里山カフェに猫が集まり「地域猫カフェ」に! TNR活動も支援

地域猫が集まってくる里山カフェ「そらいろのたね」
地域猫が集まってくる里山カフェ「そらいろのたね」

「里山カフェ」のはずが、「地域猫カフェ」としても評判になっている店が、石川県宝達志水町にある。青江静男さん(58)・左知子さん(56)夫婦が、第二の人生として、今年2月、古民家を使って里山カフェ「そらいろのたね」を開いた。すると、周辺から多くの野良猫が集まるようになった。このカフェで6月17日、地域猫のために初のチャリティー演奏会が開かれた。

 

(末尾に写真特集があります)


 金沢市内から車で50分ほど、山の麓に位置する自然が豊かな場所に「そらいろのたね」はある。自家製スイーツや天然酵母で焼いたパンが人気のカフェだ。


 カフェの建物は、築50年以上の家屋を買い取って、ほとんど自分たちでリフォームした。ウッドデッキをつくったところ、周辺に住む野良猫が17匹も集まってくるようになったという。「えさをやってはいけない」と近所から言われていたが、子猫にせがまれる日が続いて放っておけなくなった。静男さんは「中には腹がどんどん大きくなっていくメスもいて、どうしたらいいか分からず、支援団体に相談しました」と振り返る。

 

里山カフェ「そらいろのたね」を運営する青江さん夫婦
里山カフェ「そらいろのたね」を運営する青江さん夫婦

 17匹のうち、6匹が妊娠していた。金沢市内に拠点を置くNPO法人「猫の避妊と去勢の会」の理事長・桐畑陽子さんに相談すると、「早く捕獲して堕胎の手術をすべき」と助言された。しかし、左知子さんは寒さをこらえて、えさを待つ若いメス猫の姿に、「今回は産ませてあげたい」と思い、出産前後のケアと子猫の飼い主探しを手伝うと約束して、支援を求めた。


 臨月を迎えて苦しそうな母猫も1匹いたが、近寄ることはできなかった。桐畑さんの協力を得て捕獲器を使って確保し、獣医師に見せたが、手術中に死亡した。結局、17匹の子猫が生まれ、うち4匹と母猫1匹が死んだ。


 左知子さんは「安産のお守りにされる犬と比べ、猫の出産は危険な場合もあると知りました。今なら捕まえることはできますが、当時は知識も技もなく、難しかったのです。栄養事情の悪い野良猫はお産も命がけなのだと分かりました。やはり去勢・避妊手術は必要です。今後は、毅然として対応していきたいです」と実感を込めて保護猫の支援について助言するようになった。


「猫の避妊と去勢の会」に協力してもらい、残った子猫13匹すべての引き取り手を見つけることができた。成猫もすべて一旦確保し、去勢・避妊手術や、エイズ・白血病の検査を受けさせた。カフェの敷地内には猫の寝床とトイレを設け、けが・病気になった猫のケアもしている。


 左知子さんはいう。


「野良猫の寿命は5年程度とのこと。飼い猫に比べれば短命ですが、自然豊かな場所を走り回って生きるのです。一代限りの寿命を全うするよう支援していきたいと思います。近所の方からは、家庭のごみを荒らされる被害が減り、猫たちは幸せそうな顔になったといわれました」


 チャリティー演奏会は、青江さん夫婦が、地元の胡弓奏者・倉本由美子さんとギター奏者・川端善伸さんを招いて開催した。店内に入り切らないほどの来場者が集まった。開演に先立ち、桐畑さんが「不幸な猫を増やさないように見守ってあげてください」とあいさつし、「猫の避妊と去勢の会」が運営する去勢・避妊手術を助成するための「玉桜基金」への支援が呼びかけられた。演奏会の収益も地域猫の支援に使われるという。


 左知子さんは「里山カフェをオープンしたはずが、猫と関わるうちに『地域猫カフェ』になってしまいました。お客さんは積極的に協力してくだり、猫の支援は生活の一部になっています」と笑う。


 里山カフェに集う猫は、スイーツやパンとともに店の評判を高めている。地域猫が商売繁盛を助ける招き猫になったというわけだ。


(若林朋子)

里山カフェ「そらいろのたね」
〒929-1301 石川県宝達志水町宝達ロ113
0767-35-0304
http://nekono-sippo.jp/
sippo
sippo編集部が独自に取材した記事など、オリジナルの記事です。

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