保護犬と暮らしたい でも何度も譲渡を断られ揺れる心…待ち続け、ついに出会えた

 メイクアップアーティストとして活躍する早坂香須子さんは、数年来“ひとりっ子”の保護猫とともに暮らしてきましたが、今年6月に保護犬が家族に加わりました。しかし、一人暮らしの早坂さんが保護犬を迎えるのはたやすいことではなかったようです。ようやく良縁を得ていざ同居すると、楽しいけど思わぬ行動にドキドキ…。早坂さんと保護犬の出会い、そしてその後の生活を、2回に分けてお送りします。まず前編では、早坂さんと保護犬の暮らしがスタートするまでの様子をお伝えします。

 東京・世田谷。大きな公園の側にあるマンションを訪ねると、早坂さんが笑顔で迎えてくれた。その足元に、誰なの?ときょとんと見上げるグレーのトイプードルの姿が。

「この子がダンちゃん。推定5歳の男の子です。最近トリミングサロンでシュナウザーカットにしてもらったんですよ。部屋もどんどん犬仕様になってます(笑)」

 今年始めに先住のペルシャ猫、なこちゃんと引っ越してきたという部屋には、1段ケージ、ベッドや知育マット、音のなるオモチャやロープ、ぬいぐるみなどが置かれている。

 隣室をのぞくと、窓辺でマイペースな感じでくつろぐ、なこちゃんの姿が見えた。

「なこちゃんとダンちゃんとの距離は、日々いい感じで近づいています」

抱えられているトイプードル
6月、譲渡会で会った時(早坂さん提供)

譲渡会で「可愛い!」

 早坂さんとダンちゃんが出会ったのは今年6月。町田市にある保護団体「小さな命を守る会」が主催した譲渡会を訪れた時だという。

「本当は別の犬が気になって見にいったのですが、その子は大人気で大勢の人に囲まれていました。ふとそばのサークルを見ると、可愛い子がいて、思わず『この子、誰ですか?』と代表に聞いてしまった。それがダンちゃん(当時の名はダニー)でした」

女性とひざの上のトイプードル
7月、早坂さんのおひざにちょこん

 ダンちゃんは昨年12月に長崎県の繁殖場からレスキューされた元繁殖犬だった。早坂さんは、譲渡会に行く前に団体のサイトで保護犬たちをチェックしていたが、そこに紹介されているダンちゃんの写真と、実物の雰囲気がまったく違うことに驚いた。

「預かりボランティアさんが愛情をたっぷり注いで下さって、表情や雰囲気が変わっていたんですね。愛らしい感じにひかれました。その場で申し込みをするとその1週間後、代表とボランティアさんに連れられてダンちゃんが家にやってきました」

 なこちゃんの反応が気がかりだったが、部屋に入ってきたダンちゃんにおびえることもなく、堂々としていたのだという。その態度に代表も安心したようで、譲渡が決まった。

 ……と、ここまで何の問題なく順調に事が進んだように思えるが、じつは早坂さんはそれまでに何件も、いろいろな保護団体に“犬の譲渡”を断られてきたそうだ。

断られて心がぐらぐら

 早坂さんは3年半前に、ブリーダーの多頭崩壊現場からレスキューされたペルシャのなこちゃんを保護団体ミグノンより迎え入れた。“女一人、猫一匹”でむつまじく暮らしているうちに、だんだんと保護犬への興味も強まってきたのだという。

「なこちゃんを迎えてから保護団体の方と知り合う機会が増え、保護活動をしている親しいモデルさんのSNSをフォローしたり、メディアの関連記事もよく読むようになりました。1月に今のマンションに引っ越してきたのですが、近くにウォーキングができる公園があり、現場以外の仕事も増えてきたので、“犬を迎えるチャンスだな”と思ったんです」

 ところが、その願いとは裏腹に、いくら申し込みをしてもご縁につながらず、「他の方に決まりました」と何件も続けて断られてしまう。じつは、ダンちゃんを迎えた保護団体でも、早坂さんは2月ごろにメスのトイプードルとお見合いをしていたのだという。

犬と遊ぶ女性
プレーマットでノーズワーク(嗅覚を使う作業)を楽しむダンちゃん

「その時は、“留守番のない家族のところ”に行くことが決まったと聞きしました。他の団体や譲渡サイトに問い合わせても、一人暮らしとか、猫がいることがネックでした……。何件も続けて断られた時は、気持ちがぐらぐらしましたね。実際に行きはしないけど、(保護犬を譲ってもらえず)ペットショップに行く人の気持ちも少しわかる気がしました」

 譲渡が決まらないなか、早坂さんは揺らぎながら「もしかしたら、まだ自分の準備が整っていないのかな」と考えたそうだ。

 そして、こう思った。

「そもそも私は何がしたいんだっけ?自分は動物たちを幸せにしたいんだよね……」

 早坂さんには、「動物たちを次の家で絶対に幸せにしたい」という保護団体の気持ちと、「なぜ自分は選んでもらえないの?」と断られる人の気持ちが両方がわかった。そこで出した結論は、「よいタイミングが訪れるまで待とう。できることをしよう」ということだった。

ベッドの上の女性と猫
最初は“なこファースト”で2匹の関係を見守りました

「保護団体の犬の散歩のボランティアとか、寄付の形で関わるのもいいと思いながら、コロナの自粛の間はなこちゃんとじっくり過ごしていました。そして、自粛明けに町田で譲渡会が開かれることを知り、出向いてダンちゃんと会いました。会の方は私が前に別の犬とお見合いしたことも覚えてくださっていて、ダンちゃんの場合は、一人暮らしで向き合える飼い主がいいと判断されたようです。動物とのご縁やタイミングって、本当にあるんですね」

 猫と犬は特性が違い、つきあい方も違う。だからこそ十分な心構えを持つ時間が必要だったんだな。と早坂さんは思った。そして実際に迎えてから、犬を飼う醍醐味や大変さを「実感する」ことになる。

ハイパーな態度に驚いてシャー

 ダンちゃんは天真爛漫で、お外が大好き。でもビビりで人の手を怖がり、早坂さんが近づくと逃げるしぐさをすることもあった。そのくせハイパーで、興奮するとなかなか冷めない。

「翌日から散歩にいきましたが、外に出るとうれしくてリードを引っ張り、他の犬を見るとぐいぐい寄っていく。サイドウォーク(犬が飼い主の前を出ないで横を歩く)は知っていたけど、なかなか思うようにできなくて」

 さらに、テンションが上がったまま家に戻り、そのまま跳びはねるように、なこちゃんに近づいた。なこちゃんは最初はスルーしていたが、何度か続くと「シャー(もういやー)」となった。それで一時的に、2匹の部屋を分けることにしたという。

 トイレにも問題があった。譲渡の時に「排泄が少し不安」と聞いていたが、ふかふかなカーペットの上で早速じゃーっとして、ケージ内も見事にうんちまみれになった。

「聞いてはいたけどこのことかーっと(笑)。犬親戚(犬を飼っている親しい友人)から、『犬はソーシャルアニマルだから人間が犬のことを理解して、愛情を持ちながら、人間が上と教えないといけない』といろいろ教わって勉強はしていたのですが、さあいよいよ犬との生活がスタートするんだな!とどきどきでした」

 その犬親戚がダンちゃんの様子を見聞きして、「ちゃんとトレーニングをしたほうがいいね」と、トレーナーの先生を紹介してくれることになった。

(後編は、9月10日に公開予定です)

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藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は16歳の黒猫イヌオと、2歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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