じゃれ合っていた犬が突然、口から出血! 【ペットの事件簿】

笑顔が戻ってきたバブルとホイップ。幸い、ホイップの歯に異常はなかったが、これからはホイップにも硬いものは与えないようにしないと…
笑顔が戻ってきたバブルとホイップ。幸い、ホイップの歯に異常はなかったが、これからはホイップにも硬いものは与えないようにしないと…

■事件の経緯

 埼玉県の野末さんファミリーは、白くてふさふさのピジョンフリーゼの「バブル」(3歳)と「ホイップ」(2歳)を可愛がっています。


 そのうちの一匹、バブルがある日突然、口から大出血しました!

「少し前から口元がやや腫れて、触ると嫌がるようになっていたんです。2、3日様子を見て、続くようなら獣医さんへ行こうと思っていた矢先でした」と、野末さん。


 普段は仲良しの2頭が、その日は大好きなお母さんの膝の上を争って小競り合いに。その時、ホイップの犬パンチがバブルの顔をはたいた瞬間の大出血でした。


「びっくりしました。爪が鋭いわけでもないし、そんなに強いパンチでもなかったのに…」


 バブルはすぐに動物病院へ運ばれました。診断の結果、原因は硬いものを食べたことによる、歯の根元の損傷でした。右の犬歯の根元が傷つき虫歯に。内部に炎症が広がって血膿がたまっていたところを、たまたま外から叩かれたことで破裂したのです。


「何か硬いものを食べさせましたか? と言われても心当たりが……。よくよく考えてみたら、3か月も前に、骨付きハムの骨をあげたことを思い出しまして……」

 

人間が食べたハムの、残りの骨をもらったバブルとホイップ。このときはご機嫌で、仲良く交代で食べていたのだが…
人間が食べたハムの、残りの骨をもらったバブルとホイップ。このときはご機嫌で、仲良く交代で食べていたのだが…

 あげたのは、写真のような大きな豚の骨。鶏の骨は細かく割けるのであげてはいけない、と知っていた野末さんでしたが、豚なら大丈夫だろうと思ったとのこと。


「マンガやアニメでも、大きな骨をうれしそうにくわえた犬が出てきますよね。てっきり大丈夫だと思って…」と、肩を落として反省しきり。それにしても、3か月も経ってから……なぜ?

 

 

■ポイント

・野末家は2歳と3歳の多頭飼育(犬2匹)。普段はドライのドッグフード。たまにおやつ。

・鶏の骨は危ないと知っていたが、豚もダメなの?

・硬いものを食べさせてから、3か月も経ってからの炎症破裂?


 バブルの歯は、最終的に手術で抜くことに。 大ごとになってしまった今回の事件、どうすればよかったのでしょう? 今後はどうしたらよいでしょう?

 

まずは獣医さんへ。どこからどう出血したのか、調べてもらうことに…
まずは獣医さんへ。どこからどう出血したのか、調べてもらうことに…

■佐藤貴紀獣医師のアドバイス 「硬いものはNG」

 硬いものを食べたことで歯が折れてしまったり、歯肉を傷つけてしまったりすることはよくあることです。ペットの食事は飼い主さんの管理次第ですから、そのリスクを承知の上で与える必要がありますね。実際、骨ほど硬いものは、あまりお勧めできません。


 硬いものは、歯や歯肉を傷つけるだけでなく、食道などにも詰まりやすいという懸念もあります。


 引っかかったものを無理にのみ込んだり、逆に吐き出すことで食道が傷つく可能性もありますので、硬いものを与えるときは、大きさにも注意しましょう。


★抜歯後はどうしたら?


 傷ついてしまって抜いた歯は、噛むのによく使う歯のはずです。また、歯がないからといってその部分を使わないようにするかというと、そうでもないのが動物です。


 犬は歯のない部分でも噛もうとします。しかし、そこに堅牢な歯はありません。ということは、日々の食事がその柔らかい歯肉に負担をかけ続けるということ。毎日、歯がない部分の歯肉がどうなっているのか、見てあげる必要があります。


 また、長期的には、歯がないことによって歯並びが変わり、その他の歯に悪影響を及ぼすことも考えられます。健康診断の際には、特に歯並びやその周辺への影響もチェックしてあげるようにしましょう。

 

    ◇    ◇


 その後のバブルはどうなったかというと……。


「結局、3週間ほどエリザベスカラーをつけて炎症止めを投薬。詳しい検査の結果、傷ついた歯はひどい虫歯になっていて、再発の恐れもあるとのこと。抜かざるを得ないという結論になって、手術をしました」。


 手術は無事終了。今、バブルは元気に過ごしています。

 

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さとう・たかのり

1978年生まれ。白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問獣医師。日本獣医循環器学会認定医。
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浅野裕見子
フリーライター・編集者。大手情報出版社から専門雑誌副編集長などを経て、フリーランスに。インタビュー記事やノンフィクションを得意とする。子供のころからの大の猫好き。現在は保護猫ばかり6匹とヒト科の夫と暮らしている。AERAや週刊朝日、NyAERAなどに執筆中。

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