犬の白内障 日常生活に支障や失明した段階で手術という選択肢も

:15歳の柴犬(しばいぬ)を飼っています。動物病院で白内障と診断されました。ちゃんと目が見えているので、まだ治療しなくていいと言われましたが、左目だけ目やにがひどいのが気になります。(千葉県・男性)

:人間に比べ大変難しい手術、費用も高額 総合的判断を

 老化にともなう白内障は、犬種を問わずどの犬にも起こりえます。

 犬は嗅覚(きゅうかく)や聴覚が優れているので、目が白く濁り始めてもあまり行動に変化がなく、飼い主は症状に気付きにくい。症状が進行し、犬が段差でつまずいたり、暗いところで動かなくなったりすることで、ようやく動物病院に連れてこられるケースが多いです。

 症状が進んでいる間に何かにぶつかったりして目を傷つけ、そのために角膜や結膜などの炎症を併発することもあります。目やにはそのせいかもしれません。

 白内障になっても目が見えているうちは、目薬や飲み薬による治療を選ぶのが一般的です。ただ、これらの内科的治療は、多少進行を遅らせる程度で顕著な効果はあらわれにくく、大きな期待はもてません。散歩で頻繁に壁や電柱にぶつかるなど日常生活に支障が出てきたり、最終的に失明したりした段階で、外科手術の選択肢が出てきます。

 犬の白内障手術は、人間に比べるとたいへん難しい手術と言えます。水晶体の大きさが人間の倍近くあり、取り出すのが難しいことなどが理由です。長時間の全身麻酔をかけたうえで、犬用の人工水晶体を入れます。術後は数週間単位で安静にしなければいけません。高額な手術費を覚悟する必要もあります。

 このため、犬の年齢や体調などを考慮に入れた総合的な判断が求められます。かかりつけの獣医師とよく相談してみてください。

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山根義久
1943年生まれ。動物臨床医学研究所理事長、倉吉動物医療センター・米子動物医療センター 会長、東京農工大学名誉教授。医学博士、 獣医学博士。2013年まで日本獣医師会会長を務めた。

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動物臨床医学研究所の理事長を務める山根義久獣医師が、ペットの病気に関する質問にわかりやすく答え、解説するコラムです。
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