クマ撃退、ベアドッグ増やそう 軽井沢で繁殖計画スタート

タマとリオ。後ろは繁殖用の小屋=長野県軽井沢町
タマとリオ。後ろは繁殖用の小屋=長野県軽井沢町

 人里に近づく熊を追い払う犬「ベアドッグ」を繁殖するプロジェクトを、長野県軽井沢町で熊の保護管理などに取り組むNPO法人「ピッキオ」が始める。熊を追う雄雌2頭の犬のペアと、繁殖のための小屋が25日、報道関係者に公開された。ピッキオによると、繁殖から訓練まで一貫して手がける試みは国内では初めてという。


 ベアドッグは、ほえたてて熊を追い払うよう訓練された犬で、犬種は北欧などでヒグマ猟に使われる大型のカレリア犬。米国では熊と人間の共生を目的に国立公園などで飼育されている。


 ピッキオは2004年以降、米国から計3頭を輸入。現在は2頭が、町の委託で別荘地などでのツキノワグマ対策に活躍している。ただ、日本の検疫制度で生後10カ月以降の子犬しか輸入できず、普及のネックになっていた。


 このほど米ウィンドリバー熊研究所(WRBI)の協力で、雄のリオ(4歳)がハンドラー(飼育・訓練士)とともに来日。ピッキオの雌のタマ(3歳)との繁殖を試みることになった。


 ピッキオは町内に繁殖用の小屋(24平方メートル)とドッグランを建設。カレリア犬は地面に穴を掘って暮らすため、安心してペアリングができるよう小屋は1メートルほどの深さの竪穴式になっている。


 リオと来日したハンドラーのニルス・ペダーセンさん(32)によると、リオは賢く人なつこい性格。日頃はアラスカでグリズリーやホッキョクグマを追っているという。「リオはタマのことが気に入っており、うまくいくと確信している」と話す。


 タマは今月中旬から発情期を迎えており、ペアリングが順調に進めば3月下旬~4月上旬に出産の予定だという。


 軽井沢町の商業地や住宅地で目撃されるツキノワグマは、2004年度には44件だったが、ベアドッグ導入の効果もあり、ここ10年は年0~9件に減っている。


 プロジェクト責任者の田中純平さん(44)は「繁殖から出産、育成、実践まで一貫した流れを築き、他地域にも普及させたい」と話している。


(土屋弘)

朝日新聞
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