飼い主がコロナに感染したら ペット保険会社が預かりサービス

 ペット保険大手で知られるペット保険のアニコム損保を子会社に持つアニコム ホールディングス株式会社(以下、アニコム)は、4月10日から「#Stay Anicom」プロジェクトを始動した。

 新型コロナウイルスの感染拡大をうけて4月7日に非常事態宣言が発令された、そのわずか3日後のことだ。

コロナに感染した飼い主のためのサービス

#StayAnicomプロジェクトの概要は次のとおり。

  • 新型コロナに感染してしまった飼い主のためのサービス。
  • アニコムの保有する施設の一部を開放、飼い主が隔離施設で生活する間や入院の間、ペットの犬や猫を無償で預かる。
  • 預かっている間はアニコムの獣医師を中心とした社員がペットの世話をする。
  • 随時更新される情報は、ツィッターのアニコム公式アカウントで発表。

申し込みから預かりまでの流れは次のとおりだ。

  1. 申し込み専用フォームに情報を書き込む。
  2. 感染者と濃厚接触をしていない人が施設までペットを連れて行く。
  3. アニコムの施設でペットを養育。飼い主が退院・回復後に戻される。

#StayAnicomプロジェクトの流れ
#StayAnicomプロジェクトの流れ

 このプロジェクトはアニコムのペット保険に加入していない人でも利用できるというのも、大きな特徴だ。今後は希望者の数や地域、預かり状況に応じて規模を拡大する予定だという。

検討開始から48時間でプロジェクト公表

 アニコムホールディングス経営企画部長の小川篤志さんに、プロジェクトの背景と現在の状況を聞いた。

「新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、ペット飼育者の間では『自分が感染したらペットはどうすればいいのか』という不安が広まっていました。実際、当社運営のメディア『アニコムユー』にも不安の声が寄せられていたんです。そこで私たちにできることはないかと考え、ペットを一時預かりする施設を当社で提供するアイデアが浮上。不安を解消すると同時に、ペットの飼育放棄という事態を防ぎたいと考えたのです」

 同プロジェクトが公表されたのは検討開始からわずか48時間後。企業のプロジェクトとしては非常に素早い動きといえるが、「動物たちを助けたいという、社員の気持ちの表れです」と小川さんは胸を張る。

 プロジェクト発表直後から問い合わせや電話相談が相次いだ。現時点で500件ほどの問い合わせがあり、大半が応援メッセージだというが、実際に感染した(あるいは感染が強く疑われる)ケースは十数件だという。

 現在は、関東圏にある施設1カ所を使って、犬を2頭預かっているという。

アニコムは「#Stay Anicom」プロジェクトを開始
アニコムは「#Stay Anicom」プロジェクトを開始

 なお、どうしても施設まで動物の搬送ができない(第三者に頼めないなど)人については、関東地域に限り、同社社員が対応に当たるケースもあるという。

「ペットを託せる人がいない場合は、社員がお手伝いする体制を整えました。また、今後関東以外の地域では訪問サービスなども検討しています」

 訪問ペットケアは、飼い主の自宅にアニコムのスタッフが赴き、トイレや食事の世話をするというもの。基本的に外へ出ての散歩などには対応しないが、排泄物の処理もおまかせできる。感染拡大を防ぐために、スタッフはマスクや手袋はもちろん、防護服着用で万全を期す。

しかし、なぜペット保険の会社がこれほど早く、ここまでの対応に踏み切れたのか。

「アニコムは保険会社というイメージが強いかもしれませんが、100人を超える獣医師がいます。数十人の研究者もいますし、動物病院や研究所、動物愛護施設もあります。何より、数百人の動物好きが集まっています。こうした資産があるからこそ、迅速にプロジェクトがスタートできたと思っています」(小川さん)

東京都が専用ダイヤル設置

 公的機関の『公助』の動きも始まった。5月1日(金)の小池百合子東京都知事の記者会見で、次のように発表された。

  • (東京都が把握している)4月28日時点での自宅療養者は635人。家庭内感染防止のためにも、都としては無症状や継承の新型コロナウイルス感染症者を受け入れる宿泊療養施設の確保を進めている。
  • 一方で自宅滞在を希望する人が多い。それはペットや、あるいは面倒を見なければならない人がいる、などの事情によるもの。

そこで東京都では、

  1. 知人・友人、またはペットホテルなどの預け先が確保できるなら、そちらを利用してほしい。
  2. 預け先の確保に困る場合は、東京都の専用ダイヤル(03-5320-4392、平日10:00~16:00)に相談してほしい。東京都動物愛護相談センターで一時的に預かることになった。東京都獣医師会にも協力を依頼している。
    (以上、筆者抜粋要約)

都は専用ダイヤルを設置
都は専用ダイヤルを設置

 ペットを預けるための「準備のポイント」は、東京都福祉保健局のこちらのページで詳しく紹介している。

 また、福岡市は5月5日付けで「飼い主が緊急的に入院・入所した場合の、飼育困難となった犬猫を対象に」福岡市動物愛護管理センターでの預かりを発表している。

感染した飼い主のペットを預かる際の注意点

 新型コロナウイルス感染症とペットの関係や、感染者のペットを預かるときの注意事項指針となる情報などを、環境省、厚生労働省、そして東京都獣医師会が発信している。

■東京都獣医師会
新型コロナウイルスに感染した人が飼っているペットを預かるために知っておきたいこと
飼い主さんに向けて(新型コロナウイルスQ&A)

■環境省
新型コロナウイルス関連情報

■厚生労働省
動物を飼育する方向けQ&A

もしもに備える

 全国各地の老犬ホーム施設やペットホテルなどにも、感染者ペットの受け入れを始めているところが増え始めている。

「もしも自分が…」に備えて、友人、知人、頼れそうな施設を探しておくのも、飼い主のつとめといえそうだ。

【関連記事】もし飼い主がコロナに感染したら? 犬や猫のため備えておくこと

浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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