突然目が見えなくなる!? 猫専門獣医師に聞く、知っておきたい「猫の高血圧」の話

 人の生活習慣病の話題などでよく耳にする「高血圧」ですが、実は猫も、高血圧になることをご存じですか? しかも、早期に気づくことが難しく、わかったときには重大な健康トラブルが起こる可能性も……。

 この記事では、そんな猫の高血圧について、東京猫医療センター院長の服部幸先生にお話をうかがいました。「そもそも猫の血圧とは?」といった基礎知識や、血圧が高くなると健康状態にどのようなリスクが起こるのかなど、大切な愛猫のために知っておきたい「猫の高血圧」の“基本のキ”を教えていただきました。

そもそも「猫の血圧」とは

――猫の血圧はいくつが正常なのですか?

 最高血圧が140未満が基準値です。これは、ACVIM(アメリカ獣医内科学学会)が出しているガイドラインに基づいたもので、2018年の改訂にともない、最高血圧だけを診るというふうに変わりました。猫の場合、最低血圧で判断するには、まだちゃんとした根拠が不足しているからではないかと思います。

 猫は病院に来た段階で興奮して血圧が上がっているため、実際には正確な数値を測るのはなかなか難しいものです。ご自宅で落ち着いた状態で測れば、きっともっと低いのではないかと思います。

――猫の血圧はどのようにして測るのですか?

血圧を測る猫
実際に猫の血圧を測っている様子(写真提供:東京猫医療センター)

 猫の血圧を測る際は、犬猫専用の血圧計を使用します。基本的に人用のものと仕組みは同じで、計測中はしばらくじっとしてなくてはいけないのも、人と同じです。動物病院で測るのが一般的だと思いますが、機械があれば、ご自宅で測るのもいいと思います。私の病院では、飼い主さんに血圧計を貸し出しています。

猫も高血圧になる?

――猫も「高血圧」や「低血圧」になるのでしょうか?

 低血圧の場合は脱水状態や、アナフィラキシーショックを起こして救急で運ばれてきて、血圧を測ったら低血圧になっているということはありますが、普通に血圧を測定して低血圧になっているということは、あまりないと思います。

 高血圧に関しては、ACVIMのガイドラインでは「160以上は高血圧」とされています。血圧が高いことによりさまざまな症状を引き起こす状態を「高血圧症」といいますが、先のガイドラインでは、血圧の範囲によって「正常」から「重度の高血圧」まで4段階に分類されていて、160以上は治療が必要になります。

ACVIMが定める、猫の高血圧の分類を示す図
ACVIMが定める、猫の高血圧の分類(画像提供:東京猫医療センター)

 とはいえ、たとえ数値が正常血圧よりわずかに高い140だとしても、血圧が高いことは事実なので、たまたま1回だけ高くなってしまったのか、今後上がっていくのか、動物病院で定期的にモニターしたほうがいいと思います。

――猫が高血圧になる原因はどのようなことが考えられますか?

 猫の高血圧を引き起こす原因は①状況によるもの、②病気によるもの、③原因のわからないもの、の三つのいずれかに当てはまります。

① 状況により起こる高血圧
動物病院などで猫が興奮して、血圧が一時的に上がっている状態です。

②二次性高血圧
病気の発症にともない起こる高血圧。関連する病気には「慢性腎臓病」「糖尿病」「甲状腺機能亢進(こうしん)症」といった、高齢猫に多い病気があり、なかでも「慢性腎臓病」を併発しているケースが多く見られます。

③特発性高血圧
基礎疾患がなく、血液検査でも異常がないのに血圧が高い場合はこれに分類され、高血圧と診断される場合の全体の13~20%が該当するとされます。

 また、猫は年齢を重ねるとともに血圧が上がるという報告があります。

――猫が高血圧になった場合、どのような症状が見られますか?

 高血圧を示す症状は変化がわかりづらく、早期に飼い主さんが気づいて予防するのは、なかなか難しいかもしれません。

 見た目でわかるものでは、ある日突然目が真っ赤になるケース。これは、目の血管に負担がかかり、網膜(目の奥の膜)などが出血していることが原因で、気づいた時点では失明が避けられません。血圧が200を超えると、この症状が起きるリスクがぐっと高まります。

「前房出血」を起こし、目が真っ赤になった猫
目の前房(角膜と虹彩の間)で出血を起こした「前房出血」の猫。目が赤みがかっている(写真提供:東京猫医療センター)

 そのような障害が起きる前に気づけるきっかけがあるとすれば、行動異常だと思います。たとえば徘徊(はいかい)したり無目的に鳴いたりするなど、「認知症かな?」と思うような症状に飼い主さんが気づき、調べたら高血圧だったとわかるケースも、まれにあります。

 その他、脳で問題が起きれば発作やふらつきなどの症状がでますし、脈が早かったり不整脈があったりするときは血圧を測るようにしています。

――猫が高血圧症と診断された場合、どのような治療を行いますか?

 二次性高血圧の場合は、併発している基礎疾患の治療を行いますが、高血圧に対しては通常は降圧剤の投与を行います。私はCCB(カルシウム・チャンネル・ブロッカー)をよく使用しますが、これは人用の錠剤で、細かく割って与えます。いったん投薬が始まると、以後薬を飲み続ける必要があります。

「猫の高血圧」、予防と対策

寝る猫
予防が難しい猫の高血圧、大切なのは定期的にチェックをして早期発見につなげること

――人の場合の高血圧症は生活習慣病と言われますが、猫にも気をつけた方がいい生活習慣はありますか?

 猫の場合は生活習慣が原因で血圧が上がるということはないのではと思います。ただし、実際に血圧が上がっている猫の場合は、過剰な塩分摂取は避けた方がいいと思います。

――予防のために飼い主さんができることは何がありますか?

 高血圧をともなう基礎疾患にかかる可能性を下げることはできる場合がありますが、高血圧自体を予防する方法はありません。例えば腎臓病であれば、歯磨きをすること、脱水にさせないこと、腎臓に負担のある薬を避けるといったことはありますが、甲状腺機能亢進症などは予防ができません。

 ですので、高血圧は早期発見をすることが、もっとも大切です。若い猫なら年に1回、高齢猫の場合は半年に1回は健康診断を行い、血圧を測定するといいでしょう。

 今、高血圧症になっている、もしくはなりかかっている猫の場合は月1回は定期的に病院にいって、血圧をモニターして血圧が上がってこないかを見ておいた方がいいと思います。

 高血圧だからというより、健康維持のためにやるべきことはちゃんとやっておこうということですね。

服部幸獣医師
東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 北里大獣医学部卒。2005年から猫専門病院長を務める。2012年に東京猫医療センターを開院。2013年、国際猫医学会からアジアで2件目となる「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルに認定される。
https://tokyofmc.jp/

sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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この連載について
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愛猫と長く健康に暮らすための、獣医師からの珠玉のアドバイス。この連載は「ネコも動物病院プロジェクト」の一環です。supported byベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン
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