愛猫と長く幸せに 服部幸獣医師のセミナー開催、70人が参加

 愛猫と長く幸せに暮らすために必要なことを学ぶsippoセミナーが、7月9日に東京・築地の朝日新聞東京本社で開催されました。講師は、猫専門病院「東京猫医療センター」の院長で、sippoの連載でも人気の服部幸獣医師です。自宅でできる健康管理法や、気を付けたい数字など、猫と暮らす人ならぜひ知っておきたいことをお話しいただきました。参加した約70人のsippo読者のみなさんは、メモを取りながら熱心に耳を傾けていました。

 まず、猫の平均寿命はどれくらいなのでしょうか。冒頭、服部先生は「だいたい15、16歳だと思ってください」と説明しました。これを20歳まで引き上げることを目指すのが、このセミナーの目的です。

 最初は食事から。服部先生が「多くの人が勘違いしている」と指摘したのが、与えるキャットフードの量でした。

 フードのパッケージには大抵、猫の体重とそれに対応した与えるフードの量が記されています。5キロの猫を飼っている場合、体重5キロに対応するフード量を与えてしまう飼い主が多いそうですが、「この体重とは、今の体重ではなくて理想的な体重のことです」と服部先生。では、自分の飼っている猫の適正体重とはどれくらいなのでしょう?これは筋肉の量などで変わるそうなので、「獣医師に相談してもらうといいかもしれません」と話しました。

愛猫の体重、5%減ったら要注意

 愛猫の不調にはいち早く気付きたいものですが、猫は病気を隠す動物。さらに遊んでいても、ご飯を食べていても、病気ということはあるそうです。では飼い主はどう健康管理をしたらよいのでしょう。「一番お手軽」として服部先生が挙げたのは体重測定でした。

 猫を抱っこして体重計に乗り、その値から自分の体重を差し引く方法で猫の体重が計れます。ただ、一般的な体重計だと、計測できる重さが猫を計るにしては大づかみになるため、出来るならば赤ちゃん用の体重計を使うとよいそうです。

 注意すべきは体重の減り方。「毎日同じように食べているのに、体重が5%減ったら怪しいと思ってほしい」と服部先生は話します。5%というのは、例えば5キロの猫なら250グラム。この体重の変化は、猫を抱っこするだけではわからないと指摘します。

飲み水の量、体重1キロあたり50ml超なら「病気」

 飲み水の量にも注意が必要です。「できれば月1回程度、量ってほしい」と服部先生。具体的な方法として、例えば計量カップで水の量を計ってから器に入れて、次の日にその器に残った水を、再び計量カップに戻す。すると飲んだ量が把握できると紹介しました。蛇口からの流水を飲む猫は、回数や、何秒ぐらい飲んでいるのかを大体でもいいので記録しておくとよいそうです。

資料を示しながら話す服部幸先生
資料を示しながら話す服部幸先生

 飲み水の量を観察する際に、服部先生が覚えてほしいとして挙げたのは「体重1キロあたり50ml」という数字でした。「猫が水をこれ以上飲んでいたら、間違いなく病気だと思ってください」と呼びかけます。飲み水の量が「体重1キロあたり50ml」以下だから病気ではない、ということではないそうですが、これを超えたら何かあると考えられるそうです。

 飲む水の量が増える代表的な病気は、慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症だそうです。腎臓病と糖尿病は、高齢になるとなりやすい病気の1番目、2番目でもあります。服部先生は、「腎臓病と糖尿病は、元気で食欲もあるんだけど、飲み水の量が増えるのが最初の症状。これは覚えておいてください」と語りました。

愛猫のトイレは健康状態を知るチャンス

 次はおしっこです。「トイレに入ったときは健康状態を測るチャンスなので、ぜひ観察を」と話します。量や色、回数、臭いのほか、おしっこの際のしぐさにも注目してほしいそうです。また、猫がおしっこした後のトイレの砂の固まりのそばに定規をあてて、写真に撮ったり、大きさをメモしておいたりすることを勧めました。こうして記録しておくと、尿の量が増えたかどうかが分かるといいます。

 うんちも、出来るだけ細かく見ていきたいもののひとつ。服部先生は見るポイントとして、色、量、回数、臭いのほか、下痢や便秘、血便を例として挙げました。下痢をしてもうんちを持ってすぐに動物病院に連れて行けない場合、うんちの柔らかさを、牛乳や絵の具など物にたとえて記憶し、獣医師に伝えると伝わりやすいそうです。また、うんちの色が異常に黒くて光沢がある場合は、要注意。「すぐ病院へ行って下さい」と呼びかけました。

愛猫の歯は「長生きと直結」

 服部先生が「長生きとすごく直結しているように思う」と語ったのは歯でした。歯が悪いと、3年早く腎臓病になると言われているといい、「それは3年早く寿命が来るということですよね」と服部先生。歯をみがく習慣をつけたいところですが、もし難しければデンタルシートという特殊なシートを指に巻いて歯をこするだけでもいいそうです。

参加したみなさんは、メモを取りながら熱心に聞いていました
参加したみなさんは、メモを取りながら熱心に聞いていました

 セミナーの最後に、服部先生は自分の夢に触れました。それは、猫の平均寿命を20歳にすること。「そのためにはみなさんの力が必要です」と参加者に語りかけて、セミナーは終了。会場は拍手に包まれました。

服部 幸 (はっとり・ゆき)
東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 北里大獣医学部卒。2005年から猫専門病院長を務める。2012年に東京猫医療センターを開院。2013年、国際猫医学会からアジアで2件目となる「キャット・フレンドリー・クリニック」のゴールドレベルに認定される。
sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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