「大丈夫、大丈夫」 疲れたみんなを慰めてくれる猫写真集
猫写真家・沖昌之さんの写真集『明日はきっとうまくいく』(朝日新聞出版)が発売された。猫たちのありのままの姿をとらえた写真に、背中をそっとなでて慰めてくれるようなメッセージが添えられている。帯にはこうある。「大丈夫、大丈夫。ひと休み、ひと休み」
表紙をめくると、いきなり現れるのは、壁にだらーんともたれかかった猫の写真。
〈誰だって、めげたくなる日もある〉と言葉が添えられている。そこにいるのは猫であって、猫ではない。あなたや私の姿であり、あなたや私に向けられた言葉、のようだ。
本書に登場するのは、猫写真集にありがちなカワイイ猫ではない。むしろ、その逆。満員電車に押し込められ、上司に怒られ、頭を下げて……。社会人の切ない日常が、猫の姿を借りて、とつとつと描かれていく。
一生懸命ゆえにヌケてる猫
本書を編集したのは、沖さんの写真による『今週の猫しゃあしゃあ』を連載している「AERA」編集部。担当の大川恵実さんはこう説明する。
「沖さんの撮る猫は、みんな一生懸命で、一生懸命ゆえにヌケているんですよね。それって、私たちの人生そのものだなと思うし、だからこそ沖さんの写真は多くの人を惹きつけるのでしょう。この本は一生懸命な人を応援する本ですが、いたずらに『がんばれ、負けるな』と言うのではなく、『逃げて大丈夫。寝て忘れちゃおう。笑顔でいればなんとかなるよ』といたわる感じです」
沖さん自身、はっとした写真と言葉の組み合わせがあるという。
「茶白の猫が(茶トラの前に立って)怒る写真に、〈あなたのために闘ってくれる人もいる〉という言葉が付いたのを見て『おお!』って思いました。後ろのコからしたら矢面に立ってくれる先輩がいるって思えるし。前のコからすれば、実は後ろに闘ってくれてる先輩がいるって思える。どちらの立場からでも、この言葉は正解な感じがして『深いな』と唸らされました」
「寝て忘れちゃおう」
本書は約25センチ×約18センチと、今までの沖さんの写真集の中で最もサイズが大きく、細部まで写真を見ることができる。
連続写真を多く使い、ストーリー性を持たせたのも特徴だ。たとえば、階段に集まって眠る猫たちの2枚には〈今日うまくできなかったことは、寝て忘れよう〉と付く。
沖さんはあとがきにこう記している。
「『明日はきっとうまくいく』。そんなこと言われても、ほんとかよ、って疑うのは間違いないし、うまくいかない明日もたくさんある。だって、そんなに人生は簡単じゃないから。でも、この本に出てくるねこたちに、ぼくは何年も励まされて、何度もシャッターチャンスをもらえたから、明日のために頑張ってこられたと思ってます」
カッコよくない猫たちが、疲れたみんなを癒やしてくれそうだ。
- 『明日はきっとうまくいく』
- 発行:朝日新聞出版
写真:沖昌之
アート・ディレクション:三村漢
体裁:B5判変型・88ページ
定価:1300円+税
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