世界中の猫が語る“猫のお仕事” 『猫のハローワーク』

風紀委員 「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)から
風紀委員 「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)から

『猫のハローワーク』新美敬子著/講談社

 写真家・新美敬子さんが、世界中の働く猫へ、どんな仕事内容なのかを“インタビュー”しました。彼らの働く姿に添えられた文章は、「ぼくはね」「わたしはね」というネコの語り口調。そのため、仕事内容をまとめた文章は、それはとても猫らしく、くどくなく簡潔で、実に自然体というか、ちょっと天然な要素もあり、楽しくサクサク読み進められる1冊です。

猫のお仕事105種類紹介

 写真とともに紹介されているお仕事の数は105種類。スペイン、ドイツ、イタリアなどヨーロッパ諸国に住む猫から、キューバやモンテネグロ、タイやベトナムなどアジア圏に住む猫まで、住んでいる地域特有のお仕事も登場します。

 左官職人の大将を一目で惚れされたキューバの丁稚奉公子猫、トルコの民宿の勧誘係、クロアチアの“住みやすさPR係”、ニューカレドニアの樹木医、マルタで「プロジェクト・エックス」と呼ばれている風紀委員など、「あら立派!?」とつい言ってしまう仕事の数々。しかし、そこは猫が語る、猫のお仕事。人にも町にももちろん貢献していますが、とても猫的な仕事内容だったりします。

お相撲さん志望 「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)から
お相撲さん志望 「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)から

 忘れてはいけないのは、取材相手は“猫”ということ。ラトヴィアの虫の取り方実技指導員、スペインの“公園の目印”係、ポルトガルのキャベツ畑が仕事場の“かくれんぼ”係、デンマークのお相撲さん志望、日本からは“くノ一”なんてお仕事をしている猫も登場します。それって仕事なの?と一瞬思ってしまいますが、文章を読んで納得。とても立派なお仕事でした。

無職 「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)から
無職 「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)から

飼い主が喜ぶなら、何もしないのも「仕事」

 ちなみに“無職”という仕事でインタビューを受けたのは、「木の上でなまけものみたいにだらけるのが日課だわ」と語るメキシコのサビ猫ロニーさん。その堂々としたインタビュー内容に、うんうんそれでいい、それでこそ猫、とニンマリしてしまう猫フリークは私だけではないはず。

 働かざるもの食うべからず、とよく言われますが、それがどんな仕事内容だったとしても、雇い主(飼い主)が報酬(食事や安全な場所)を快く与えるならば、仕事として成立しているわけです。

 その内容が、寝てばかりでも、遊んでばかりでも、イタズラだったとしても、毛を逆撫で「フー!シャー!」と言ってても、「一緒に居てくれてありがとう」と雇い主が喜ぶならば、ただそこに居てくれるだけで、それはもう立派なお仕事なのです。

「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)
「猫のハローワーク」新美敬子(講談社文庫)

 新美さんの作品は、写真も文章も、駆け引きや緊張感、狙った感じがないので、ノンストレスで楽しめること間違いなし。ぜひページをめくりながら、頬がユルむのを体感してください。

『猫のハローワーク』

講談社/文庫/256ページ/820円(税別)

アネカワユウコ
神保町にゃんこ堂/猫本担当。「思わず二度見」「思わず頬がユルむ」「つい立ち止まってしまう」そんな書棚作りを目指し、2013年6月、神保町交差点にある姉川書店内に猫本コーナーをオープン。にゃんこ堂を通じて知り合ったクリエイターさん達と共に「保護ネコト暮ラス」プロジェクトをスタート。外で暮らすネコさんたちも心地よい猫生を送れますように♪ HP:https://nyankodo.tokyo

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この連載について
ニャンダフルな猫の本
猫本の専門店「神保町 にゃんこ堂」の猫本担当アネカワユウコさんが選りすぐったオススメの猫本を紹介する連載です。
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