牛みたいな模様の看板犬「うしお」 人も犬もほっと和ませる不思議な魅力の持ち主

 東京都港区に、トリミング(ホテル・お預かり)やペットショップを手がける「フランクリンペット」があります。ここに皆を和ませる“愛されキャラ”の看板犬がいると聞いて会いにいってみました。

(末尾に写真特集があります)

白いボディに黒の模様の犬

 都営三田線の白金高輪駅から徒歩数分。道をはさんで、片側に「フランクリンペット」のトリミングサロンとホテル、もう片側にグッズやフードを扱うペットショップが建っている。

「こちらにどうぞ、皆、お待ちかねです」

女性と3匹の犬
ベル、クルトン、うしおと一緒のかずきさん

  オーナーのかずきさんに案内されて黄色の壁の店に入ると、3匹の犬が出迎えてくれた。ひときわ威勢がいいのが、白いボディに黒の模様の大柄の犬。

「この子がうしおです、牛みたいなユニークな模様でしょ(笑)。ミニチュアダックスが先輩のベルちゃん、トイプードルは6月に来たクルトン君です」

兄弟の中で1匹だけ残った

 ごきげんな感じで近づいてくるうしおは、現在4歳。じーっとこちらを見つめる目は愛嬌たっぷり。だが聞けば、生まれてすぐに兄弟6匹とともに捨てられたのだとか。

「ボランティアさん宅で保護されていたのですが、兄弟犬が次々もらわれるのに、濃い柄のせいか、うしおだけ残ってしまった。そのうちに、うしおがその家の(預かり中の)猫をくわえて歩くようになったので病院に預けられたんです。そんな時、『お店で預かれない?』とお声がかかりました。うしおが生後5カ月の頃です」

犬の赤ちゃん
赤ちゃんの時のうしお「僕、可愛いのに残ってたんだよ」(かずきさん提供)

 かずきさんは初めてうしおと会った時、“細長くて面白い犬”だなと思ったそう。その印象は、日ごとに変わった。意外に落ち着いている、けっこう甘えん坊だぞ、この子がいると和むなあ…家族を探しながら預かるうちに、かずきさんはうしおにどんどん魅かれていった。そして預かってから5カ月後、生後9カ月の時に正式に引き取ることにしたのだ。

「いちばんの決め手は、先住のベルと仲良くなったこと。ベルは推定14歳の元繁殖犬ですが、うしおは(掃除機とか)苦手なことがあるたびにぴた~っとベルにくっつく。ベルはそんなうしおの母役となったんです。うしおにとってベルは大きな存在、大事な家族です」

出会いに導かれて

 幼い頃から犬好きだったかずきさんがお店を始めたのは、今から17年前。

「義姉が結婚と同時に連れてきたフランクリンという名のゴールデンレトリバーが可愛いくて、もともと、その子に食べさせる無添加のごはんや良いグッズを仕入れたくて店を始めたんです。間もなくしてフランクリンは亡くなりましたが、5年後、もう少し犬たちのために何かしたいと思い、トリミングサロンとホテルを作りました」

 保護動物への意識が高まったのは、フードやミルクを買いにいきてくれるお客さんとの出会いがきっかけだった。

「猫の保護団体を立ち上げ、東京都動物愛護センターの登録ボランティアとして保護猫を救う活動をされていました。お話していたら、野犬や捨て犬もセンターにいると聞いて、自分にも何かできないかな?と思い相談をしてみたんです。すると、私の店の方針が“この先も生体は売らない”ということであるなら、預かりをしたり、手伝えることがいろいろあるだろうと教えてくれました」

散歩する2匹の犬
自分の足で歩けるようになった元繁殖犬ベル、毛艶もぴかぴか

 その後、かずきさんはその保護団体に犬部を併設。東京都動物愛護センターの登録ボランティアとして保護活動に関わり、1匹、2匹とセンターから引き出して家族を見つけるようになった。

 ベルは、かずきさんが3匹目にセンターから引き出した犬だった。

脚の麻痺がぐんぐん改善

「ベルは繁殖場で何匹も子犬を産んだ後に山に捨てられたと聞いています。5年前に私が引き出した時はガリガリで、傷もあり、後ろ両脚が麻痺して垂れ流し状態。もらい手もなかなか見つからないような状態でした」

 足のことを獣医師に相談すると、「車いすにすると二度と自分では歩けなくなる」と言われた。だが歩行に繫がる方法を教えてくれた。それは、ステロイド治療をしながらよいタイミングを見計らって歩行させるというリハビリ。犬にとって自分の足で歩けるのは大切なことだと思ったかずきさんは、その方法に挑んでみた。

「足に靴下をはかせたり、消毒などもまめにしながら、毎日ちょっとづつ歩かせるようにしました。そうするうちに、だんだん筋肉がついていったんです。でもあの当時、心ない言葉を浴びせてくる人もいたっけな…」

 かずきさんが懸命にベルを歩かせていると、すれ違いざまに「その子はなあに?」と怪訝そうな顔で話しかけてくる女性がいた。「この子は保護犬で、今リハビリしているんです」と答えると、「そんなボロボロの犬、保護してどうすんの」と言われたそうだ。

2匹の犬
親子みたいな、うしおとベル

 言葉を失ったかずきさんだが、丁寧にケアをして愛情を注ぐうちにベルの毛艶が見違えるほど良くなり、少しよろけながら走ることもできるようになった。表情も変わった。

「生き生きとしたベルを見て、(いろんな背景を持った犬でも)こんなに変わるんだと感動しました。ベルをうちの店の子として迎え、その後、捨て犬のうしおを迎えてからは、さらに犬たちへの思いが深まりましたね」

町の皆と友達に

 ベルが来てすぐの散歩で、少し悲しい思いをしたかずきさんだが、じつはその後、大勢の町の人に救われてきたという。

「うしおって目立つのかな。皆さんがよく話しかけてくれるようになって……今日はまだ散歩にいってないなら連れていってあげるよ、と散歩に連れ出してくれる方々も現れました。私が散歩にいくと、町なかで『あ、うしおだ』と知らない方に声をかけられることもある。自分で友達を作るのが上手な犬なんですね(笑)」

 うしおには、人だけでなく犬もほっと和ませ楽しませる不思議な魅力があるようだ。
「うしお君とうちの子を遊ばせたい」と、ホテルに犬を預けてくれるお客さんも増えた。

「お客様の犬と元保護犬が一緒になって遊ぶのは珍しいかもしれないですが、うしおはホスト犬として立派に世話役をするんです」

保護犬が保護犬を癒やす

 取材の日、うしおはエリザベスカラーを付けたトイプードルのクルトン(推定13歳)に優しく寄りそうようにしていた。

「クルトンは一緒に住んでいた高齢者が入院することになり、その方が自ら動物愛護センターに引き取り依頼をしたそうです。(収容から1カ月くらいして)センターから引き出した後、譲渡先を探すつもりでいたのですが、肥満細胞腫が見つかったので治療をしています」

 クルトンは、かずきさんの店に来た日に、すぐうしおと仲良くしたそうだ。ベルも、同世代のクルトンをすぐに受け入れた。

3匹の犬
「いらっしゃいませ~」サロンの入り口でお出迎えするベル、クルトン、うしお

「2匹がクルトンのドキドキをうまく溶かしてくれたのかな。クルトンはセンターにいた時には緊張や(飼い主と離れた)ショックからかほとんど食事をしなかったそうです。でもここでは何でもよく食べてくれて…。病気の経過観察が必要だし、クルトンはこのままベルとうしおの正式な“家族”に迎えたい、と思っているところなんです」

 話を聞き終える頃、トリミングサロンに予約をしていたパピヨンがやってきた。

〈いらっしゃいませ〉〈よく来たね〉〈今日はどういうふうに?〉

 まるでそんな声が聞こえそう。3匹の可愛い看板犬が、元気よくお客さんをお迎えした。

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は17歳の黒猫イヌオと、3歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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