動物を「生かすための施設」へ神奈川県の試み 松島花さんが取材

 2月22日の猫の日に動物愛護について考えようと、sippoで「猫のいる幸せ」を執筆中の松島花さんを特別編集長にお迎えし、神奈川県動物愛護センター(平塚市)を取材していただきました。保護した犬や猫を「処分するための施設」から「生かすための施設」へと転換した同センターの試みを、3日間にわたりお伝えします。今回は、松島さんが、同センターの愛護・指導課長の上條光喜さんにインタビューした様子をお届けします。

(末尾に写真特集があります)

これまでに犬や猫44万匹を殺処分

松島さん:はじめまして。松島花といいます。よろしくお願します。

上條さん:よろしくお願いします。

松島さん:私はモデルの仕事とは別に、個人的に保護犬や保護猫の活動をさせていただいていて、神奈川県動物愛護センターに関心を持っていました。今日はいろいろお伺いできたらなと思います。こちらのセンターは建て替えをして、昨年の6月にオープンしたばかりだそうですね。建て替える前は、どんな施設だったのでしょうか?

上條さん:建て替える前の施設は1972年度に開設し、動物を処分するためだけの施設でした。かつては、不用犬の収集車が県内を回っていて、犬や猫を引き取るポイントが多いときで300数十カ所あり、収容していたのです。犬の収容が最も多かったのは1973年度で、年間2万匹以上の犬を収容し、1万8千匹以上を処分していました。猫の収容が最も多かったのは1988年度で約1万3千匹を収容し、1万2千匹近くを処分しました。

 施設の1階には、大きなオリが6つありました。犬たちは、まず最初のオリに入れられ、そして次の日になると隣のオリに移されていきます。

インタビューする松島花さん

松島さん:処分の日が近づくと…

上條さん:そうですね。最後の6日目が過ぎると、犬をオリから「スリーピングボックス」に追い込んで殺処分をしていた現実があります。これまでに犬猫合わせて44万匹ぐらい殺処分をしたと思います。

 飼い方の啓発にも取り込む

松島さん:悲しいですね…。そこからどうやって、現在の「生かすための施設」へと変わっていったのでしょうか?

上條さん:1975年度から避妊去勢手術をした子犬を譲渡する制度を始めていました。これは先進的なものだと思います。1973年から愛犬教室、1974年度から動物愛護のつどいを開催するなど、動物愛護や飼い方の啓発活動もどんどんやっていました。さらに、以前からボランティアさんが犬や猫を引き出して、譲渡してくださっていました。

 そのような積み重ねで、センターに残る犬や猫が減ったことで、2013年度に犬を、2014年度に猫を、なんとか殺処分しないで耐えることができました。それをどうにか続けていきたいという思いが、この「生かすための施設」をつくる大きな機運になったと思います。

神奈川県動物愛護センター愛護・指導課長の上條光喜さん

松島さん:私は日々、殺処分が迫っている保健所の犬や猫を自分のInstagramにあげて、家族として迎えてくれる方を募っています。その中で、保健所の対応はそれぞれで、すごく温度差があるのを感じていて、神奈川県動物愛護センターのように変わっていってほしいなと思っています。「生かすための施設」であるこのセンター、どんな施設なのか特徴を教えてください。

上條さん:以前はあった、殺処分機や焼却炉はありません。ここに入ってきた子たちには、うちにいる間は快適にくらしてもらえるようにと考えています。冷房も暖房もあります。以前はいずれもなかったので、冬は床に毛布を敷いてストーブを並べて、夏は扇風機で、という感じでした。このセンターにいることが犬や猫の幸せではないけど、少しでも快適にしてもらえるようにと。

松島さん:そうですね、動物たちもリラックスして、いつもの姿を見せてくれているように思いました。

保護している犬たちを紹介するカード。譲渡が決まった犬もいた

上條さん:それから譲渡に向けて、犬や猫たちをよく見てもらいたいので、犬や猫の部屋は、ガラス張りで見えやすい形になっています。ご自身で飼っていただくときの参考にしていただこうと、猫を室内飼育した時のモデルになる部屋もあります。ほかに雨で散歩に行けない時に、室内ドッグランになる大きな部屋もあります。

犬や猫の譲渡会も毎月開催

松島さん:すごいですね。譲渡を増やすためには、どんな取り組みをされていますか?

上條さん:みなさまのご寄付による「かながわペットのいのち基金」を譲渡のために活用し、猫をつれてイベントにでかけています。

松島さん:イベントに積極的に参加して、こちらに足を運んでいただくきっかけになればということですね。

上條さん:はい。この施設ではボランティアさんと共同で、月1回、譲渡会を開いています。さらにこれは以前からの取り組みですが、ここにいる犬や猫がどんな子なのか紹介する写真付きのポップも職員が作っています。

新しい家族を待つ犬

 うちに来る犬は、かんだりほえたりする子も多くいます。こうした癖を直さないと、もらってもらえない。それで「いのち基金」を活用させていただいて、ドッグスクールの先生にも定期的にきていただいています。犬をしつけてもらうだけでなく、職員が先生からしつけの方法を学ぶことで、さらにそのやり方を普及させることができます。

松島さん:人間といっしょで、1匹1匹性格もばらばらで、心を開いていく時間もばらばらですものね。それぞれの犬や猫に合わせていらっしゃるんですね。

上條さん:シニアや病気の犬や猫も多いので、体調をよくしていかないともらっていただけない。このセンターには、所長や私を含め12名の獣医師がいますが、難しい症例などは神奈川県獣医師会の先生にもきていただいて相談をしています。

次の飼い主を探す方法を伝える

松島さん:私がInstagramで保健所の犬や猫を発信していると、住民や飼い主からの持ち込みが非常に多いと感じています。こちらにも持ち込まれる方がいらっしゃると思うのですが、その際にはどのような言葉をかけていらっしゃいますか?

迷子になり保護された犬「よつば」と散歩する松島花さん

上條さん:終生飼養が当たり前なので、なぜ飼えないのですかというお話をします。我々が聞いても、やむをえないなと思う理由がある時もあるのですが、すぐに引き取ることはしません。

松島さん:そうなんですね。

上條さん:まずは飼い主さんご自身で、次の飼い主を探す努力をしていただきます。こちらで思いつく限りの方法をお伝えして、飼い主さんに探していただきます。すると、新しい飼い主が見つかりました、という連絡が来ることもあります。

松島さん:譲渡のために、さまざまな工夫や努力をされているのですね。お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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