大阪の「子猫リレー事業」 病院・シニアが協力し、子猫を救う

 保護した子猫を動物病院やシニア世代が生後6カ月まで育て、若い世代に譲渡する――。大阪市と大阪市獣医師会が中心となって2015年に始めた「子猫リレー事業」。殺処分される子猫の数を減らし、小さな命を守ることを目指している。事業を牽引している「おざさ動物病院」の小笹孝道院長に話をうかがった。

動物病院で保護している子猫
動物病院で保護している子猫

子猫を殺処分から救う

 大阪市動物管理センターで殺処分される猫は、成猫よりも子猫が圧倒的に多かったため、それを減らすことが検討された。当初は、町猫に避妊、去勢手術を施して、生まれてくる子猫を減らす活動からスタートした。これにより殺処分数は半減したものの、次第に頭打ちになったため、新たに発案されたのが現在の「子猫リレー事業」だ。

 子猫リレー事業の流れはこうだ。

保護グループに保護された子猫は、まず大阪市に持ち込まれる。その後、大阪市獣医師会を経由して、子猫リレー事業に賛同している動物病院・獣医師のもとに届けられる。

 事業に参加している動物病院は現在23病院。病院では猫エイズと白血病の検査をして、2回目のワクチンが完了する生後約3ケ月まで子猫を飼育する。

 次に、子猫は生後3ケ月から3ケ月間、シニアのボランティアの「キトンシッター」に託され、面倒をみてもらう。

 生後6ケ月になった猫は、避妊・去勢手術を受け、ミクロチップを装着され、40代以下の若い世代へと譲渡される。

 譲渡を受けた里親は、月に一度、指定の動物病院で健康チェックを受けさせなければいけない。また年に一度のワクチン接種も必要だ。また、どうしても飼い続けられなくなった場合は、獣医師に申し出が義務づけられている。

動物病院で保護されている子猫
動物病院で保護されている子猫

キトンシッターのメリット

 3~6ケ月の子猫を世話するキトンシッターになれるのは、60歳以上の高齢者だけだ。猫の寿命は約20年なので、高齢者だけで飼うことは難しい。しかし、キトンシッターは3ケ月の期間限定で、獣医師のサポートもあるため、安心して猫を飼うことができる。

 飼育に必要なケージやトイレ、フードボウル、フードなどはすべて貸与・支給される。子猫たちは、6ケ月になるまでの間、猫同士や人との触れ合いを通じて、社会化(ペットとして生きる術を身につける)されるという。

 子猫の命が救われるだけでなく、高齢者の地域参加を促し、一方、仕事で忙しく、孤立しがちな若い世代と地域との交流を図るという目的もあるという。

動物病院で保護されている子猫
動物病院で保護されている子猫

目標は300匹の子猫の譲渡

 この事業で1年間に保護する子猫の数は300匹を目標にしている。2017年度に殺処分された猫は997匹だったが、そのうち約3分の1を救う計画だ。

 譲渡件数は年を追って増え、「初年度は40匹、2016年度は58匹、2017年度は90匹、今年度は3ケ月で45匹を譲渡しました」。

 一方で課題もある。

 キトンシッターのなり手が少なく、やめていく人もいる。

 「おそらくですが、猫は夜行性だし、高齢者の方は比較的早い時間に就寝するので、夜、眠れないのではないか。また、3ケ月経つと手放さなければならないので、人も猫も寂しさが募る。そのため、キトンシッターの期間をもっと短くする事も考えています」

 また、譲渡後は月に一度の健康チェックを義務付けているが、連れてこない里親もいる。賛同・協力してくれる獣医師が限られるのも問題で、今後改善していかなければならないという。

 事業がスタートしてから約2年10ヶ月。今後の活動に期待が高まっている。

小笹孝道

酪農学園大卒。おざさ動物病院院長、大阪どうぶつ夜間急病センター院長、大阪市獣医師会理事。大阪市獣医師会では大阪動物愛護フェスティバル実行委員長や子猫リレー事業等を担当。

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。朝日新聞社sippo、telling、文春オンライン、サライ.jp、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。FB:https://www.facebook.com/writer.youwatanabe

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