コロナ禍のアメリカ 犬や猫の一時預かりボランティアが急増

 新型コロナウイルスの流行拡大が止まらない。感染者数90万人以上、死者5万人以上(4月25日現在)と、世界でもっとも感染者・死者数が多いアメリカで、保護犬や保護猫のケアにかかわるシェルターはこの危機にどう対応しているのだろうか。

アニマルシェルターは活動を継続

 ワシントン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州と次々にロックダウンが広がり、全米で多くの施設が休業を余儀なくされるなかでも、アニマルシェルターは市民生活に欠かせない存在として活動を継続することが認められている。

 とはいえ、どのシェルターも建物自体は閉鎖し、スタッフの勤務時間も短縮。必要最小限のスタッフで必要不可欠な活動だけをなんとか続けている状況だ。必要不可欠な活動とは、保護された動物の受け入れ、一時預かり、譲渡、緊急動物医療、ペットのためのフードバンクなどである。

カリフォニアのシェルターで引き取り手を待つ子猫
カリフォニアのシェルターで引き取り手を待つ子猫

 少ない人員でシェルターを維持していくためには、収容動物の数を減らさなければならない。また、コロナウイルスに感染し、世話ができなくなった人のペットを緊急で受け入れるスペースも空けておく必要がある。

 そこで各地のシェルターが一時預かり(フォスター)ボランティアを募集したところ希望者が殺到し(もちろんオンラインで)、どのシェルターもうれしい悲鳴を上げることになった。

フォスターボランティアの希望者が激増

 American Society for the Prevention of Cruelty to Animals(ASPCAアメリカ動物虐待防止協会)によると、ニューヨークとロサンゼルスのASPCAでは、昨年の同じ時期に比べ、フォスターボランティアが70パーセント近くも増えたという(The Daily Beastより)。

 私も取材に行ったことのあるシアトルのシェルターSeattle Humaneでは、約200匹いた犬や猫たちのフォスターボランティアを募ったところ、なんと1,100人が名乗りを上げたそうだ(Seattle refined より)。これだけの候補者がいれば、その動物にとってベストな環境を提供できる家庭とマッチングすることができる。

 人間にとっても、この困難な時期に動物がそばにいてくれるのはどれほどありがたいだろう。感染への恐怖、人と会えない寂しさ、いつもの生活が突然断ち切られてしまった喪失感、この先どうなるかわからない不安…。さらに、日々心をかき乱すニュースがあふれているなかで、平常心を保つのはなかなか大変なことだ。

 そんなとき、自分が責任をもって世話をする対象がいれば生活に張りができる。そして、何よりも、動物たちはただそこにいるだけで、安らぎと喜びをくれる。多くの人は動物たちを助けるために行動したと思うが、人間のほうも大きな恩恵を受けることはまちがいない。

シェルターで引き取り手を待つ猫
シェルターで引き取り手を待つ猫

一時預かりから家族に

 ロックダウンで家にいる時間が増えた人たちの中には、フルタイムで犬や猫を飼うのは無理だけれど、いまならフォスターぐらいはできるかも、と手を挙げた人もかなりいたようだ。そういう人たちが預かっているうちに愛情が湧き、もう手放せなくなることは十分考えられるし、シェルターのほうでもそれを期待している。

 一方で、時間が経つにつれ、「やっぱり飼えない」と返されてくるケースが出てくること、また、この状況が長く続き、経済的困難に陥ってペットを飼えなくなる人たちが続出することも懸念されている。

 それでも、フォスターの経験は終生飼養への一歩にはちがいない。実際に犬や猫と暮らす経験をすることで、ほんとうに飼えるのかどうか見極められるし、動物たちにとってもシェルターのケージの中で過ごすより家庭にいるほうがずっといい。実際、フォスターを経て正式に家族として迎えることを決意した人たちも少なくないようだ。

 現在はどのシェルターもクローズしているため、犬や猫を引き取りたい人は施設に足を運ぶのではなく、各シェルターのウェブサイトやソーシャルメディアを見て申請し、個別のアポを取った上で対面する形を取っている。それでも前述のSeattle Humane では、譲渡希望者が1000人を超え、しばらく受け付けを停止するほどだったという(Seattle Humane の Facebookより)。

Seattle Humaneのアダプション・センター(現在はクローズしている)
Seattle Humaneのアダプション・センター(現在はクローズしている)

 大きな試練をもたらしているパンデミックだが、そんなときだからこそ、自分にできることは何だろうと考え、行動に移す人たちも大勢いる。その中に動物たちを助けることが含まれているのはとてもうれしいことだ。

 (現地取材に行けないため、全米各地のシェルターのウェブサイトやソーシャルメディア、ニュースサイト、新聞記事などから得た情報に基づいて記事を作成しています)

◆大塚敦子さんのHPや関連書籍はこちら

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大塚敦子
フォトジャーナリスト、写真絵本・ノンフィクション作家。 上智大学文学部英文学学科卒業。紛争地取材を経て、死と向きあう人びとの生き方、人がよりよく生きることを助ける動物たちについて執筆。近著に「〈刑務所〉で盲導犬を育てる」「犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと」「いつか帰りたい ぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ」「ギヴ・ミー・ア・チャンス 犬と少年の再出発」など。

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セラピーアニマルや動物介在教育の現場などを取材するフォトジャーナリスト・大塚敦子さんが、人と生きる犬や猫の姿を描きます。
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