全身タイツ? ブログで大人気のカッパちゃんは元地域猫
![ブログで大人気のカッパちゃん。写真はすべて「NPO法人ねりまねこ」の亀山嘉代さん提供](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/499a-l/picture/10577531/8b3ad08dc73b2e1ba824cab44a2cdff1.jpg)
「『あれ、黒猫がいるな』と思ったんですよね。でもよく見ると……」
2014年2月、凍えるような雪の日。「NPO法人ねりまねこ」(本部・東京)で保護猫活動を行う亀山嘉代さん宅の庭に、突如、1匹の猫が現れた。まるで全身タイツをまとったような、風変わりな見た目の猫だった。
(末尾に写真特集があります)
![雪とともに現れたカッパちゃん](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/7fb9-l/picture/10577542/b41f485094596e89349f4c9e5283e264.jpg)
わずかな白い毛まで黒ずみ、足取りはおぼつかない。しかし、激しい威嚇で、亀山さんは近づくこともできない。ごはんでおびき寄せてTNR(野良猫の繁殖を防ぐため、捕獲し、避妊・去勢手術を施す)をし、「地域猫」として見守ることになった。その3カ月後、亀山さんは「ねりまねこ」としての活動を始めた。
![去勢手術を受けて、地域猫になったカッパちゃん](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/5454-l/picture/10577544/61b27741248fec5c5308ee1e19beca6a.jpg)
◆「変な柄」でも一生懸命!
授けた名は、「カッパちゃん」。今では個性的な毛柄で知られ、ファンも多い人気猫だ。頭の模様がおかっぱ頭みたいだからカッパちゃん? それとも白猫が真っ黒の合羽(かっぱ)をはおっているようだから?
答えは「上から見ると、頭の黒いギザギザが河童(かっぱ)のお皿みたいだから」
そもそも亀山さんは、カッパちゃんに出会う前から、夫の知弘さんとともに保護猫活動をしていた。出発点は、東京都練馬区が公募を行う「地域猫推進ボランティア」への登録。野良猫が多いこの地で、ボランティアと行政との連携をスムーズにする制度だ。
「実は、あとからわかったことですが、庭に現れる2年前に、私は小さいカッパちゃんと出会っていたんです。地域猫の個体記録のために撮っている写真を見返していたら、幼い姿のカッパちゃんが写っていました。母猫たちとともに、すでにボランティアさんにごはんをもらい、手術の予定もあった。でも、その前にメスを求めて旅に出てしまい、餌場を求めるうちに、うちの庭に迷い込んだようです」
![実は幼いころに一度、亀山さんと出会っていた。右の猫はどう見てもカッパちゃん](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/f919-l/picture/10577545/2fbf199b992a9652b0c17b1612521fd4.jpg)
ごはんをあげてもまったく慣れない。触るどころか、相変わらず近寄ることができない。しかし、そんな“シャーシャー猫”も、「ねりまねこ」のブログで餌やりの様子をリポートするうちに、たちまち人気者に。アクセス数は1日に1万を超えるようになった。
「反響は意外でした。かわいい飼い猫ならともかく、カッパちゃんは外で暮らす猫。薄汚れて、人を威嚇し、さらに変な柄(笑)。そんな猫でさえ1日1日を懸命に生きていると、読者が受け止めてくれたんです。多くの方が見ているからこそ、応援してくれるからこそ、私も応えていきたい、と励みになりました」
![ごはんをあげても、シャー!](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/9909-l/picture/10577546/007d293a4de1e2062314c0114a4c2998.jpg)
◆死の淵から救い、ついに「家猫」に
しかし、餌やりを続けて2年になろうとしていた2015年の冬。カッパちゃんは衰弱していった。ひどい猫カゼを発症したのか、大好物のウェットフードに見向きもしない。ただ温もりだけを求めて、陽だまりにうずくまっていた。
———このままでは命を落としてしまう。
亀山さん夫妻は決心し、二人がかりで捕獲。抵抗されながらも室内へ迎え入れることができた。地域猫から、「家猫」になったカッパちゃん。ブログのコメント欄は、容体を心配していたファンからの安堵と称賛の声であふれた。
「最初の3カ月間はケージ生活。次第に威嚇はしなくなりました。ほかの保護猫たちともケンカしません。ある日、交通事故にあって保護していた猫、ヤマトくんを抱っこしていたら、カッパちゃんがじっと見ていたんです。抱っこしてほしい? まさかね……。試してみると、嫌がらない。でもなぜか目をつぶって、足はだら〜ん。抱っこをしてもらったことがないから、され方がよくわからなかったんでしょうね」
そして、今。少しずつ心を開いていった “シャーシャー猫”は、亀山さんの布団でいっしょに寝るまでに変わった。
「安心できる室内で、おだやかに暮らしています。それでも、外での暮らしが長かったので、長生きは難しいでしょう。推定6歳。野良猫なら寿命を迎えてもおかしくない年齢です。老化の兆候も出ています。だからこそ、生きている今を幸せに過ごさせてあげたい」
![今では亀山さんと、この距離感](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/b079-l/picture/10577547/4230bf2e167b603113d38ff574a58e0b.jpg)
取材の最後、亀山さんの案内でカッパちゃんと対面した。視線を合わせないようにそっと近づくと、カッパちゃんは少し緊張しながらも、体に触れさせてくれた。なでると、体のこわばりが落ちついていく。飼い主以外に初めてなでられた瞬間だと亀山さんは驚く。そして、目を細めながら一言。
「人との触れ合いの中で、猫って変わっていくんです」
(本木文恵)
練馬区と協働の地域猫活動に加え、登録ボランティアのアドバイザーとして後進の育成、ネットや講演活動による地域猫活動の普及・啓発、保護・譲渡活動などを行っている。
公式HP:https://nerimaneko.jimdo.com
ブログ:『ねりまねこ・地域猫』https://ameblo.jp/nerimaneko/
![そして、家猫になったカッパちゃん](http://p.potaufeu.asahi.com/sippo-c/a8cb-l/picture/10577548/416a10b0cd7a9bbaf9384ac57033fa3f.jpg)
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