三毛猫のオス、死を予知する猫…… 科学の進歩でわかってきた、猫の不思議世界
3色の毛色が特徴の「三毛猫」は、ほとんどがメスであるといわれています。なぜ、三毛猫にオスは少ないのでしょうか? 科学が発展して、生物に対するいろいろな不思議が研究によって解明されてきた現在でも、猫の生態で謎に包まれていることはまだまだあります。そんな「猫の不思議」をいくつかご紹介します。
三毛猫にオスはありえない!?
子猫がどのような特徴を持つのかは、母猫と父猫の持つ遺伝子によって決まります。
メスの猫が作る卵子には、すべて「X染色体」が入っており、オス猫の精子には、「X染色体」と「Y染色体」が半々の確率で入っています。この2つが組み合わさることで、子猫の遺伝子となるのです。
このとき、「X」同士が組み合わさればメス、「X」と「Y」なら、オスの子猫が生まれることになります。
■染色体の原理では説明がつかないオスの三毛猫
「X染色体」には、「黒」の毛色を持つ物と、「茶」の毛色を持つ物があります。また、これらは、どちらも「白」の要素を持っています。一方、「Y染色体」は、特定の色の性質を持ちません。
すると、三毛猫が生まれるのは、「黒」のX、「茶」のXの2つが組み合わさったときだけ、つまり、「メスの子猫だけ」ということになります。
ところが、実際には30,000匹に1匹という非常にレアケースながら、オスの三毛猫も存在するといわれます。これがなぜなのかは、いまだにわかっていません。いくつか仮説はあるものの、はっきりしない説ばかりで、真相は謎に包まれたままなのです。
死を予知する!? 不思議な猫「オスカー」
2007年、アメリカの養護・リハビリセンターで、「オスカー」という猫が飼われていました。この猫は、時々、患者の様子を見て回り、においを嗅いで、ときには素通りし、ときには横で丸くなったということです。
それだけなら特別不思議なことはありませんが、実は、「オスカーが横で丸くなった患者」は、必ず短期間で死を迎えているのです。「死の天使」などと呼ばれ、職員や医師を驚かせたオスカーですが、その行動の意味はまったくわかっていません。
患者の様子をうかがっていたのは、「猫のパトロール」の一環だと考えられますが、いったい何を察知して「通り過ぎる患者」と「横で丸くなる患者」を選んでいるのかは、わからないままなのです。
本当に死を予知できるはずはないでしょうが、どのような仮説を立ててみても、オスカーの行動を論理的に説明することはできません。
2007年というのは、それほど昔の話ではありません。近代になってからも、まだまだ猫は私たち人間を驚かせる、ミステリアスな存在であり続けているのです。
科学の進歩で少しずつわかってきた猫の世界
以上のように、まだまだ不思議の多い猫ですが、科学が発達したことでわかってきた部分もあります。そのひとつが、「味覚」に関する研究です。
■猫の味覚
猫は、アミノ酸の味を敏感に察知します。猫が好むアミノ酸は、人間にとって甘く感じられ、嫌うアミノ酸は苦く感じられるということもわかっています。しかし、猫は甘味を感じる能力が乏しいため、人間と同じ味を感じているわけではなく、「なぜか猫が好むアミノ酸は人間が口に入れれば甘い」とされてきました。
ところが、2015年に、「酸味」や「甘味」などのように、アミノ酸の「脂味」を新しい味覚とする説が発表されました。脂味は食感として「脂っこい」というだけでなく、味があるというものです。実験でも、被験者のほとんどが、アミノ酸を含む液体と含まない液体を区別できたという結果が出ています。これによって、猫と同じように、人間もアミノ酸の「脂味」を感じ取れているということがわかったのです。研究はまだ序盤ではありますが、猫が好むアミノ酸の味の理解に少し近づいた瞬間でした。
猫が暮らしている世界のことや、猫の生態は、まだまだ謎に包まれています。しかし、科学の進歩が、その世界を理解するために役立っていることは確かです。
研究を重ねていくことで、きっと、謎に満ちた猫の生態を理解できる日が来ることでしょう。その日まで、すれ違ったり、お互いにミステリアスさを感じたりしながら、人間と猫の共存は続いていくのです。
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