一人暮らしで保護猫を迎える時のポイントは? 実際に譲渡した人、された人に聞いた

 保護猫を家族に迎えようとしたとき、一人暮らしだと、留守番が多いことや環境が変化する可能性などを理由に、保護団体から譲渡を断られる事例も少なくない。

 野良猫の保護・譲渡活動を行う「kedarake保育園」のyo-yo-さんと、一人暮らしで保護猫を家族に迎えたしのぶさんに、「一人暮らしで保護猫を迎えるための条件やタイミング」についてお話を聞いた。

(末尾に写真特集があります)

タイミングを感じて

――しのぶさんは、一人暮らしですが、2匹の保護猫と暮らしていますね。どのような経緯で家族に迎えたのでしょうか。

しのぶ:教授(雄)とゴビ(雌)は、yo-yo-さんが今年のゴールデンウィークに生後1カ月で保護した兄弟猫でした。yo-yo-さんとは以前から知り合いで、ある日保護活動を報告しているインスタをのぞいていると、「子猫を保護した」と書かれていて……。その中の1匹が、見れば見るほど気になって仕方がなくなった。そのうち、その子以外の譲渡先が決まったという報告がアップされ、思わずyo-yo-さんに声をかけたんです。それが、最初に譲渡していただいた教授でした。

yo-yo-:教授は、以前TNRの現場で取り逃がした雌猫が、今年の春に出産した3兄弟だったんです。他の2匹は譲渡先が決まっていたところ、しのぶさんが声をかけてくださって。しのぶさんの人となりはよく知っていたので、「それなら」とトントン拍子にお見合い話が進みました。

しのぶ:当時はペット可物件に引っ越したばかりで、「いつか猫と暮らしたい」とは思っていたものの、一人暮らしだし、仕事は忙しいしで、お世話ができるか不安でした。そんなときに、コロナの影響で在宅勤務が始まり、タイミングを感じて教授とお見合いしてみたら、一瞬でメロメロに(笑)生後3カ月のころに正式に家族として迎え、その1カ月後、教授の遊び相手に、当時生後4カ月だったゴビちゃんを迎えました。

最初の一週間は威嚇しあっていた2匹だが、すぐに打ち解けた(写真上)ゴビ(写真手前)教授(しのぶさん提供)

yo-yo-:ゴビは、教授と一緒に保護した兄弟の1匹でした。一度はとてもいい方に声をかけていただき、トライアルに出したのですが、ご家庭のやむを得ない事情で私の元に返ってきた。そこへ、しのぶさんが引き取りたいと申し出てくださったんです。

 もともと、一人暮らしの方は、2匹以上で迎えることをおすすめしています。兄弟がいると遊び相手になったり、けんかの中でおのずと社会性を身につけてくれたりする。それになにより、留守番の時などに寂しがらずにすむので、飼い主も安心できる!

「ゴビは活発でツンデレな女の子です」と、しのぶさん(しのぶさん提供)

――しのぶさんもそうですが、コロナ自粛をタイミングに動物を飼う人が増えたそうです。

yo-yo-:コロナ禍で癒やしを求めて動物を飼う人はとても増えた。でも、それだけでは破綻しますよ。猫は生き物だから、大きな病気をすればお世話も大変だし、膨大なお金もかかる。実際、「やっぱり飼えない」と犬や猫を保護主に戻す人も多いんですよね。

 だけど、将来のことも考えた上で「家族を迎える」ということを想像できている方にとってはある意味、コロナはタイミングでした。しのぶさんは、コロナ自粛に背中を押されたいい例だと思う。

しのぶ:私の場合は、もしも猫と暮らすなら、慣れやすい子猫のうちからと想像していたのもありました。当然、子猫は成猫よりも手がかかるので、コロナで向こう1年ほどは自宅出勤できることになったのは大きかった。「教授たちが成長するまではつきっきりでお世話ができる」と思えたので。

「教授」という名前は、好きな海外ドラマのキャラクターのあだ名からとった(しのぶさん提供)

譲渡後も見守っていく

――保護団体の場合、一人暮らしの方には譲渡しないことが多いですよね。yo-yo-さんは、譲渡する際に「こういう人はダメ」という条件をお持ちですか?

yo-yo-:条件というのは、譲渡した猫を生涯責任を持って育ててもらうためにあるものですよね。保護団体の場合は運営側・保護数・譲渡希望者の規模が大きいので、条件が明確なほうがスムーズに譲渡ができるという事情がおありだと思います。だけど、もし譲渡希望者との関係を詰める時間があれば、その人の属性ではなく、人となりを見て判断できると私は思っています。

 たとえば、「一人暮らし」の場合、譲渡する側から見ると、虐待目的や生活環境が変化する可能性、経済面や、家を空ける際のお世話が懸念されるんです。でも、私は「一人暮らしだから」と断るのではなく、それらの不安材料をひとつずつ見極めることにしています。そのために、3回以上は譲渡希望者に会って、人となりや生活スタイル、猫との相性までじっくり考えます。

 実際に、私が譲渡した子の7割は、「一人暮らし」などが理由で保護団体から譲渡を断られた方ですよ。でも、10年以上譲渡してきて、みなさん問題なく猫と暮らしている。中には、男性一人暮らしの方もいましたが、今では結婚し、家族ぐるみでおつきあいしています。

 うちから譲渡するということは、“親戚づきあい”になるということ。だから、一人暮らしの方に譲渡したら、その人の暮らしの変化もずっと見守っているんです。

「猫がいる暮らしは、毎日クスッと笑えて幸せです」としのぶさん(しのぶさん提供)

覚悟を決めれば、こんなに幸せなことはない

――しのぶさんは、猫を飼うのははじめてだそうですが、一人暮らしで猫を飼うことの不安や不便はありますか?

しのぶ:それが、最初は責任が大きすぎて不安だったんですが、実際に暮らしてみて困ったことは特にないんです。当面は家で仕事をするので留守番の心配もないし、「こういうときはどうしたらいいんだろう?」ということは、すぐにyo-yo-さんやSNSでつながっている猫仲間の方がアドバイスしてくれるので。

yo-yo-:「kedarake保育園」の卒業生たちとはインスタやブログでつながっているので、生活に変化があった時や、何か疑問がある時はすぐに相談してもらえるようにしています。程よい距離でつながれるのは、ネットのいいところ。譲渡したおうちでの飼い方にはあまり口を出さず、困ったときには声をかけてもらえるような関係が理想です。

しのぶ:一人暮らしに限らず、はじめて猫を飼うなら、相談相手はいた方が安心ですね。

――教授やゴビとの暮らしについて教えてください。

しのぶ:教授は好奇心旺盛で食いしん坊。いつも人間の食べ物をねらっているんです。ゴビちゃんはおてんばでツンデレ。積極的に教授を遊びに誘います。教授のお気に入りのハンモックを奪ってしまうゴビちゃんと、それを許してあげる教授をみていると、仕事で疲れている時も癒やされます。

好奇心旺盛な教授は、キッチンに立つたびに食べ物を狙うという(しのぶさん提供)

――最後に、一人暮らしでも猫を飼いたいという方にメッセージをいただけますか?

しのぶ:もちろん、ぬいぐるみのようにかわいいだけではないんです。朝は早く起こされるし、寂しいと仕事の邪魔をする。20年一緒に生きる家族なので、その覚悟は必要。でも、覚悟さえ決めれば、「こんなに幸せなことはない!」と思います。私は、2匹と暮らしている今が、これまでの人生で一番幸せなんです。

yo-yo-:「一人暮らし」という属性だけで保護猫との暮らしを諦めないでほしいですね。もちろん、クリアしなければいけないことはたくさんあるけれど、その上で、「家族を迎える」ということをしっかり考え、その人の暮らし方にマッチする保護猫に出会ってほしい。1匹でも多くの猫が、素敵な家族に出会えることが一番ですから。

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原田さつき
広告制作会社でコピーライターとして勤務したのち、フリーランスライターに。SEO記事や取材記事、コピーライティング案件など幅広く活動。動物好きの家庭で育ち、これまで2匹の犬、5匹の猫と暮らした。1児と保護猫の母。猫のための家を建てるのが夢。

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