長引く自粛で動物愛護団体に大きな負担 「命は待ってくれない」
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言。その期限が延長され、外出自粛が長引くなか、動物の命を救う保護活動の現場にも、大きな負担がかかっている。今、彼らはどのような状況にあるのか、猫の保護活動を続ける愛護団体に、話を聞いた。
シェルターの保護猫が通常の3倍に
2011年の立ち上げ以来、猫のTNR活動を続けてきたNPO法人「ねこけん」。東京本部と千葉支部の2カ所のシェルターと、都内2カ所に動物病院を運営し、預かりボランティアのもとにいる保護猫も含めると、東京本部で約300匹、千葉支部で約150匹の猫を保護している、大規模な団体だ(預かり数は4月時点。乳飲み子含む)。
3月にもペルシャ猫の繁殖を行ってきた劣悪なブリーディング施設から、奇形や病気、妊娠中の猫を含む、およそ30匹のレスキューを行うなど、精力的に活動してきたが、今コロナの影響下で苦しい状況に立たされている。
「今まではボランティアさんたちの協力もあって、ちゃんとうまく活動が回ってました。でもコロナの影響でいろいろ制限がかかる今の状況は生まれて初めての経験で、ぎりぎり綱渡りの状態で、模索しながら活動しています」
そう語るのは、代表の溝上奈緒子さん。イベント自粛の流れで定期的に行ってきた譲渡会が開けず、シェルターや預かりボランティアのもとにいる猫を譲渡できなくなった。その結果、通常は1カ所のシェルターで10匹程度に調整していた猫の収容数が、3倍の約30匹に膨らんでしまった。
「私たちは基本的に預かりボランティアさんに猫を一時預かりしていただいて、どうしても行き場所のない子だけがシェルターを使うようにしていました。たとえば猫風邪をひいた子が違う子にうつして、治ってもまたうつされてしまうというピンポン感染が起きるなど、頭数が多すぎるといいことがないんです。できる限り預かりさんに預かっていただくようにお願いしていますが、それでも今はシェルターが過密な状態になっています」
世話を必要としている猫たちが増えた一方、逆に稼働できるボランティアスタッフは激減した。同団体では、一時預かりボランティアをのぞき、シェルターの清掃作業や猫の運搬などの実作業にあたるボランティアが、全体でおよそ約200名いるというが、現在活動できるのは、そのうちの10~15%だという。
3密状態を避け、ボランティアスタッフの感染リスクを下げるためにも、通常は2~3名で行うシェルター内の掃除を、現在はひとりに負担してもらわざるを得ない。くわえて、「ねこけん」では、譲渡会会場で面接を行った上で新規ボランティアを採用する方式を取っているため、新しく人手を増やすこともできない状況だ。
譲渡できる猫も、家族募集ができない事情が
ねこけんでは猫の譲渡希望があった場合、通常では譲渡会でお見合いとなるが、今の状況ではまずシェルターでお見合いをし、アンケートをもとに審査を行い、審査を通過した希望者の家の状態などを確認したうえで、はじめて猫とトライアルに入る、という細かいステップを踏んでいる。しかし、その手続きにも、コロナの影響が影を落とす。
「先日もお見合いをしてもらおうと思ったんですが、預かりさんのご家族が『外出自粛中に猫のお見合いなんて』と猛反対されてお見合いができず、結局譲渡の話が流れてしまいました。ボランティアさんご本人は活動したくても、自粛せざるを得なかったようです」
このケースのように、お見合いなどの対応が難しいボランティアが預かっている猫は、譲渡可能な候補から外すなど、見直しを行ったという。
それでも、緊急事態宣言が出された4月以降もブログやSNSで譲渡可能な猫たちの情報を発信し、20匹弱の猫たちの譲渡を行った。しかし、東京本部・千葉支部合わせて月に50匹以上譲渡してきた通常時に比べ、半数以下に落ち込んでしまっている。
動物病院も活動を自粛
溝上さんは、緊急事態宣言解除後の状況も懸念する。2~4月に発情期を迎える猫は、今まさに出産シーズンを迎えているが、運営する動物病院のひとつ、杉並区にある不妊去勢手術専門の動物病院が現在稼働を自粛しているので、猫の不妊去勢手術が思うように進まない状況だ。
猫は一回の出産でおよそ3~4匹の子猫を産む。乳飲み子が多いこの時期、同団体のミルクボランティアのなかには、母猫3匹分の子猫、およそ10匹の世話を一手に引き受けている人もいるという。不幸な猫を減らすためには、不妊去勢手術で頭数を増やさないことが不可欠だが、それも叶わない今、望まれない子猫の増加が避けられない。
「練馬区にある動物病院は通常の診療所で、予約制にして患者さんがかぶらないようにして対応していますが、杉並区のほうは自粛しています。万が一コロナの感染者が出た場合、病院を閉めなくてはいけなくなるので、そこは慎重にならざるを得ません。ですが、たくさんの猫のオペができないしわ寄せが、あとでどういうふうに出るのか、恐怖です」
一方で、猫の譲渡がままならないこの現状を踏まえても、安易に猫を迎えることはしないでほしいと話す。
「外出自粛でペットを飼う人が増えていると聞きますが、コロナが終息して、通常の生活に戻ったときに飼い続けることができるのか、責任が取れるのか、ちゃんと考えて迎えてほしいですね」
それでも、命は待ってくれない
寄付も激減して、医療費など資金面の負担も大きくのしかかるが、「ここは乗り切るしかないですね」と溝上さんは話す。「人も猫も助け合い」だと言い、動物病院で所有する2台の精製器でつくった消毒用の次亜塩素酸水を、ボランティアや譲渡先の家族にも無償配布しているという。
「コロナの影響があったとしても、命は待ってくれないので、行き場のない猫がいれば引き受けないわけにはいきません。でもこの状況を乗り切れれば、この先、何も怖いものがなくなって無敵になるかなとも思います。起こってしまったことは事実として受け止め、できる限りプラスに考えて、できることを全力でやっていくしかないと思っています」
- NPO法人「ねこけん」公式サイト > https://nekoken.jp/
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