道ばたで拾った子猫 イケメン庭師はひっそり猫を愛でる 

 スウェーデンから来日・帰化して憧れの「庭師」という職業を手に入れた村雨辰剛さん。その筋骨隆々のイケメンぶりで、タレントとしても人気急上昇。その膝にちょこんと座るのは、自ら道ばたで保護した「芽吹き」ちゃんだ。

青い目の日本庭園「庭師」

「メちゃん」
「恥ずかしくて隠れちゃった?」
「出ておいで」

 昭和の古民家での撮影に伴ってきた愛猫の緊張を気遣い、何度もやさしい声がかかる。そのたびに「にゃあん」と、愛らしい声で返事をするのは、キジ三毛の「芽吹き」ちゃん。1歳半のスレンダーなメス猫だ。彼女をいとしげに「メちゃん」と呼ぶのは、保護主で飼い主の村雨辰剛さんだ。

 村雨辰剛という古武士のような名前は、「庭師」という伝統的な職業にも、この人の鍛えきった体や端正な居住まいにも、よく似合う。村雨さんは、青い目とアッシュブラウンの髪を持つスウェーデンからの帰化人であるが、誰よりも日本文化を愛している。

 村雨辰剛さんの名が一躍知られるようになったきっかけは、8月に4回連続で放映されたNHKテレビの「みんなで筋肉体操」だった。

「あの美しいオトコはだあれ?」と、画面に釘付けになった視聴者は、「庭師 村雨辰剛」というテロップとの痛快なギャップに、またもや心をかき乱されたのだった。

どこからどう見ても絵になるふたり
どこからどう見ても絵になるふたり

猫との縁

「少年時代は、家に、馬も豚もウサギも犬も猫もいました。スウェーデン南部の小さな田舎町だったから」

 流ちょうな日本語で、村雨さんは語る。伝統文化を尊重しない自国の風潮への違和感が少年の心に降り積もっていた。日本独特の美意識に興味を持ち、16歳でのホームステイを経て、22歳で来日。愛知県の「加藤造園」での5年間の修業ののち、庭師として一本立ちした。日本永住を決め帰化したときに、親方のお父さんにつけてもらったのが、今の名だ。

「修業時代、造園には、猫がいました。でも、その子は親方の猫だったから」

 独立して、東京近県の小体な住まいで暮らすようになってほどなく出遭ったのが、芽吹きちゃんだった。

「踏切の近くで子猫の鳴き声が聞こえて、ふと見たら、まだ2ヶ月くらいの子猫が『お母さーん、お腹すいたー』って言ってるみたいに必死に鳴いていたんです。周りには、母猫もきょうだい猫も見当たらなかった」

 コンビニで猫缶を買ってきて置いてみたら、すぐ食べに来た。それで、「飼おうかな」と、思いついたのだそうだ。

「猫を飼ってみたい、という思いはずっとあったけど、ペットショップで買うのは嫌だった。この子を保護したら、地域にも貢献できるし、三毛は『和』にぴったりだし(笑)」

「辰さんはワタシのもの」とでも言いたげな芽吹きちゃん
「辰さんはワタシのもの」とでも言いたげな芽吹きちゃん

芽吹きを祈って

 子猫は、ひもじさを抱えて生き抜いていたのか、かなり弱っていた。

「それで、木々の新しい芽が吹き出るように元気に育って、という思いを込めて、この名をつけました」

 その願い通り、芽吹きちゃんは、すくすくと大きくなった。保護直後はなかなか心を開いてくれなかったが、ごく自然に打ち解けていったという。今ではソファをひっかいたり、高いところに登って物を落としたり、膝に乗ってきたり、村雨さんの筋トレをそばで見ていたり、自由気ままにふるまう。

「猫は自由なところが魅力なんだけど、言うことをちっとも聞かないのはちょっと困るね。賢そう? うーん、どうかな?」

 そう言って、芽吹きちゃんに笑いかける村雨さん。日本本来の「抑制」の美意識からすれば、流行りのデレデレの猫自慢はもってのほか、「男はひっそりと猫を愛でる」のである。

「よく猫は妹だとか子どもだとか言われることがありますが、僕にとっては、猫は猫。それでも、大事な家族です。仕事から帰ってきたとき、『にゃあん』と出迎えてくれると、疲れが吹き飛びますね。メちゃんは、お腹が空いているだけなんだろうけど(笑)」

 現在、村雨さんは、本業の庭師の仕事に精進しつつ、タレントとしても引く手あまただ。「二足のわらじ」を履く日常をSNS上でも発信し続けるのは、ひとえに「庭師という仕事を通じて、日本文化の素晴らしさにもっともっと気づいてほしいから」。

 そんな超多忙の日常に、芽吹きちゃんは、そっと寄り添う。

「猫はそこにいるだけで、声をかけたら『にゃあん』と返事をしてくれるだけで、ほんとに安らぎます。あとは、もうちょっと言うことを聞いてくれたらね(笑)」

 青い目と、橙色の目。不思議な縁で巡り合って、ひとつ屋根の下で仲よく暮らす。村雨ファンからしたら、メちゃんは、なんともうらやまし過ぎる境遇なのだけど、当猫はいたって自然体で、イケメンの膝に「和」そのものの絵で、ちょこんと収まっているのである。

(文・佐竹茉莉子、写真・芳澤ルミ子)

(撮影協力:和室すたじお天野家 )

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