「コスト増」「売りにくい」 業界には「8週齢」反対も

母猫の甘える子猫たち
母猫の甘える子猫たち

 8週齢規制で期待されるのは、幼い犬猫に親元で適切な「社会化期」を過ごさせて問題行動を減らす効果だけではない。

 大阪大大学院人間科学研究科の入戸野宏教授(実験心理学)は次のように指摘する。頭が大きくて体が丸々としているなどの幼い犬猫のかわいさは、見た人に強いプラスの感情を引き起こし衝動買いにつながる。だが実際に飼ってみて、ふんやおしっこをする、かみつく、ひっかく、想像より大きくなるなどの「害」が生じると、プラスの感情はマイナスに転じやすい――。

 「かわいさ余って憎さ百倍」というわけだ。ペットへのマイナスの感情が強まれば虐待や飼育放棄に結びつくこともある。

 幼齢期特有のかわいさが減り始める8週齢以降にペット店に陳列されれば、衝動買いが抑えられ、「感情の反転」は起きにくくなることが見込まれる。

 ペット関連業界が8週齢規制に反対してきたのは、7日分の飼育コスト増を避けたいことに加え、「大きくなると売りにくくなる」と考えるためだ。

「健康安定」「今なら受け入れやすい」

 ただ、業界内から8週齢規制に理解を示す声も出てきた。

 ペット保険大手、アニコムホールディングスの小森伸昭社長は今月11日、18年3月期の決算説明会で「(子犬・子猫を親元から)早く離すとろくなことがないのは事実。56日よりもっと延ばしてもいい」などと発言。大手ペット店チェーンの経営者は「56日を超えてから仕入れるほうが健康状態もより安定しているため、店としても安全だ。消費者にとってもいいに決まっている」。このチェーンでは、今の規制の「生後49日」を超えていても、一定の体重に達しない子犬・子猫は仕入れを見合わせている。

 子犬や子猫の販売が好調な今こそ規制導入の時期としてふさわしい、という指摘もある。競り市での犬猫の落札価格は5年前に比べて犬で2~3倍、猫で3~4倍に高騰しており、「特に繁殖業者は利益が出やすい環境にある。今ならコスト増に対応する資金もあるはずだから、規制強化は受け入れやすい。このタイミングを逃さないほうがいい」(別の大手ペット店チェーン経営者)。

 8週齢規制と合わせて、議連では、一部の劣悪な繁殖業者のもとに子犬・子猫を長く置くことへの懸念の声が動物愛護団体と業界団体の双方からあがっていたことなどを受け、各種数値規制の導入も掲げている。飼育施設の広さや出産回数、従業員1人あたりの飼育可能数などの数値規制も動愛法の改正項目案に盛り込んだ。具体的な数値については、環境省令で定める考えという。

 今回の動愛法改正も議員立法で行われる。議連の改正項目案をたたき台に各党内で調整が進むことになるが、ペット関連の業界団体からの反対はなお強い。議連の与党議員は「自民党の一部議員が規制強化に反対しており、情勢は厳しい」と話している。

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太田匡彦
1976年生まれ。98年、東京大学文学部卒。読売新聞東京本社を経て2001年、朝日新聞社入社。経済部記者として流通業界などの取材を担当。AERA編集部記者やメディアラボ主査を経て、文化くらし報道部記者。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)などがある。
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