猫の殺処分、名古屋で倍増 40匹多頭飼育の事件が影響か
名古屋市営住宅で昨年5月、世話が行き届かない状態で40匹以上の猫が飼育されていた問題が発覚した後、名古屋市動物愛護センター(同市千種区)には、飼いきれない猫を手放す人が相次いでいる。今年度の猫の殺処分が、前年度の2倍超の161匹に急増。センターは、収容施設を増設するなどして対応に追われる事態になっている。
センターによると、今年度に麻酔薬などで殺処分した猫は161匹(昨年12月末時点)で、2017年度の76匹から急増した。収容中に死んだ猫を含めた殺処分数は、1988年度の1万1193匹をピークに減少傾向だったが、今年度は4年ぶりに増加に転じた。
昨年6月、名古屋市北区の市営住宅で、40匹以上の猫を劣悪な環境で飼育したとして、住人の姉妹が強制的に退去させられた。その後、愛知県警が姉妹を動物愛護法違反(虐待)容疑で書類送検する事件があった。それ以降、センターには「市営住宅の事件のように摘発されないか」などと、複数の猫を飼う人からの相談が増えている。
例年、飼い主からセンターに10匹以上の飼い猫が持ち込まれるのは2~3件だったが、事件発覚後は少なくとも6件にのぼっている。昨年末にセンターに持ち込んだ一人暮らしの高齢男性は「避妊手術をせず、猫が増えすぎて世話をしきれなくなった」と、20匹以上の猫を手放したという。
飼いきれないなどの理由でセンターに持ち込まれた猫は「おとなの猫」が多い。引き取り手が見つかりにくく、結果、殺処分数も増えている。センターでは1月から、「おとなの猫」に限った譲渡会を開くとともに、臨時に50~60匹分の保護スペースを設けた。
譲渡会に訪れた名古屋市千種区の服部美千代さん(87)は「10万、20万円も払って猫を買うより、ここの猫を助けてあげたい」。
譲渡会は24日まで。問い合わせは、同センター(052・762・1515)。
(里見稔)
<猫の殺処分> 環境省によると、2017年度の猫の殺処分は全国で約3万5千匹。名古屋市は09年度の殺処分数が、政令指定都市の中でワーストだった。その後は、登録ボランティア団体を通じて「里親」を探す制度や引き取りの有料化、動物愛護センターへの窓口集約などの施策で殺処分数は大幅に減っていた。
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