アパートの壁の中から子猫の声 壁を壊して救出、幸せな家猫に
古い木造アパートの壁の中から子猫の鳴き声がした。助けるには、壁を壊さないといけない。大家と住民の了解をえて、壁に穴を空けると、白っぽい小さな子猫が現れた。
大阪市内の住宅密集地の一角に、朽ち果てそうな木造のアパートがあった。ほとんどの部屋は空室で、1室に一人のおじいさんだけが住んでいた。2018年5月、普段は静かなアパートが、にわかに騒々しくなった。壁の中から、子猫の鳴き声が聞こえてきたのだ。
「アパートの壁の中から、子猫の鳴き声がする。レスキューしてほしい」と、大阪で猫の保護活動をしている高野さんに、保護仲間の女性から連絡が入った。
急いで現場に駆けつけると、確かに1階の外壁から猫の声がした。住人のおじいさんも、2日くらい前から猫の声がしていたと言う。
どうやら2階で母猫が子猫を産み、子猫は2階から1階へと、柱を伝ってだんだん落ちていったようだった。母猫は、この子は成長できないと見限ったのだろう。どこかに行ってしまって姿は見えなかった。
壁を壊してレスキュー
ただ、子猫は壁の中。壁を壊さないと助けられない。高野さんは、大家さんとおじいさんに事情を説明して、いったん壁を壊して、子猫を助けることを許可してもらった。2人とも快く承諾してくれたという。
ニャアニャアと声がするあたりの壁を工具で壊すと、白っぽい子猫が1匹見えた。高野さんは、手を伸ばし、首をつかんで壁の中から子猫をそっと取り出した。男の子だった。
動物病院に連れて行くと、生後4週間くらいで、体重280グラム。お腹に回虫がいたので下痢と嘔吐がひどく、治療が必要だった。
先住猫にすぐなじむ
高野さんは子猫に「てん」くんと名前を付けて、ミルクとウェットフードを食べさせて育てた。てんくんはご飯をしっかりと食べた。
家にやって来た当初、先住のおとな猫たちはシャーッといって威嚇したが、てんくんが新しい環境になじむのは早かった。
「猫にも相性があります。てんの場合は、先住猫に『しゃーないな』と思わせるところがあって、スムーズに打ち解けることができました。たとえば、近寄りがたい存在のボス猫のところにもスーッと寄って行って、スヤスヤと横で眠るんです。そんなことをされたら、怒る気がしないんでしょうね」
先住猫ともうまくやっていけそうだったので、高野家の“家猫採用試験”にパス。7月に正式に家の子になった。
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