殺処分ゼロへ、意識を変えて 大阪に動物愛護管理センター

 大阪府動物愛護管理センター(通称:アニマル・ハーモニー大阪)が、人と動物が共生できる社会を目指して、2017年8月に開設された。大阪府羽曳野市の郊外にあり、建物は美しく、明るく、清潔で、前身の「保健所」のイメージを一新するものだ。現地を訪ね、現状を聞いた。

(末尾に写真特集があります)

飼い主を待ちわびる犬
飼い主を待ちわびる犬

動物を手放す理由は

 同センターでは飼い主のいない犬や猫を収容している。管轄地域は、政令市・中核市を除く府内37市町村だ。保護されている動物は、個人が飼えなくなった動物と、警察などが保護した動物に分けられる。

 個人が飼えなくなった場合は、すぐに引き取るわけではない。まず自分で新しい飼い主を探す努力をしてもらうことにしているという。

 それでも保護されている犬や猫は、どんな事情で引き取られたのだろうか。

 2017年度の収容数は、犬が201匹、猫が654匹だった。

 犬猫とも手放された理由は「飼い主の健康問題」が最も多かった。次いで多いのが「住居(引っ越し)・経済的理由」で、経済的事情と引っ越しは重なっていることが多いという。さらに「咬み付くなど動物に問題がある」場合で、「その他(警察による保護も含む)」の事情によるものと続いた。

 一方、警察によって保護されるのは、圧倒的に犬より子猫が多いという。

どう「つなぐ」のか

 センターは「ふれる、まなぶ、つなぐ、まもる」という4つの事業を基本に運営されている。「つなぐ」は、犬や猫、その他の動物を新しい飼い主へ譲渡することを意味する。

 保護された動物たちが過ごす動物管理エリアは清掃され、1匹あたりのスペースもゆったりとしている。犬には十分運動できるようにと屋根付き運動場が用意されており、犬の足にやさしいパッドを敷いてあるという。

 一方、保護した動物の中には、伝染病など重病にかかっていたり、瀕死の状態だったりして、譲渡に適さない動物もいる。センターには14人の獣医師が在籍しており、身体検査や血液検査及び譲渡判定を行い、譲渡に適しているかどうか判断する。譲渡に適していると判断した場合、犬の場合は、狂犬病予防ワクチンと混合ワクチンを打ち、猫の場合は混合ワクチンを打ち、マイクロチップも入れるそうだ。

 残念ながら、譲渡に適していないと判断した場合、麻酔薬を1頭ずつ注射投与して安楽死させる。動物に苦痛はないという。

なぜかテレビの前がお気に入り
なぜかテレビの前がお気に入り

動物に「ふれる」「まなぶ」「まもる」

「まもる」事業では、動物で人の生活に危害が及ばないようにすることのほか、災害発生時に迷子になってしまった動物の保護なども行う。

 また、「ふれる」「まなぶ」事業により、人が実際に動物に触れて命の尊さを感じたり、正しい飼い方を学んだりすることができるようにもなっている。

 猫とは一般家庭のリビングのような部屋で触れ合えるようになっており、近隣の方が散歩の途中に立ち寄っていくこともある。「ちょろまる」と「ししまる」というモデル犬が登場する「ふれあい教室」「飼育体験教室」(いずれも要予約)も開いており、小学生や家族連れが参加しているそうだ。

人の意識を変えることが大切

 いずれの取り組みも保護動物を減らし、殺処分をゼロにするために行われている。

 企画推進課の江﨑隆介さんはいう。

「すべては人なのです。人の意識が変わらないとセンターで保護される動物が減らない。根本から変えていくために、こうした事業を行っています。いままでに約3千人に訪れていただきましたが、もっとたくさんの人に来ていただいて、動物に対する理解やマナーを深めていただきたい」

 一方、大阪府は人と動物が共生できる社会の実現と社会全体での殺処分ゼロを目指して、「大阪府動物愛護管理基金」を設け、寄付を募っている。ふるさと納税制度も適用されるという。

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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