ノーリードで犬の散歩をすべきではない理由 国レベルで原則禁止、損害賠償のリスクも
ペット関連の法律に詳しい細川敦史弁護士が、飼い主のくらしにとって身近な話題を、法律の視点から解説します。今回は、ノーリードでの犬の散歩についてです。
自治体の条例で禁止されていることも
暑い夏が終わり、散歩しやすい季節になりました。近所や公園など、夕方の時間帯には多くの人が犬を散歩させています。
そういえば、ノーリードで愛犬を散歩させることについて、問題はないのか、違法なのかということをときどき聞かれますので、今回はこのテーマを説明したいと思います。
最初に結論を述べますと、ノーリードでの散歩は、自治体の条例によって禁止されていることがあります。また、国レベルでも原則として犬の放し飼いは禁止されています。ノーリードが原因で飼い犬が人をかんでしまった場合は、飼い主は、民事責任や刑事責任を負う可能性があります。
環境省が定める飼養管理基準には、犬の所有者は、さくで囲まれた自己の所有地や屋内など人の生命、身体及び財産に危害を加え、人に迷惑を及ぼすことのない場所を除き、原則として犬の放し飼いを行わないこと、とされています。
また、東京都、大阪府、兵庫県など自治体の条例によっては、犬は係留(綱などでつないでおくこと)しなければならないとされ、違反者に対する罰則も定められています。
刑事責任を問われる可能性も
小さくておとなしい犬であっても、世の中には犬が好きな人ばかりではなく、小さな犬でさえ怖がる人はいます。急な犬の動きにびっくりして、年配の方などが転倒してケガをするかもしれません。
また、犬が他人の物を損壊したときは、わざとけしかけるなど故意でなければ器物損壊罪は成立しません。
一方、犬が他人に怪我をさせたり、不幸にも亡くなったりした場合、故意はなかったとしても、過失傷害罪・過失致死罪が成立する可能性があります。
体が大きかったり、性格が荒っぽい犬や、過去に人をかむ事故を起こしたのに何の対処もしないまま事故が再発した場合など、過失が重大な場合は、重過失傷害罪、重過失致死罪に問われる可能性もあります。
1284万円の損害賠償認めたケースも
民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります。他人の飼い犬をかんで怪我をさせた場合、基本的には、物を壊したときと同様に考え、例えば、動物病院での治療費などを支払うことになるでしょう。もちろん、丁重にお詫びをすることも必要です。
ノーリードの場合、必要な注意を尽くしていたと裁判で主張しても、被害者に対する民事上の損害賠償責任(動物占有者の責任)を免れることはまず不可能です。
裁判例でも、ダックスフントを散歩中に犬が突然走り出したため、リードが手から放れてランニング中の人が転倒し、手首の骨が折れて後遺障害が残った事案について、1284万円の高額損害賠償を認めたケースがあります(大阪地方裁判所平成30年3月23日判決)。
以上のように、ノーリードは、国の飼養基準や自治体の条例で原則禁止されていること、刑事責任を負ったり、民事の損害賠償のリスクがあることなどから、公道はもちろん、公園内などの広い場所であってもすべきではないでしょう。
何よりも、あなたの大切な犬が悪者にされたり、トラブルに巻き込まれることのないよう、リードをつけて愛犬をしっかりと守ってください。
【前の回】いつか訪れる犬や猫との別れの時 ペットの葬儀や霊園、よい業者を見極めるポイントは
(次回は11月16日に公開予定です)
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