猫はなぜ水道の蛇口から水を飲みたがるの? 猫の興味を引く訳
どのような生き物にとっても、水分補給は生きるために大切なことです。ところが、猫を飼っている方の中には、「猫が水を飲まない」という悩みを抱えている方も多いでしょう。猫は自発的にはあまり水を飲まないことも多く、それが原因で体調不良を起こしてしまうこともあるほどです。ところが、そんな「水を飲まない猫」が、「水道の蛇口をひねると途端に近寄ってきた」ということがあります。水道から一生懸命水を飲んだり、流れる水にパンチをしたりする猫の姿はとてもかわいいものですが、どうして水道の水には興味を示すのでしょうか?ここでは、猫と水回りの不思議についてご紹介します。
水道の水は猫にとって「未知のもの」
猫にとって、お気に入りの毛布やベッドは、「ふかふかして、暖かくて、気持ちがいいもの」でしょう。なぜなら、彼らが毛布やベッドにふれたり、乗ってみたりして、触り心地や居心地の良さを確かめているからです。そして、それは飼い主が片付けてしまわない限り、朝も夜も、次の日の朝も、同じようにそこにあるはずです。
ところが、水は違います。そもそも水は一定の形を持ちませんし、しばらく放置すると蒸発してしまいます。それに、冷たいことも、ぬるいことも、時には熱いことだってあるでしょう。
このように、猫にとって水は、好奇心をそそられる不思議なものなのです。
■蛇口の水と皿の水の違い
水道の蛇口から流れ出る水は、その時々で異なる形状をしています。棒状のようにも見えますが、ねじれていることもありますし、シンクにぶつかればたちまち飛び散ります。さらに、水が流れるときには独特の音がして、光があたればキラキラ光ります。
そんなミステリアスな「蛇口から流れる水」は、いつでも存在しているわけではありません。飼い主が時々レバーを操作することで、出てきたり、消えてしまったりするのです。
以上のことから、猫は「蛇口から流れ出る水」に対して、「不思議なもの」というイメージを抱くことになります。「正体がわからないもの」に対して、猫はじっと観察したり、猫パンチをしたりして、状態を確かめようとします。ところが、水はつかむことができませんから、一向に謎を解くことができないというわけです。
それに比べて水皿の中の水は、いつもお皿の中にありますから、ある程度同じ様子を保っています。猫が水皿に入れた水を飲まない(興味を示さない)というのはこういう理由からなのです。
トイレやお風呂についてくるのは「飼い主が好きだから?」
猫は、毎日自分の住んでいるテリトリーをパトロールして、様子を確かめます。ところが通常、トイレやお風呂は扉が閉まっていますから、中の様子を確かめることができません。また、もし開けっ放しにしているとしても、飼い主が使っているときとは様子が異なるはずです。
■猫にとってのトイレやお風呂はミステリースポット
人は多くの場合、トイレやお風呂に入るときは扉を閉めます。猫にとっては中が見えない上に、シャワーやトイレを流すときの「普段は聞こえない音」さらには「入る前とは違うにおい」がするのですから、つまりは「時々飼い主が閉じこもって、普段とは違う音やにおいがする不思議な場所」という解釈になるのです。
■トイレやお風呂に対する猫の気持ち
飼い主の後についてお風呂やトイレにやってくる猫は、「飼い主と離れたくない」というよりは、「何をしているんだろう?」「パトロールのときと様子が違うぞ」と考えているのです。
ところが、もしも中に入ることが許されたとしても、猫の世界にトイレやお風呂はありませんから、結局、十分に理解するのは困難です。「ミステリー」が解決しないからこそ、毎日のようにトイレやお風呂に向かう飼い主をせっせと追いかけてしまうのでしょう。
もっとも、最近はトイレで用を足し、そして水を流す猫もいるようです。きちんと自分でトイレの水を流す猫にとっては、すでにトイレはミステリースポットではなくなっているのかもしれません。
- 「飼い猫のひみつ」
- 著者:今泉忠明/発行:イースト・プレス/価格:800円+税/新書判、212ページ
- 「猫はふしぎ」
- 著者:今泉忠明/発行:イースト・プレス/価格:760円+税/新書判、192ページ
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