保護猫をのせて移動譲渡会 「幸せの黄色い車」始動

新しい飼い主を待つ保護猫=東京キャットガーディアン
新しい飼い主を待つ保護猫=東京キャットガーディアン

 猫の保護と譲渡などの活動を続けるNPO法人「東京キャットガーディアン」(東京都豊島区)が10月、商業施設などに出向いて保護猫の譲渡会を行う「幸せの黄色い車」の運用を始める。東京キャットガーディアンは2008年に開放型シェルター(保護猫カフェ)を開いた国内の先駆け的な存在。譲渡希望者が訪れるのを待つだけでなく、人が集まる場所に猫を連れて行き、譲渡を拡大することを目指す。

 

(末尾に写真特集があります)

 

 東京キャットガーディアンの代表・山本葉子さんは08年12月、飼い主のいない猫の避難所と譲渡会場を兼ねる猫カフェ型のシェルターを東京都豊島区に開設。保護猫を希望者に譲渡する“新しい流通ルート”を社会に定着させた。毎月40~60匹、これまで5800匹以上の譲渡を実現させた。「猫付きマンション」や「猫シェアハウス」など新事業も考案してきた。さらに今回、保護猫を車に乗せて街に出て紹介するという新たな事業に挑む。


「幸せの黄色い車」は、目を引く、明るい黄色のボディ。2トントラックの荷台部分を改造し、子猫なら2〜 3匹入る45センチ四方のスペースを32個設けたという。車に乗った保護猫とお見合いができる仕掛けだ。

 

移動譲渡会場車(幸せの黄色い車)のイメージ図
移動譲渡会場車(幸せの黄色い車)のイメージ図

「会場に着いた車の、 両横のウイングが上がると猫たちが見えます。猫には外の音や知らない人の声が聞こえない造りで、照明も控えめ。各スペースに換気のための通風口を配備し、車内エアコンで適性温度を保ちます」と山本さんは説明する。


 10月29日(日)に、東京都中野区の島忠中野店でお披露目する予定だ。


「猫たちに一つでも多くのご縁があるように、取り組みを始めることにしました。初めてホームセンターとコラボして、敷地内に車を停めて譲渡会場とします。そこで多くの方に“保護猫の譲渡”という選択肢をご検討いただきたいと思います。子猫を中心に乗車予定です」


 東京キャットガーディアンでは通常、まずメールで譲渡希望を受け付け、その後、面談による審査を行う。「単身者」という属性で、譲渡を断ることはないが、“ 終生飼育・完全室内飼い“など「適正な飼育者かどうか」を審査する。

 

猫カフェでは自由に猫と遊べる=東京キャットガーディアン
猫カフェでは自由に猫と遊べる=東京キャットガーディアン

 今回の幸せの黄色い車も、事前申し込みで、猫を紹介している現場で面談を行う。審査をクリアすれば、 当日もしくは後日の譲渡が可能になる仕組みだ。


「もっとも大切にしているのが面談です。愛情があるのは当たり前ですが、それを最後まで継続出来る人か、見極めるのは大変難しいです。面談担当スタッフは常に『自分の飼い猫を譲渡出来るだろうか?』を、最終判断基準にしています。今回の移動譲渡会場車(幸せの黄色い車)でも、同様に行います。譲渡面談は予約制のため事前申し込みが必要ですが、譲渡会当日に興味を持っていただいた方は、保護猫カフェとしての大塚シェルターへお申し込みいただければ嬉しいです。大塚シェルターは毎日が譲渡会ですので(笑)」


 また、万が一、飼い主が病気になるなどして、飼い続けられなくなった場合に備える「ねこのゆめ」という事業も始めている。東京キャットガーディアンが、飼えなくなった成猫を引き取って再譲渡するか、終生飼育するための資金を積み立てる仕組みだ。毎月3800円(税別)を積み立てるのが基本で、6年満期。計273,600円(税別)を積み立てることになり、満期後や一括払いした後は、引き取りを利用できるという。


「猫が譲渡対象になる場合は次の家を探し、高齢猫や病気などがあって譲渡できない場合は、ケアをしながら終生飼育することをお約束します。預かり金なので、ご利用の必要が無くなれば、途中解約や満期後の解約も可能です」


 山本さんは、今年2月に設立された一般社団法人「保護猫カフェ協会」の会長も務め、保護猫カフェの運営に関する講習会も開いている。


「保護猫カフェという言葉が世の中に広がり、トレンドになったのはありがたいですが、講習会では、開業を促すというよりも、開業を止めるためのスクールと言ってもいいかもしれません。保護猫カフェは客単価が1000円程で、多額の運営費がかかり、続けるのは容易ではない。崩壊しては元も子もないので、安易な気持ちではできないということをいつもお話ししているんです」


「猫ブーム」といわれるが、自治体に持ち込まれる猫はいまだ多い。そのほとんどが過剰繁殖の子猫だが、家庭での多頭飼育崩壊など新たな問題も起きている。山本さんは、猫を「抱え込んでしまう問題」や「保護しようにも方法が分らない」人のために、“ねこねこ110番”(年中無休)という電話相談室も運営している。


 山本さんは「ひとりひとりの負担を減らすことと、全員が愛護だけでなく環境保全の観点からも問題意識を持って欲しいですね」と話している。


(藤村かおり)

 

藤村かおり
小説など創作活動を経て90年代からペットの取材を手がける。2011年~2017年「週刊朝日」記者。2017年から「sippo」ライター。猫歴約30年。今は19歳の黒猫イヌオと、5歳のキジ猫はっぴー(ふまたん)と暮らす。@megmilk8686

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