体は大きいのに小心、おっとり猫 子猫たちの教育ボランティアに

 コンビニ近くで保護された茶白猫は、大きな体なのに、極度の人見知りだった。それでも、その大きさが気に入られて新しい家に。今では、保護団体公認の”猫ボランティア„として、譲渡前の子猫たちの世話にいそしんでいる。

(末尾に写真特集があります)

大きな体に大きな顔

 7月初めのある日、埼玉県の久子さん宅を訪ねると、居間で、やんちゃ盛りの子猫たちが飛び回っていた。

 黒猫の「なずな」、キジ猫の「よもぎ」と「つくし」。愛らしい3姉妹の遊び相手をしたり、毛づくろいをしたりしてやっているのは、大きな茶白の猫だ。

 だが、この猫、3匹のお母さんではない。「ちゃたお」という名の、推定4~5歳のオス猫である。いかにも温厚そうな大きな顔が誰をもなごませる。顔だけでなく、体も大きく、やさしい目をしている。

 ちゃたおは、「人も犬も猫もしあわせに」と社会福祉活動として犬猫の保護活動を続けている千葉県の団体「goens(ごえん)」から公認された「猫ボランティア」なのだ。彼自身、2年前の晩秋、とあるコンビニ周りでgoensに一斉保護されたノラ猫の中の1匹だった。

ぼたもち体型のちゃたお
ぼたもち体型のちゃたお

大きなお尻に惚れこまれる

 保護された時、ちゃたおは、自ら車内に乗り込んだものの、いざ車から出るときは、さんざん手こずらせた。

 大きな体に似合わぬ小心もので、極度の人見知り。ノラでは食いっぱぐれただろうに、ふくよかだったから、捨てられた直後だったのかもしれない。「顔デカっ」と獣医さんを驚かせ、「健康!」と太鼓判を押してもらった。

 大きな猫がいると聞いて、12月のgoensの譲渡会にはるばるやってきたのが、宗俊・久子さん夫妻だった。久子さんは、猫が、とりわけ大きな猫が大好きだったのだ。

 人見知りのちゃたおのケージには、目隠しの布がかけられていた。宗俊さんが、布をめくってのぞいて見ると、「頭隠して尻隠さず」状態で、大きなお尻しか見えなかった。顔も見ないうちに、「この子をもらおう」とすぐに決まった。

家に来て間もなくの頃(久子さん提供)
家に来て間もなくの頃(久子さん提供)

臨月の保護猫を預かる

 当時、久子さんの家には、すでに猫と犬がいた。

 三毛猫の「バニラ」は9年前、子猫の時に庭で死にそうになっていて、娘のいさきちゃんに見つけられた。「私がいちばん」と、別格を貫いている。犬の「うらら」は、元の飼い主に保健所に持ち込まれたという過去を持っていた。

 そこに加わった新参のちゃたおは、案の定、3日間ケージの中で、その後2週間はベッドの下に引きこもった。やがて恐る恐る心を開き、うららに負けない「甘え上手」になっていった。バニラ姐さんに相手にされなくても、まるでめげない、おっとり猫だ。

 そんなある日、久子さんがお腹の大きな猫を連れてきた。「何か自分にできることを手伝いたい」と、goensが保護したばかりのノラ、それも出産間近の猫を預かったのだ。

 預かった臨月の母猫「響(ひびき)」はバリバリのノラ。2階のひと部屋を与えられ、無事4匹の子を出産したが、シャアシャアハアハアと、なつくそぶりも見せなかった。子猫たちも母を見習ってシャアシャアがやまない。このままでは譲渡が難しいため、乳離れを迎えるころ、子猫たちを階下に移した。「大丈夫、子どもたちには、いいおうちを見つけるからね」と久子さんは響に言い聞かせた。

子猫たちとすぐ仲良くなった(久子さん提供)
子猫たちとすぐ仲良くなった(久子さん提供)

子猫の教育は引き受けた!

 子猫たちが階下にやってきたとたん、久子さんの目の前で、思いがけない光景が繰り広げられた。子猫たちがちゃたおに甘え、ちゃたおはやさしく、きめ細やかに、面倒を見始めたのだ。毛づくろいしてやったり、添い寝してやったり、遊んでやったり。

 ちゃたおのおっとりさが、子猫たちにみるみる伝染し、無邪気な人懐っこい子になっていった。もうどこに出しても大丈夫。そんなちゃたおは、goens代表の今井さんから、猫として第1号の「ボランティア・メンバー」の公認をもらった。

みんなそれぞれ、しあわせに

 取材前にもらわれていったのは、白黒の男の子で、「ごま」という名になって可愛がられている。取材後に、よもぎとつくしのキジ姉妹も新しい家に巣立っていった。

「送り出すときは、母さんの響にも、ちゃたおにも、バニラとうららにも、『おうちが決まったよ。今までありがとうね』と話しました。ワクチン接種のために子猫たちを病院へ連れて行くときは、『どこに連れてくの』と訴える目をしたちゃたおが、なぜか平静でした。ちゃんと理解したのだと思います」

好奇心旺盛な子猫と、おっとりなちゃたお
好奇心旺盛な子猫と、おっとりなちゃたお

 現在、久子さんの家には、母さん猫の響と、その子なずなが、預かり猫として譲渡先が決まるのを待っている。

 子猫たち4匹のうち3匹を送り出した後、久子さんは、今度は母猫の響とゆっくり向き合い、少しずつ心をほぐしてきた。最近、響は2階の自室から、みんなのいる階下に降りてくることが多くなった。だいぶ大きくなったなずなが、ちゃたおたちと遊んでいる様子を、穏やかになった丸い目で眺めている。

「臨月のノラを預かって譲渡先探しをするなどという大変なお手伝いができたのは、ちゃたおが献身的にボランティアをしてくれたから。響もなずなも、続いてしあわせにしてやりたい」と、久子さん。

 残る2匹を送り出して、いずれワケアリ子猫を預かることがあったら、ちゃたおは、またもや張り切って受け入れることだろう。

 目下のちゃたおのボランティア活動は「人に甘えること」を響に教えることらしい。

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佐竹 茉莉子
人物ドキュメントを得意とするフリーランスのライター。幼児期から猫はいつもそばに。2007年より、町々で出会った猫を、寄り添う人々や町の情景と共に自己流で撮り始める。著書に「里山の子、さっちゃん」「猫だって……。」など。Webサイト「フェリシモ猫部」での「道ばた猫日記」連載は8年目。

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猫のいる風景
猫の物語を描き続ける佐竹茉莉子さんの書き下ろし連載です。各地で出会った猫と、寄り添って生きる人々の情景をつづります。
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