山の中に捨てられていたコーギー 吠え癖を乗り越えて

 保護されても、なかなか引き取り先が決まらない犬もいる。チャンスは巡ってきても、病気だから、吠えるから、高齢だからなど、さまざまな理由でもらい手がつかない。捨て犬だったコーギー「龍ちゃん」もそんな1匹だった。

(末尾に写真特集があります)

どう?可愛いでしょう
どう?可愛いでしょう

山の中に人気犬種が捨てられていた

 山深いダムのほとりで、1匹のコーギーが見つかった。警察が保護したが、人気犬種なので必ず飼い主が現れると考えて待ったという。だが、1ヶ月ほどたっても、飼い主は名乗りをあげなかった。問い合わせひとつない日が続いた。さすがに警察も、これはおかしい、どうやら捨てられたのだ、と思わざるを得なかった。

 とはいえ、そのまま保健所(現・大阪府動物愛護管理センター)に送るわけにもいかず、この町で犬猫の保護活動をしているイギリス人夫妻のところに相談した。人気犬種でも、捨てられることがあるのだ。

 夫妻はコーギーを引き取って、一時預かりボランティアの杉本さんに世話をお願いした。

チャンスは何度もあったが…

 人気犬種だけあって、譲渡希望者は、すぐに現れた。推定年齢3歳と若かったのも幸いした。ところが、その希望者は、たった1日だけ預かって、すぐに返したいと言ってきたという。コーギーは再び、杉本さんのところに帰ってきた。

 また別の希望者が現れた。今度こそは、と送り出してから1週間。またコーギーは、返されてしまった。さらに次の希望者のところでもうまくいかなかった。

 実は、このコーギーは、臆病な性格で、よく吠えてしまうのだ。人にも犬にも吠えるし、要求吠えもする。ただ、「お座り」や「待て」「ハウス」といったコマンドはよく覚えていて、しつけられていたことは分かったという。なかなか落ち着ける場所が見つからないまま、3ヶ月が経過した。

先住犬はるちゃん(左)と
先住犬はるちゃん(左)と

「可愛い、それだけで十分」

 結局、杉本さん夫妻が自分たちで飼うことにして、龍ちゃんと名付けた。

「かわいそうだと思ったわけではありません。とにかく、可愛かったのです。家族もみんな動物が好きなので、龍をうちの子にしたいと次第に思うようになりました」

 杉本さんは、ガリガリに痩せて毛艶も悪かった龍ちゃんに、しっかり栄養をつけさせようとハイカロリーフードを与え、1年間かけて本来のコーギーの体型にしたという。家の中では吠えることを許し、外を散歩する時はリードを短く持って、吠えるたびに「ダメよ」と言ってたしなめた。根気のいることだったが、「可愛い」と思ったので、苦にならなかったという。

 先住犬の柴犬「はるちゃん」と相性が良かったのも幸いした。だんだん犬や人に慣れて、シーズーやラブラドール・レトリーバーなど、犬の友達もできていった。

 以前はえさを十分もらっていなかったのか、食への執着が強く、朝は散歩から帰ったらすぐに、夕方は6時になると落ち着きがなくなり、要求吠えをした。フィラリアも強陽性だったので、治療を続けている。

 ティッシュの箱など物を投げつけられた経験があるのか、ティッシュを持ち上げるだけで、家の隅っこに行ってうずくまる癖がある。しかし、一緒に暮らしていく上で、特に問題になるようなことはないという。

「龍は、愛嬌のある仕草や面白い行動で楽しませてくれるんですよ」。龍ちゃんのことを本当に可愛いと思うから、根気よくしつけもできた。龍ちゃんの良いところもお母さんはいっぱい知っている。

 問題があるからといって手放さず、大切に育てた命。龍ちゃんは、10月で7歳になる。

渡辺陽
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。文春オンライン、サライ.jpで執筆。自身は、健康のために鍼灸とマッサージに通う。保護犬、保護猫、老犬介護などペット問題を温かな視線で綴る朝日新聞社「sippo」、小学館「Petommorow」の記事も好評!
この特集について
幸せになった保護犬、保護猫
愛護団体などに保護された飼い主のいない犬や猫たち。出会いに恵まれ、今では幸せに暮らす元保護犬や元保護猫を取材しました。
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