初心者猫オーナーと座談会 猫専門病院の山本宗伸院長に悩みや疑問、全部聞いてみた!

山本宗伸先生
座談会で質問に答えてくれた山本宗伸先生
目次
  1. 今回参加してくれた猫初心者のみなさん
  2. 質問タイム①愛猫の健康管理編
  3. 質問タイム②お手入れ編
  4. 質問タイム③動物病院編
  5. どれくらい知っている? みんなで猫の寄生虫クイズ
  6. 猫初心者へ、獣医師からのメッセージ

 猫さんとの暮らしは癒しと幸せがいっぱい! でも、言葉を話さないわが子がゆえに、心配なこと、疑問もたくさん。

 そこで、猫をお迎えして1年ほどの「初心者猫オーナーさん」たちが参加し、日ごろ感じている疑問や心配事を、猫飼育歴20年以上の獣医師に聞く座談会を開催した。猫さんと暮らす上で絶対に知っておいたほうがいいクイズコーナーも。座談会、スタート!

村上奈緒美さん
〈愛猫〉ノエル(ミックス猫/男の子/2歳)
小さいころは犬と暮らしていたが、実家を出てからはペットがいない生活を過ごしていた。1年あまり前、結婚をきっかけに保護猫カフェから当時月齢10カ月のノエルくんを家族に。最初はおとなしかったノエルくんも、遊び好きの活発な男の子に成長。「毎日が幸せで楽しいです!」
角田 渚さん
〈愛猫〉なつちゃん:ミックス猫/女の子/2歳(推定)
あきくん:ミックス猫/男の子/8カ月
ふゆちゃん:女の子/8カ月
1年前、野犬出身のはるちゃん(2歳)のお散歩をしているときに出会い、野良出身の黒猫のなつちゃんを迎える。さらに今年3月、はるちゃんの保護主さんから2匹の子猫、あきくんとふゆちゃんを引き取る。9歳、7歳、5歳のお子さんもいるにぎやか大家族。

 今回の座談会では、参加者のおふたりと、先にsippoが行った初心者猫オーナー対象のアンケートで寄せられた、猫との暮らしの中でわいてくる疑問や悩みを、山本先生に聞いた。

 体を作るのは毎日のごはん。たくさんあるフードの中から何を選ぶか、悩んでいる飼い主さんは多い。今のフードでいいのか、肥満も気になる……そんな質問に山本先生が答えてくれた。

Q.ノエルは毛玉を吐くのが下手で、去勢後なので肥満も気になります。また尿路結石になる猫が多いと聞き、それぞれをケアするフードをローテーションで与えています。このままでいいのでしょうか?(村上さん)

A.フードは、毛玉や肥満などをケアする「コンセプトフード」と、「年代別フード」に分かれます。毛玉と肥満対策用のフードは食物繊維が多いという点で似ています。尿路結石は猫で多い疾患なので、多くのフードである程度対応していると思います。ノエルくんは現時点で何か病気を患っているわけではないということなので、現在のフードで問題ないでしょう。食いつきの良さなどを見ながら与えてください。

村上さんの愛猫、ノエルくん。美男子!

Q.肥満なのかを判断するのが難しいと感じています。犬は1歳時の体重がその後の基準になると聞きましたが、猫もそうなのでしょうか?(角田さん)

A.1歳時の体重が基準になるのは猫にも当てはまります。皮膚は肥満でなくてもたるんでいる猫が多いのであまり参考にはなりません。人間のBMIのようなわかりやすい指標がなく、体に触れたときの肋骨の感触や前から見たフォルムなどで判断するのですが、とても難しい。動物病院で定期的に体重を量り、獣医師に見てもらうのがいいでしょう。

Q.子猫用から成猫用のフードに切り替えるタイミングは?(アンケートより)

A.子猫用フードは高たんぱく質で、骨の形成に必要なカルシウムとリンが豊富に含まれています。骨の成長は1歳から1歳半までとされているので、基本的にはそのぐらいまでは与えて大丈夫です。成猫用に変えたからといって極端な栄養不足になることはないので、去勢や避妊手術のタイミングで変えてもいいでしょう。

 健康な子猫の場合、与えてはいけないのは療法食です。例えば腎臓病の療法食はリンを厳しく制限しているので、成長の妨げとなり、病気になってしまう可能性も。

写真左からあきくん、なつちゃん、ふゆちゃん。あきくん、ふゆちゃんの片目がふさがっているのは猫風邪のせい。このあときれいに治ったそう

 爪切りや歯磨きなど定期的なケアをするのが理想だが、苦手な猫、嫌がる猫が多い。ノエルくんは「どちらも難しくてできていません」と村上さん。角田さんは2、3日に一度歯磨きをしているというが「洗濯ネットから顔を出し、乱闘か⁉︎というぐらい無理やりに(笑)」と、参加者たちも悩んでいるよう。

ノエルちゃん、あまり動かないとのことですが、クーラーの上に乗るアクティブな一面も

Q.歯磨きを上手にするにはどうしたらいいでしょうか?(アンケートより)

A.歯磨きに関しては、できる猫の方が少ない。うちにも愛猫が3匹いますが、1匹しかできません。なんでも許容できる猫でないと難しいと思います。

 いくつかコツはあります。たとえば、味がついた歯磨きジェルや歯磨き用のちゅーるなど美味しいものを使う。冷凍フードのスープやちゅーるをガーゼに塗り、それで歯を磨くだけでも違います。猫の歯石は下あごより上あごの方が圧倒的につきやすいので、上の一番奥の第4前臼歯だけでも磨くなど、完璧を目指さずできる範囲でいいと思います。

 猫は若齢でも歯肉炎になっている子が少なくなく、特に保護猫出身などでウイルスに感染したことがあると歯周病になりやすいのです。痛くて歯磨きを嫌がっているかもしれないので、きちんと獣医師に確認してもらうことが重要です。

Q.「あき」の歯茎が腫れ、痛がるそぶりを見せます。かかりつけ医からは「エナメル質形成不全」で、食べるときに痛がるようになったら抜歯を勧められていますが……。(角田さん)

A.猫でエナメル質形成不全は稀なので、歯が吸収され骨に置き換わってしまう「吸収病巣」という猫に多い病気かもしれません。猫の唾液(だえき)中に消化酵素は含まれておらず、歯がなくても消化率が大きく下がるわけではありません。また、歯肉炎が起こると腎臓病のリスクも高まるので、歯肉炎の状態にもよりますが、痛がるようなら抜歯をお勧めします。

あきくん、おやつをハグハグ。抜歯したら痛いのがなくなるからがんばろうね

Q.愛猫の運動不足が気になっています。室内の単頭飼いで、空調のきいたリビングで過ごし、ほとんど寝ています。(村上さん)

A.年齢にもよります。12歳を超えてくると動かすのは難しい。若い猫の場合、キャットステップを効果的に使ってジャンプする機会を作ってみるといいでしょう。ごはんを2、3粒でもいいので高いところに置いて宝探しのようにすると、それも運動になります。家の中をアスレチックのようにしてあげるなど、工夫してみてください。

 犬に比べると外出にストレスを感じやすい猫は、「病院にはワクチンのときしか行かない」という飼い主さんも少なくない。動物病院との付き合い方、行くタイミングなどの疑問について、山本先生がアドバイス!

Q.ちょっと気になる症状があった時に病院に連れていくか迷ってしまいます。どのタイミングで行くべきでしょうか?(アンケートより)

A.猫の場合、吐いたり下痢をしたりといった消化器症状がとても多いのですが、食欲があり自力で食べられる場合は病気の可能性は低いと言えます。診断の基準になるのが体重。5%減ると病気の可能性が、10%減だとほぼ確実に病気と言えます。そのためにも、月に一度ぐらいは体重を測定しておくといいでしょう。

 呼吸器については、くしゃみは特に若い猫は風邪の場合が多くあまり問題はないのですが、せきが続く場合は何か起きている可能性があります。鼻血も何かしらの病気であることが多いです。

 いずれにしても、気になることがあれば病院へ。人間同様に、早期発見早期治療が望ましいですし、それで問題がなければ安心できます。

Q.保護猫を迎えた時におなかの寄生虫を薬で駆虫したのですが、その後動物病院で検査していません。1回の処置で虫はいなくなるものなのでしょうか?(アンケートより)

A.基本的には検査した方がいいと思います。最近の駆虫薬はきちんと効くものが多いので、規定量をきっちり使えば駆虫できていることがほとんどですが、体重から計算して処方するので、体の小さな子猫は処方量が少なくてうまく駆虫できないことがあります。その場合も、成長して体が大きくなってから再度薬を使えば駆虫できる場合が多い。そのためにも検査をお勧めします。

ウィルスに関する話のなかで、「犬が散歩のときに猫のウンチを踏んでそのまま家に入り、猫に感染することがある」という先生の発言に驚きと動揺が隠せない一同

 質問タイムのあとは、初心者オーナーに知っておいてもらいたい「猫の寄生虫予防」をテーマにしたクイズコーナーも。簡単なクイズ3問に○か×で答えてもらったが、果たして結果は……?

第1問:マダニに吸血されると、ときには猫の命に関わることがある?
   →ふたりとも「○」

第2問:フィラリア症に猫がかかることがある?
   →村上さん「×」、角田さん「○」

第3問:猫の寄生虫対策は複数の薬を使わなければいけない?
   →村上さん「○」、角田さん「×」

寄生虫クイズは、角田さんが全問正解、村上さんが1問正解で角田さんの勝利!

■クイズの正解と山本先生の解説

【第1問=○】
 マダニは多くの病原体を媒介し、命を脅かす病気にかかる可能性があります。中でもSFTS(重症熱性血小板減少症候群)はマダニを介して猫、犬、人間も感染します。人間が感染するとその致死率は10~30%とも言われ、まさに生命の危機に直結します。これまで関西での症例が多かったのですが、最近千葉県でも報告され、全国的に気をつけなければいけない感染症です。

角田さん「うちの猫たちは完全室内飼育ですが、犬がいるのできちんと予防しないと、と改めて思いました」

【第2問=○
 フィラリア症は和名が「犬糸状虫症」と言われ、犬の病気として知られています。しかし、猫もかかります。犬の場合は蚊が媒介してフィラリアが血液の中に入り、大量に増えて血管が詰まって突然死を引き起こします。猫の体の中ではフィラリアは増えることができないのですが、免疫反応を起こして急に重度の肺炎などで呼吸困難に陥り、突然死の原因となることが明らかになっています。

村上さん「全然知らなかったです!怖いですね」

【第3問=×
 ノミ、マダニ、フィラリアから内部寄生虫まで予防、駆虫できるオールインワンタイプの薬が発売されています。内服ではなく首の後ろに落とすスポットタイプなどで比較的扱いも簡単。基本的には大丈夫ですが、稀に臭いを気にしたり、部分的に毛が抜けたりすることがあります。相性もあるので動物病院で相談して選ぶといいでしょう。

 ノミやマダニは人間の靴や服について家の中に持ち込まれることもありますし、犬と同居していればお散歩の時に犬にくっつく可能性もあります。フィラリアは蚊が持ってくるので、さらに家の中に入れないのは難しい。室内飼育だからと安心せず、予防することをお勧めします。

※猫がケアするべき寄生虫と関連する病気について、詳しくはこちら 

獣医師として、先輩猫オーナーとして、質問に丁寧に答えてくれた山本先生

 約2時間に及んだ座談会。参加者は「楽しかったです!」と口を揃えた。そして、「知識が足りないことに気づかされました。定期的に病院に行こうと思います」と村上さん。角田さんは「ネットで検索してもわからなかったことを獣医師の先生に聞けて、本当によかったです」と感想を語った。

 山本先生は、「歯磨きや爪切りなど、お二人ともとても頑張っていますね。強いていうならあまり頑張りすぎないことも大事。猫ちゃんは自主性のある動物ですから」と笑顔を見せ、猫と暮らすすべての飼い主さんにこうメッセージを送った。

「定期的に、少なくとも年に1回は病院に行っていただきたいですね。体重測定や今回質問されたような疑問を獣医師に聞くことで、病気の早期発見・早期治療につながる可能性が高くなります。獣医師ときちんと関係性を築いておくことで、緊急で何かあったときも安心です。楽しい猫さんライフを!」

山本宗伸先生
日本大学獣医学科外科学研究室卒。東京都出身。授乳期の子猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。都内猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsにて研修。国際猫医学会ISFM、日本猫医学会JSFM所属。
>Tokyo Cat Specialist 公式サイト
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中津海麻子
フリーライター。「酒とワンコと男と女」をテーマに、ワインや日本酒や食、ペット事情、人物インタビューなど幅広く取材、執筆。JALカード会員誌「AGORA」、同機内誌「SKYWARD」、「ワイン王国」「朝日新聞デジタル &w」「好書好日」などに寄稿。

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愛猫と長く健康に暮らすための、獣医師からの珠玉のアドバイス。この特集は「ネコも動物病院プロジェクト」の一環です。supported byベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン
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