往診先の患者さんが手放した猫 医師宅で愛されて幸せをつかむ

白猫「ももちゃん」
ももちゃん

 在宅医療を受けていた患者さんが、引っ越しするので猫を手放したいと医師に言った。医師の一家は猫を我が家に招いた。

(末尾に写真特集があります)

「引っ越しをするので」

 関西地方に住むKさんの夫は開業医で、往診もしている。2011年6月、一人暮らしの患者さんの家に診察に行くと、引っ越しをするので、飼っていた白猫の譲渡先を探していると言った。

 野良猫が産んだ子猫が可愛かったので拾って飼っていたのだという。「引っ越し先には連れていけない」と説明した。

 Kさんは、夫が患者さんからもらって持ち帰った白猫の写真を見て、こんなに可愛い子なのに手放したいなんて、愛されてなかったんだろうか……と、かわいそうに思い、また白猫のことがとても気に入ったので、一度会わせてもらうことになった。会ってみて、ぜひ家族に迎えたいと思ったKさんが「いつ引き取りに来ましょうか」と尋ねると、患者さんは「今すぐ連れて帰っていいですよ」と答えた。

 白猫が産まれて間もない頃から一緒に暮らしてきたのに、こんなにあっさり別れられるものなのかとKさんは驚いたが、同時に「この子を絶対に幸せにしてあげたい」と思ったという。

足を上げて座る白猫「ももちゃん」
あんよ上げポーズばっちりでしょ

フードを食べて大きく

 猫の名前は「ももちゃん」。3歳か4歳になっていた。

 Kさん宅に迎えられ、ケージに入れられると、シャーシャーいって怒った。それから5日間ほど何も食べず、トイレもしなかった。ずっと1匹で暮らしてきたので、他の猫と一緒にごはんを食べるのも嫌がった。

 やっと食べるようになっても、きまったドライフードしか食べなかった。そのドライフードにいろんなキャットフードを混ぜると、気に入ったようでたくさん食べるようになり、体重も増えた。今では6.4キロになった。

階段に寝そべる白猫「ももちゃん」
階段の途中でリラックス

お互いを思い、支え合う

 こうして、ももちゃんはすっかりKさんの家の子になった。「もも」と呼ぶと「ニャン」と返事をする。Kさんのそばにいて、寝るときも一緒に眠った。

 2019年、12歳の時、食欲がなくなり、よく吐くようになったため、動物病院につれていくと、慢性腎不全になっていることがわかった。それから、ももちゃんは一日をKさんの部屋で過ごすようになり、それまで以上に一緒にいる時間が長くなった。

 Kさんは、夫とともに家で毎日ももちゃんに点滴をし、お世話を続けた。すると、食欲も出てきたという。

「ももは、気が強そうに見えますが、本当は繊細でおとなしい、可愛い子なんです。私たちを信頼して、お薬も点滴も頑張ってくれています。ももが元気でいてくれると、私も元気になれる。お互いのことを思い、支え合っています」

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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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