ペットグッズ店に置き去りにされた小さな子猫 「姫」になる

美人に成長した姫ちゃん
美人に成長した姫ちゃん

 ペットグッズ店に小さな子猫が置き去りにされた。困った店長は保護団体に子猫を託した。子猫は「姫」と名付けられ、まもなく新しい家に引き取られた。

(末尾に写真特集があります)

 大阪府内にあるペットグッズ店。ある時、中年の男性が生後2ケ月ほどの子猫を連れて現れた。「この子猫を個人保護活動家に渡してくれ」と、子猫を預けて立ち去った。店長は訳が分からないまま、強引に置いていかれた子猫を保護活動家に渡さねば、と示された電話番号に電話をかけた。しかし、電話には誰も出なかった。むろん、子猫を置き去りにした中年男性からも連絡はなかった。

 どちらとも連絡が取れないまま2日間経った。しかし、店長が猫を飼うわけにもいかず、保護団体「ワンハート大阪」に引き取りを依頼した。こうした場合、猫の引き取りは有料なのだが、店長はポケットマネーで依頼し、寄付もしたという。

 ペットショップのような所に置き去りにするケースは実は珍しくはないのだという。おそらく中年男性も飼育放棄するため、嘘をついて置き去りにしたのだろう。

 保護された子猫はメスで、「姫ちゃん」と名付けられた。猫にも人にもなれていたので、飼い猫だったと考えられている。

保護当時の姫ちゃん
保護当時の姫ちゃん

 京都府に住む芝さんは、ペットを飼いたいと思っていたが、夜勤のある不規則な仕事のため、犬は散歩ができないので無理だと諦めていた。一方、夫は猫好きで、実家にいた時も、一人暮らしの時も、猫を保護して育てていたという。そのため猫をペットショップで「買う」ことには抵抗があったそうだ。

 芝さんは、保護活動をしている友人から「保護猫を飼うという選択肢もある。考えてみたらどう?」とすすめられ、ネットの譲渡サイトをのぞいてみたという。

 そこにワンハート大阪の姫ちゃんが載っていた。生後6、7ケ月。可愛い盛りだった。姫ちゃんという名前も気に入ったという。

初めての猫、抱き方も知らなかった

 こうして姫ちゃんは2016年3月、芝さん宅にやって来た。芝さんは猫を飼うのが初めてで、実はひっかかれるのではないかと怖かったという。抱っこの仕方も分からず、そーっと抱き上げてみたという。

「幸いおとなしく、俊敏に動くというより、横にすり寄ってくる猫だったんです。せいぜいソファに乗る程度だったので、すぐに怖くなくなりました」

 ご飯のやり方や爪切りの仕方などすべてワンハート大阪のスタッフから教えてもらったという。
姫ちゃんは現在、3歳半。元気いっぱいに育っている。

ワンハート大阪
家族の一員として大切にされる存在な一方、営利目的で産み落とされ、身勝手な飼主の都合で捨てられる犬や猫。行政の処分所へ持ち込まれ、死を待つことしか与えられず、虐待されても物言えぬ彼ら。
この悪循環を作り出しているのも人間ですが、その悪循環にストップをかけられるのも人間です。ワンハート大阪は、一匹でも多くの命を守り、その命が尽きる最期に「ありがとう」を伝え、あの子達に「ありがとう」と言ってもらえる活動を目指しています。
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渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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この連載について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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