない。これも変わらない。

■体を伸ばすことができない

 体を伸ばすこともできない状態で展示販売されていても、行政指導が入らない。これも改善できない。
ちなみに、とぐろを巻いているイメージの強いヘビだが、腸の不快感をとるために体をまっすぐにする姿勢をとることが必要とされている。

ケースの中のへび

ケースの中のへび

■体の向きも変えられない

 動物が運動できるスペースがない状態での販売・展示は多い。このカメは体の向きも変えられない状態で展示即売会で売られていた。これも改善できない。

ケースのなかの亀

■金網の床のケージに入れられる

 脚への負担が大きく、脚を痛めるおそれのある金網の床材は、犬猫については新しい飼養管理基準で使用が禁止されることになった。しかし、犬猫以外の動物の基準がつくられなければ、このウサギやサルのように犬猫以外の動物が金網の床のケージで飼育されるのを改善できない。

ケージの中のウサギ

ケージの中の猿

 このように、泳ぐ、飛ぶ、体を伸ばすといった、あたりまえの日常的な動作すら行うことができない状態での飼育が横行しています。今の施行規則や細目では効力を発揮できなかったわけですから、より細かく、そして厳しい新しい飼養管理基準を犬猫以外の動物についても作ることが不可欠です。

環境省「犬猫以外の動物の基準もつくる」

 9月15日、JAVAは、動物愛護法に関する活動で連携してきたアニマルライツセンターとPEACEとともに、福島みずほ参議院議員を介して、環境省動物愛護管理室の室長と動物愛護管理係長と面会し、犬猫以外の動物についてもきちんと飼養管理基準を策定してくれるよう要望しました。

 室長からはその場で「犬猫以外の動物の基準もつくる」との回答がありました。ただ、犬猫の新しい飼養管理基準が来年6月に施行される時までには間に合わず、議論・検討の開始時期も策定時期も未定とのこと。

 この回答を受けて、私たち3団体からは「犬猫以外の動物の基準もつくる」方針を私たちへの口頭での回答ではなく、きちんと明文化すること、また、策定時期を決めることを強く求めました。

 それにより、10月7日の中央環境委員会動物愛護部会(第57回)で配布された「適正な飼養管理基準の具体化」に係る第3次答申案には、時期については未定のままですが、「犬猫以外の哺乳類、鳥類及び爬虫類に係る基準についても、今後検討を進めるものとする」と明記されていたのです!

 ぜひ皆様からも「1日でも早く犬猫以外の動物の飼養管理基準の検討を始めて」という声を環境省に届けてください。

※JAVAがアニマルライツセンターとPEACEとともに環境省に提出した要望書等はこちらよりご覧いただけます。

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(次回は1月11日に公開予定です)

JAVA
NPO法人動物実験の廃止を求める会(JAVA)。1986年設立。動物実験の廃止を求める活動を中心に動物の権利擁護を訴え、世界各国の動物保護団体と連携しながら活動している市民団体。
この連載について
from 動物愛護団体
提携した動物愛護団体(JAVA、PEACE、日本動物福祉協会、ALIVE)からの寄稿を紹介する連載です。
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