元野良猫「ぽんた」の不満と不安 久しぶりに夜中に大声で鳴いた

 10日間で0.5kgも体重が増えてしまった、ぽんた。理由は、夜中におやつをあげていたからだと思っていたが、動物病院から戻り、ぽんたに普段食べさせているドライフードの袋をあらためて確認し、それだけではないことを知った。

(末尾に写真特集があります)

 私が与えていたのは、スーパーに売っている日本のメーカーのものだった。袋には、体重5kgの成猫には1日につき80gが適量だと記載されており、規定は守っていた。熱量に換算すると320kcalだ。

 しかしこの日、病院ですすめられて購入した海外のブランドのものは、体重5kgの成猫の標準給餌目安は70gで、熱量は250kcal。低カロリー設計になっているとはいえ、私があげていたものに比べ、70kcalも少ないのは気になる。

 そこでインターネットで成猫に必要な1日の適正カロリーについて調べた。すると、体重や年齢のほかに運動量、完全室内飼いかそうでないか、去勢・避妊済みか否かなど、猫によって必要なカロリーは異なることがわかった。

「なんか、おいしいものはないかな」(小林写函撮影)
「なんか、おいしいものはないかな」(小林写函撮影)

 ぽんたの場合は、シニア猫で去勢済み、家の中での部屋から部屋への移動以外たいした運動はしていない。320kcalは明らかにカロリーオーバーだったのだ。病院で購入したフードの内容をよく読むと、去勢後から7歳頃までの雄猫用、とある。去勢・避妊手術後の猫は体重が増加しやすいために、低カロリーかつ高タンパクに作られているのだった。

 ぽんたは、フードを器に盛れば盛っただけ食べる。猫を飼っている知り合いからは「猫は犬とは違い、どれだけ器にフードを入れても、そのときに自分に必要な量しか食べないから太らない」と聞かされていた。私はそれをうのみにしていた。しかし、すべての猫には当てはまらないようだ。

 ぽんたは、野良生活をしていたため「食べられるときに食べておかないと」という生命への危機感もあり、必要以上に摂取してしまっているのかもしれない。

 ツレアイは、ダイエットに難色を示した。「こんなに食べたがっているのにかわいそう。猫はちょっとぽっちゃりしているぐらいが可愛い」と言う。

 だからといって、これまでと同じ量を与え続けるわけにはいかない。ひょっとして、今の環境に慣れてくれば食べる量が落ち着くかもしれない。しかしその前に病気になったらどうするのか。肥満が原因で健康を害したら、苦しんでかわいそうなのは、ぽんただ。そして、治療費を払うのは私なのである。

 病院では、体重4.5kgを目指すのであれば、1日の給餌量を50gにするようにと言われた。これまでの80gに比べると、3分の2以下だ。

「ぼくにもやらせて」(小林写函撮影)
「ぼくにもやらせて」(小林写函撮影)

 その日の夜、私は新しいぽんたのフードを空け、廊下に置いてある器に適正量を入れた。このフードの試供品は、すでに与えたことがあり、ぽんたが食べることは知っていた。ぽんたは、スズメの涙ほどの量を瞬く間に平らげると、立てた前脚をそろえて座り、顔を上げてじっと私を見つめた。「これだけ?もっとないの?」というような表情だ。

 「ごめんね、今日からごはん、減らさなきゃいけないんだよね」と私はつぶやき、その場から立ち去った。しばらくぽんたは空の器を見つめていたが、諦めたのか、居間のソファの上に移動し、くつろぎはじめた。

 聞き分けがいいな、とほっとしたが、しばらくすると、また器の前に座っている。私の視線に気がつくと、こちらを向き、じっと目を合わせる。

毛布の上で、ひなたぼっこ(小林写函撮影)
毛布の上で、ひなたぼっこ(小林写函撮影)

 「ごめんね、病気になると大変だから」と言って頭をなでる。心が痛むが、最初が肝心、と自分に言い聞かせた。

 その日の夜中、ぽんたは、久しぶりに大声で鳴き、家の中を走り回った。間違いなく、食事の量が足りないのが不満で、不安なのだ。

 ツレアイが起きてきて言う。

 「急に減らしちゃ、かわいそうだよ。今晩はもう少しごはんをあげて、ダイエットは明日からにしたら」

 自分だってダイエットになかなか成功しないのに、猫だけにさせるのは酷じゃないか、などとつぶやき去っていくツレアイの背中をにらみ、私はフードを器に盛り、ぽんたの前に差し出した。

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宮脇灯子
フリーランス編集ライター。出版社で料理書の編集に携わったのち、東京とパリの製菓学校でフランス菓子を学ぶ。現在は製菓やテーブルコーディネート、フラワーデザイン、ワインに関する記事の執筆、書籍の編集を手がける。東京都出身。成城大学文芸学部卒。

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この特集について
猫はニャーとは鳴かない
ペットは大の苦手。そんな筆者が、ひょんなことから中年のハチワレ猫と出会った。飼い主になるまでと、なってからの奮闘記。
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